何が起きたか:GA4移行とAI Overviews登場で失われた比較の基準線
Google Analytics 4(GA4)は2023年7月1日に義務化され、標準のUniversal Analyticsプロパティは新しいデータの処理を停止しました。その1年足らず後の2024年5月14日、GoogleはAI Overviewsを米国ユーザー向けに展開し始めています。Jarboe氏は、比較可能な測定の基準線を失ったのは検索トラフィックのパターンが変わり始めたのと同じタイミングだったと指摘しています。
そこで同氏が使ったのが、Semrush Traffic Analyticsです。米国で最も訪問されているウェブサイトを追跡し、リストを毎月更新するツールで、Jarboe氏はこれを感覚ではなく実際の数値で答えられる数少ない情報源だと位置づけています。この数値はGA4による実測トラフィックではなく、第三者ツールによる推計値である点に注意が必要です。
上位は変わらず、しかし伸び率と集中度は別物――Google・YouTube・Reddit
リストの上位を見ると、1年前とほぼ同じ顔ぶれです。この順位だけを見れば、何も変わっていないと結論づけたくなります。しかしJarboe氏は、それは誤りだと述べています。Googleのトラフィックは前年比10.72%増、YouTubeにいたっては36.6%増という驚くべき伸びを示しているからです。
| サイト | 順位 | 月間訪問数 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 25.3 billion | 10.72%増 | |
| YouTube | 2位 | 10.3 billion | 36.6%増 |
| 3位 | 2.61 billion | (出典では明示されていません) |
上位3サイトを合わせると、トップ10のトラフィックのうち54.3%を占めています。Jarboe氏は、ウェブの最上層における注目の集中は緩んでおらず、むしろ強まっていると書いています。米国上位150サイト全体の総訪問数は前年比6.1%の増加にとどまった一方、トップ10だけで全体の68.6%を占め、1年前の68.8%からほとんど変わっていません。
勝ち組の筆頭:ChatGPT.comが9位に浮上、48.38%増
Jarboe氏が「検索の勢力図がどれだけ変わったかを一つの数字で表すなら」として挙げているのがChatGPT.comです。前年比48.38%増となり、米国の全ウェブサイトの中で9位にランクイン、月間訪問数は1.09 billionでDuckDuckGoとBingを上回っています。今日ではAIチャットボットが2008年や2009年から存在する検索エンジンを追い抜いていると同氏は述べています。
比較として、TikTokは14位で月間訪問数573.6 million、前年比の伸びは1.63%とかなり控えめです。「新しいプラットフォーム」全般が勝っているわけではなく、生成AI(Generative AI)の利用が目新しさから習慣へと急速に移行し、トップ20屈指の伸びとして表れている点が特徴的だとJarboe氏は整理しています。
勝ち組その他:LinkedIn・USPS.com・Twitch・Comix.to
AIチャットボット以外の勝ち組もあります。LinkedInは21位から19位に上昇し、訪問数は前年比15.48%増の473.7 millionで初めてトップ20入りしました。USPS.comは前年比12.04%増で、実用性と習慣がトラフィックを牽引し続けている例だとされています。Twitchは訪問数が25.6%伸び5つ順位を上げて25位に。Comix.toは前年比37.3%増で70位から56位へと14位上昇し、調べた中で最大の増加率だったとJarboe氏は書いています。
| サイト | 順位の変化 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 21位→19位 | 15.48%増 | 月間473.7 million訪問、今回のデータで初のトップ20入り | |
| USPS.com | (出典では明示されていません) | 12.04%増 | – |
| Twitch | 5つ上昇し25位 | 25.6%増 | – |
| Comix.to | 70位→56位(14位上昇) | 37.3%増 | 調査対象の中で最大の増加率 |
負け組の筆頭:Bingが50.43%減、Temuは28.55%減
