何が起きたか:プリセットの制約が外れ、任意の整数日を指定できるように
Search Engine Landの記事は、この更新を「両方のコンバージョンタイプについて、いくつかのプリセットの制約を取り除くもの(“The update removes several preset limitations for both click-through and engaged-view conversions.”)」と説明しています。新機能の追加というより、選択肢が固定されていた設定の自由度が広がった、という位置づけです。
この件はGoogleアナリティクスの更新履歴ページ(英語版の「What’s new in Google Analytics」)にも掲載されており、2026年8月11日の項目として「Googleアナリティクスのコンバージョンが、クリックスルー コンバージョン(CTC)とエンゲージビュー コンバージョン(EVC)についてカスタムの整数ルックバック ウィンドウをサポートするようになりました」と記載されています。ただし同ページの日本語版は確認時点で未反映で、最新項目は2026年8月10日の「キャンペーン データのインポートの検証レポート」でした。日本語UIのアカウントでは、ヘルプの表記と実際の画面が一時的にずれる可能性があります。
新旧の比較:EVCは固定3日から1〜30日、CTCは6択から1〜90日
Search Engine Landが挙げている変更内容は次の2点です。いずれも「任意の整数値(any integer value)」を指定できるようになった点が共通しています。
| コンバージョンの種類 | 従来の設定 | 今回の変更後 |
|---|---|---|
| エンゲージビュー コンバージョン(EVC) | 固定の3日ウィンドウ | 1〜30日の任意の値 |
| クリックスルー コンバージョン(CTC) | 1・7・14・30・60・90日のプリセット | 1〜90日の任意の値 |
押さえておきたいのは、2つの変更が同じ性質ではない点です。CTCの上限90日は従来のプリセットにも含まれていた値で、範囲が広がったわけではありません。変わったのは刻みの細かさで、従来は45日を指定したければ30日か60日に寄せるしかなかったところを、45日と直接指定できるようになりました。一方EVCは従来が3日の固定ウィンドウだったため、指定できる幅そのものが生まれた形です。
設定場所:「広告」>「コンバージョン管理」>「設定」
新しい設定は、Googleアナリティクスの「広告」>「コンバージョン管理」>「設定」から利用できるほか、リンク済みのGoogle広告のコンバージョン管理画面でも設定できる、とSearch Engine Landは記しています。前述の更新履歴(英語版)では、もう一段細かく「広告 > コンバージョン管理 > その他アイコン > 設定」という階層が示されています。「設定」が直接見当たらない場合は、コンバージョン管理画面のその他アイコンを開くと覚えておくとよいでしょう。
Google広告側では、ヘルプの「計測期間について」に「目標」>「コンバージョン」>「概要」>「設定を編集」>「設定」タブ>「クリックスルー コンバージョンの計測期間」という導線が記載されており、同じ導線に「エンゲージ ビュー コンバージョンの計測期間」の項目もあります。なお同ページには本稿確認時点で、クリックスルー コンバージョンは「デフォルトの計測期間は 30 日になります」「1〜30 日、60 日、または 90 日の範囲で指定できます」、エンゲージ ビュー コンバージョンは「デフォルトの計測期間は 3 日になります」「1〜30 日の任意の期間を指定することもできます」と記載されています。Googleアナリティクス側の今回の変更とは表記の粒度が異なるため、実際に選べる値はアカウントの画面で確認するのが確実です。
前提整理:ルックバック ウィンドウが決めていること、GA4の設定との違い
そもそもルックバック ウィンドウ(計測期間)とは何か。アナリティクス ヘルプの「キーイベントのルックバック ウィンドウを変更する」には、「計測期間は、どれくらいの期間をさかのぼってタッチポイントをアトリビューションへの貢献度の対象とするかを決定します」と説明されています。コンバージョン発生時点から何日前までさかのぼって広告接点を成果として数えるか、という線引きです。
この線引きが短すぎると、実際には広告がきっかけだったコンバージョンが数えられず、貢献が過小評価されます。逆に長すぎると因果の薄い遠い接点まで拾い、過大に見えます。どちらに振れてもレポートの数字自体は出てくるため、設定が実態と合っているかは意識的に点検しないと気づけません。
紛らわしいのは、Googleアナリティクスに性格の異なる「期間」の設定が複数ある点です。今回変わったのはCTC/EVCの計測期間ですが、これとは別にGA4レポート側のアトリビューション設定があります。ヘルプの「[GA4] アトリビューション設定を選択する」によれば、場所は「管理」の「データの表示」から「イベント」をクリックし「アトリビューション設定」を開く導線です。同ページには、ユーザー獲得キーイベント(first_openとfirst_visit)は「デフォルトのルックバック ウィンドウは30日」で7日間にも切り替えられ、その他すべてのキーイベントは「デフォルトのルックバック ウィンドウは90日」で30日または60日も選択できる、と記載されています。こちらは確認時点で引き続き決められた選択肢から選ぶ形で、混同すると「アトリビューション設定を開いたのに任意の日数が入力できない」という食い違いが起きます。