負け組を見ると、Jarboe氏が「驚いた」と書くのは、トップ20の中で最も急な下落が、苦戦する報道サイトでもソーシャルメディアでもなく、Bingだったという点です。Bingは前年比50.43%減。Microsoftはこの3年間、莫大な資金を投じてCopilotをBingに組み込んできましたが、その賭けはRedmondの期待通りには実を結んでいないと書いています。Bing単体の検索シェアはここ数年Googleに対しほぼ横ばいで、今回もその延長だと見ています。
もう一つの大きな下落はTemuで、前年比28.55%減。こちらは原因がはっきりしています。2025年半ばに、低価格の中国製品に対する「デミニマス(de minimis)」関税免除が終了し、Temuの米国事業を築いた価格優位性を大きく損ないました。当時の報道では、広告費とアプリランキングが同時に落ち込んだとされ、Jarboe氏はSEOの話でもAIの話でもなく貿易政策の話だったと整理しています。
負け組その他:Amazon・Yahoo・DuckDuckGo・ESPN・NBCNews.com
残りの負け組は予想どおりのものと意外なものが混在しています。Amazonは前年比15.31%減、EC業界の健全性を測る指標(bellwether)とされるサイトの下落だけに注目に値します。Yahooは13.82%減。DuckDuckGoは15.83%減で、検索エンジンである点を踏まえると重く受け止めるべき数字とされています。ESPNは19位から24位、訪問数は16.0%減の366.0 million、NBCNews.comは145位まで35位下降し訪問数は20.2%減でした。トップ3より下のレイヤーでも偏った再分配が起きている、とJarboe氏は総括しています。
| サイト | 順位の変化 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Amazon | (出典では明示されていません) | 15.31%減 | – |
| Yahoo | (出典では明示されていません) | 13.82%減 | – |
| DuckDuckGo | (出典では明示されていません) | 15.83%減 | – |
| ESPN | 19位→24位 | 16.0%減 | 月間366.0 million訪問 |
| NBCNews.com | 35位下降し145位 | 20.2%減 | – |
GA4だけでは見えないもの――ある出版サイトの実例
Jarboe氏はこの記事の後半で、Jes Scholz氏が2月に発表した記事「Why GA4 alone can’t measure the real impact of AI SEO」を引用しています。GA4だけに頼ることは計測を「analyticsのバミューダトライアングル」と呼ぶ状態に迷い込ませるとScholz氏は論じていました。Jarboe氏はあるニッチな出版系サイトに無償でコンサルティングを提供しており、2026年1月1日から8月26日までのGA4レポートを前年同期と比較したところ、セッション数は105%超、エンゲージセッションは111%近く、主要イベント(key events)は80.5%程度の増加で、表面的には「勝っている」ように見えました。
しかし同じレポートを読み進めると、ダイレクトトラフィックは157%を超えて増加し、全トラフィックに占める割合は78%を超え、1年前の約62.5%から上昇しています。Jarboe氏は、「ダイレクト」はGA4が帰属を特定できないものに貼るラベルであり、その増加分はAIチャットのインターフェース内で生成された、リファラーデータを失ったリンク経由で到着しているものだと書いています。
GA4には、ChatGPT、Gemini、DeepSeek、Copilot、Grokからの訪問を追跡する「AI Assistant」チャネルがありますが、AI OverviewsとAI Modeは除外されています。同チャネルを追加した2026年5月13日以降、このサイトのAI Assistantチャネル経由はわずか0.47%にとどまっているとJarboe氏は書いています。
計測にどう向き合うか(編集部の見解)
ここからは、報じられた内容を踏まえたScale Basics編集部の判断です。今回の勝敗表はSemrush Traffic Analyticsという第三者ツールによる推計であり、自社サイトの実際の順位や流入が同じように動くとは限りません。米国トップ150サイト全体の勢力図であって個別サイトの実測値ではないという前提を崩さずに読む必要があります。