EVCは動画広告のための指標――3日固定だった意味
EVCが3日固定だった背景を理解するには、これがどういうコンバージョンかを押さえる必要があります。Google広告ヘルプの「エンゲージビュー コンバージョンについて」では、スキップ可能なインストリーム広告では「ユーザーが広告を 10 秒以上視聴した。広告が 10 秒未満の場合は、広告全体を視聴した」場合、インフィード広告では「ユーザーが広告を 5 秒以上視聴した」場合、YouTubeショート広告では「ユーザーが広告を 5 秒以上視聴した。または、広告の行動を促すフレーズのボタンをクリックした」場合が、エンゲージメントの条件として挙げられています。
クリックのような能動的な行動ではなく、一定時間の視聴という「関与」を起点に数えるため、起点と成果の結びつきはクリックより弱くなります。3日という短い固定値は、その弱さを踏まえた保守的な既定値だったと考えられます。1〜30日で設定できるようになったことは、動画広告が後段のコンバージョンに寄与する実態を反映しやすくする一方、期間を安易に伸ばせば動画広告の貢献が実態以上に大きく見える方向にも働きます。3日と30日では10倍の開きがあり、EVCを動かす際はCTC以上に慎重さが求められます。
実務への影響:BtoBの長い検討期間とECの短いサイクル
この更新が効くのは、購買サイクルがプリセットの区切りと噛み合っていなかったケースです。Search Engine Landも、任意の整数値を選べる価値は「アトリビューションを長い購買サイクルにも短い購買サイクルにも合わせやすくする」点にあると指摘しています。
たとえばBtoBのように検討期間が長い商材では、CTCが30日だと期間内に収まらない案件が出る一方、60日にすると古い接点まで拾うという悩みが生じます。自社のリードタイムの実測値が45日前後だとわかっているなら、今回の変更でその値をそのまま指定できます。逆に日用品ECのように購入までが数日で完結する商材では、30日のままだとほぼ無関係な古いクリックまで計上され続けます。短い値を直接選べることは、こうした過大評価を抑える方向に働きます。
これは「短ければ厳しく、長ければ甘い」という単純な話ではなく、自社の実際のリードタイム分布に合わせるべき設定です。CRMやMAツールで初回接触から成約までの日数を計測しているなら、その分布を確認したうえで日数を決めるのが、勘に頼らない決め方になります。
設定を変える前に確認しておきたいこと
最も注意すべきは、過去データの扱いと比較期間の解釈です。今回のCTC/EVCの任意整数設定について、変更が過去データに遡って再計算されるのかは、Search Engine Landの記事にも更新履歴にも明記されていません。「遡って直る」「遡らない」のいずれも前提にせず、実際の挙動をアカウント上で確認するのが安全です。
参考までに、アナリティクス ヘルプには性質の異なる2つの記述があります。「[GA4] アトリビューション設定を選択する」には「レポート用のアトリビューション モデルの変更は、過去と将来のデータに適用されます」とある一方、「キーイベントのルックバック ウィンドウを変更する」には「計測期間に加えられた変更は、それ以降に適用され」るとあります。モデルの変更とウィンドウの変更で扱いが異なると読める以上、「モデルを変えたときと同じ感覚でウィンドウを変える」のは避けるべきです。
もう一つは比較期間の解釈です。計測期間を変更すると、変更前後をまたぐ期間比較では、コンバージョン数の増減が施策の効果なのか設定変更の影響なのかを切り分けられなくなります。変更日を記録し、レポートの注釈や運用ドキュメントに残すことが最低限の備えです。なお、期間を長くすればクリックから日をまたいだコンバージョンが後から計上される余地が広がるため、直近の日次データは相対的に確定しにくくなると考えられます。自動入札との関係は今回確認できた出典に記述がないため断定しませんが、レポート上のコンバージョン数の水準が変わる以上、変更後しばらくは挙動を見る期間を設ける運用が無難です。
今日からできる確認手順
まず、Googleアナリティクスの「広告」>「コンバージョン管理」>「設定」(見当たらない場合はその他アイコンから)を開き、CTCとEVCの計測期間に現在どの値が入っているかを記録します。既定のままか、過去に誰かが変更したのかを、変更前に控えておくのが最初の一歩です。
次に、Google広告側のコンバージョンアクション設定でも同じ項目を確認します。アクションが複数ある場合は値が異なる可能性があるため、一覧で棚卸しするのが確実です。そのうえで自社の実測リードタイムと現在の設定値を突き合わせ、乖離が大きい場合のみ変更を検討し、変更時は日付をドキュメントに残す。この3点を押さえれば、増した自由度をレポートの一貫性を壊さずに活かせます。
所感
Scale Basics編集部としては、この更新はCTCとEVCで意味合いを分けて理解するのが正確だと考えています。CTCは変わったのが刻みだけなので、「これまで測れなかったコンバージョンが測れるようになる」変更ではなく、すでに測れていたものの精度を実態に寄せる変更にとどまります。一方EVCは3日固定から1〜30日へと幅そのものが広がっており、動画広告の評価水準が設定次第で大きく動きうる点で、影響の振れ幅はこちらのほうが大きいと見ています。