そのうえで示唆として受け止めるべき点は少なくありません。ChatGPT.comが9位に浮上し48.38%増となった一方でBingが50.43%減という数字は、AIチャットボット経由の検索利用が習慣化しつつあることを裏づけています。BingにCopilotを組み込む投資がまだ報われていないという指摘も無視しにくい材料です。
もう一つ重要なのは、GA4の「ダイレクト」トラフィックが増え続けているという指摘です。自社のGA4でも構成比が年々増えていないか確認する価値があります。GA4のAI AssistantチャネルはChatGPT・Gemini・DeepSeek・Copilot・GrokをカバーしつつAI OverviewsとAI Modeを除外しており、この数値だけでAI経由の流入は把握できません。Jarboe氏が勧めるのは、Semrushのようなトラフィック推計ツールや、SparkToro、GWI、YouGov Profiles、SurveyMonkey・Typeform・Google Forms・Qualtricsといった調査ツールの併用です。
まとめ
・Search Engine LandがSemrush Traffic Analyticsのデータをもとに、米国サイトの年間トラフィックの勝敗を報告。データは2026年7月時点を1年前の同時期と比較した第三者ツールの推計であり、GA4による自社サイトの実測値ではない
・上位は不変も伸び率は別物。Googleが25.3 billionで首位(前年比10.72%増)、YouTubeが10.3 billionで2位(36.6%増)、Redditが2.61 billionで3位。上位3サイトでトップ10の54.3%、トップ10で全体の68.6%(前年68.8%)を占める
・最大の勝ち組はChatGPT.com(9位、48.38%増)。LinkedIn・USPS.com・Twitch・Comix.toも増加。最大の負け組はBing(50.43%減)とTemu(28.55%減、関税免除終了が要因)、ほかAmazon・Yahoo・DuckDuckGo・ESPN・NBCNews.comも減少
・GA4だけでは流入元を追いきれない実例も紹介。あるニッチ出版サイトではダイレクトトラフィックが前年の約62.5%から78%超に拡大し、AI AssistantチャネルはAI OverviewsとAI Modeを除外している
・編集部としては、今回の数値は自社の実測値ではなく第三者推計である前提を踏まえたうえで、GA4のダイレクトトラフィック比率の推移確認と、他の推計・調査ツールの併用を勧める
よくある質問
Q1: 今回のデータはGA4の実測値ですか?
いいえ。Search Engine Landが使ったのはSemrush Traffic Analyticsという第三者ツールで、米国で最も訪問されているウェブサイトを追跡し、リストを毎月更新しているものです。Jarboe氏は2026年7月時点のデータを取得し、その1年前の同時期と比較しました。これは各サイトの自社GA4による実測トラフィックではなく、あくまで推計値である点に注意が必要です。
Q2: この1年でトラフィックが最も伸びたサイトはどこですか?
記事内で最も強調されているのはChatGPT.comです。前年比48.38%増となり、米国の全ウェブサイトの中で9位にランクインし、月間訪問数は1.09 billionでDuckDuckGoとBingを上回りました。ほかにもYouTubeが36.6%増、LinkedInが15.48%増(473.7 million、初のトップ20入り)、Comix.toが37.3%増(70位から56位)など複数のサイトが伸びています。
Q3: GA4だけでトラフィックの流入元をすべて把握できますか?
記事が紹介する事例では、把握しきれていません。あるニッチな出版サイトでは、2026年1月1日から8月26日までのダイレクトトラフィックが前年同期の約62.5%から78%を超える割合まで拡大していました。GA4のAI Assistantチャネルは、ChatGPT・Gemini・DeepSeek・Copilot・Grokからの訪問は追跡する一方、GoogleのAI OverviewsとAI Modeはこのチャネルから除外されており、このサイトでは同チャネル経由の割合が0.47%にとどまっています。
出典:The big winners and losers in U.S. website traffic over the past year(Search Engine Land、Greg Jarboe氏、2026年9月4日)https://searchengineland.com/winners-losers-us-website-traffic-past-year-486843