その前提に立てば、今すぐ全アカウントで設定を触りに行く必要はありません。優先すべきは、現在の計測期間の値を把握することと、実測リードタイムのデータを自社が持っているかを確認することの2点です。CRM側の分布を見ないまま「BtoBだから長めに」と勘で日数を入れてしまうと、根拠のない数字がその後のレポートの前提として固定化されてしまいます。
また、複数の代理店や担当者が関わるアカウントでは、この種の設定は「いつ誰が何を変えたか」が最も失われやすい情報です。任意の整数値が入るようになった分、設定値のバリエーションは以前より増えます。設定値と変更日を残す運用を先に整えてから触る、という順序を強くおすすめします。
まとめ
・Googleアナリティクスで、クリックスルー コンバージョン(CTC)とエンゲージビュー コンバージョン(EVC)のルックバック ウィンドウを任意の整数日で設定できるようになったと、Search Engine Land(2026年8月14日付)が報じた
・EVCは従来の固定3日から1〜30日へ、CTCは1・7・14・30・60・90日のプリセットから1〜90日へ変わった。CTCは刻みが細かくなった変更、EVCは指定できる幅そのものが広がった変更にあたる
・設定場所は「広告」>「コンバージョン管理」>「設定」と、リンク済みのGoogle広告のコンバージョン管理画面。更新履歴(英語版)には2026年8月11日の項目として掲載されている
・GA4レポート側のアトリビューション設定にあるキーイベントのルックバック ウィンドウ(30日/7日、90日/30日/60日)とは別の設定であり、混同しないよう注意が必要
・変更が過去データに遡って再計算されるかは出典に明記がなく断定できない。変更日を記録し、変更をまたぐ期間比較の解釈には但し書きを添える運用が安全
よくある質問
Q1: 今回の変更で、コンバージョン期間の上限は延びたのですか?
CTCとEVCで事情が異なります。クリックスルー コンバージョン(CTC)は1〜90日になりましたが、上限の90日は従来のプリセット(1・7・14・30・60・90日)にも含まれていた値で、範囲が広がったのではなく、その間の値を任意の整数で直接指定できるようになったのが変更点です。一方エンゲージビュー コンバージョン(EVC)は、Search Engine Landによれば従来が3日の固定ウィンドウだったため、1〜30日という指定できる幅そのものが新たに生まれた形です。
Q2: 設定はどこから変更できますか?
Search Engine Landによれば、Googleアナリティクスの「広告」>「コンバージョン管理」>「設定」、およびリンク済みのGoogle広告のコンバージョン管理画面から設定できます。更新履歴(英語版)では「広告 > コンバージョン管理 > その他アイコン > 設定」と示されているため、「設定」が直接見つからない場合はその他アイコンを開いてください。Google広告側では「目標」>「コンバージョン」>「概要」>「設定を編集」>「設定」タブに該当項目があります。
Q3: 計測期間を変更すると、過去のレポート数値も再計算されますか?
今回のCTC/EVCのカスタム計測期間について、過去データが再計算されるかはSearch Engine Landの記事にも更新履歴にも明記されておらず、断定できません。参考として、アナリティクス ヘルプには「レポート用のアトリビューション モデルの変更は、過去と将来のデータに適用されます」という記述がある一方、キーイベントのルックバック ウィンドウについては「計測期間に加えられた変更は、それ以降に適用され」ると、扱いが異なると読める記述があります。実運用では変更日を必ず記録し、変更をまたぐ期間比較では設定変更の影響を切り分けられない前提で解釈してください。
出典:Google Analytics Adds Custom Conversion Attribution Windows(Search Engine Land、Anu Adegbola氏、2026年8月14日)https://searchengineland.com/google-analytics-adds-custom-conversion-attribution-windows-485014
参考:What’s new in Google Analytics(アナリティクス ヘルプ/英語版)https://support.google.com/analytics/answer/9164320?hl=en
参考:計測期間について(Google 広告 ヘルプ)https://support.google.com/google-ads/answer/3123169?hl=ja
参考:エンゲージビュー コンバージョンについて(Google 広告 ヘルプ)https://support.google.com/google-ads/answer/10048752?hl=ja
参考:[GA4] アトリビューション設定を選択する(アナリティクス ヘルプ)https://support.google.com/analytics/answer/10597962?hl=ja
参考:キーイベントのルックバック ウィンドウを変更する(アナリティクス ヘルプ)https://support.google.com/analytics/answer/16291704?hl=ja