何が起きたか:AI Modeで「Gemini 3.7 Flash」が選べるようになった
Search Engine Journalは「Google Brings Gemini 3.7 Flash To AI Mode In Search(GoogleがGemini 3.7 Flashを検索のAI Modeに投入)」と題した記事で、Googleがモデルの初回リリースの翌日に、AI Modeの選択可能なモデル(selectable model)としてGemini 3.7 Flashを追加したと報じました。発表したのはGoogle検索のプロダクト担当VPであるRobby Stein氏で、X上で「better at following instructions + understanding your intent, so you get even more helpful responses(指示に従うこと、そしてあなたの意図を理解することがより得意になり、さらに役立つ回答が得られる)」と書いています。
Search Engine Landも同日、同じ動きを報じました。同記事によれば、Barry Schwartz氏がGoogleに問い合わせた翌日に、Stein氏がXで「We’re bringing Gemini 3.7 Flash to Search!(Gemini 3.7 Flashを検索に持ち込みます)」と発表したという経緯です。提供条件として両記事が共通して伝えているのが「Rolling out today globally in AI Mode for Google AI Pro & Ultra subs in English(本日よりAI Modeにて、Google AI Pro および Ultra 契約者向けに英語でグローバルに展開)」という一文です。
選び方と提供条件:「+」アイコンから「Gemini 3 models」で切り替える
操作手順も両記事に明記されています。Search Engine Journalによれば、Gemini 3.7 FlashはAI Modeの「Ask anything」バーにあるモデルメニューから選択でき、そのメニューは「+」アイコンをクリックすると表示されます。表示位置は「Gemini 3 models」セクションの中で、「Auto」と「Pro」のすぐ隣だと記載されています。
提供条件で押さえるべきは、対象がGoogle AI Pro および Ultra の契約者に限られる点です。Search Engine Journalは「3.7 Flashを選択するにはAI ProまたはUltraのサブスクリプションが必要で、つまりAI Modeの無料枠には届かない」と明記しており、無料でAI Modeを使っているユーザーは今回の選択肢を持ちません。言語は英語で提供開始と報じられており、日本語環境での提供可否については、いずれの記事にも記載がありません。
モデル本体の発表は前日――公式ブログに検索への言及はなかった
Gemini 3.7 Flashそのものは、AI Modeへの追加の前日にあたる2026年8月13日にGoogleが発表しています。Google公式ブログ「Introducing Gemini 3.7 Flash」(Tulsee Doshi氏、プロダクトマネジメント担当シニアディレクター)を直接確認したところ、Googleは同モデルを「our most intelligent workhorse model yet for coding and agents(コーディングとエージェント向けとして、これまでで最も知的な主力モデル)」と位置づけ、Gemini 3.6 Flashのわずか3週間後のリリースだと説明しています。掲載されているベンチマークは、FrontierCode 1.1 Mainが43.6%(3.6 Flashは34.4%)、DeepSWE v1.1が65.3%(同49.0%)などです。
重要なのは、この公式ブログの「Try it today」に挙げられている提供先が、Google Antigravity、Gemini API(Google AI Studio)、Gemini Enterprise、Gemini アプリのSpark(Google AI Pro および Ultra 契約者、160か国以上)などにとどまり、Google検索やAI Modeへの言及が一切ないことです。AI Modeへの投入は、翌日に別途アナウンスされた格好になります。
背景:AI Modeのモデル世代交代はこう進んできた
Search Engine Journalは、今回の追加をGoogleが繰り返してきたパターンの一環として整理しています。同記事によれば、AI Modeのローンチ以降、まず11月にGemini 3 ProがAI Modeに導入され、既存の既定モデルと並ぶ選択肢として提供されました。その翌月にGemini 3 FlashがAI Modeの既定モデルとなり、さらに5月のGoogle I/OでGemini 3.5 Flashがグローバルの既定モデルとしてこれを置き換えた、という流れです。
この構図の理由についても記載があります。同記事は、2月時点でGoogleのチーフサイエンティストだったJeff Dean氏が、レイテンシ(応答遅延)とコストの低さゆえにFlash系モデルが検索のプロダクション層(production tier)であり続けると述べたことを紹介し、このサイクルを今後のモデル世代でも継続する方針だと指摘しています。新しいFlashは「まず選択肢として追加され、後に既定へ昇格する」というのが、これまでのパターンだったわけです。なおメニューに並ぶ「Auto」は、同記事によれば昨年11月からGoogleがAI Modeに組み込み始めた自動モデルルーティングを指します。
まだ公表されていない3つの論点
実務で誤った前提を置かないために、「わかっていないこと」も押さえておく必要があります。Search Engine Journalは、Stein氏がGemini 3.7 FlashがAI Modeの既定モデルになるのか、また自動モデルルーティングの対象に含まれるのかについて、いずれも言及しなかったと明記しています。1つ目は既定モデルの扱いで、同記事は「今回の展開は新たな既定を設定するものではなく、便利なツールを提供するもの」と評しています。2つ目は「Auto」の中身で、Autoが3.7 Flashにルーティングし得るのかは公表されておらず、Autoで得た回答がどのモデルによるものかを外部から特定することはできません。
3つ目はヘルプドキュメントの記載です。Search Engine Journalは「AI Modeのモデルメニューに関するGoogleのサポートドキュメントは、いまだに『Fast』と『Pro』の2つのみをオプションとして説明しており、Autoや新しいFlash層を反映する更新がされていない」と指摘しています。編集部でもGoogle 検索ヘルプの「Get AI-powered responses with AI Mode in Google Search」を取得して確認したところ、モデル選択の記述は「Pro」と「Fast」の2点のみで、Autoや3.7 Flashへの言及は見当たりませんでした。ヘルプを根拠に「AI Modeで選べるモデルは2つ」と説明すると、実態と食い違う点に注意が必要です。
SEO/GEO実務への影響:引用のブレを「モデル差」と切り分けられる
AI Modeの回答に自社ページが引用されるかを追っている担当者にとって最も悩ましいのが、「同じクエリなのに引用先が回ごとに変わる」という現象です。原因の候補には生成のゆらぎ、パーソナライズ、インデックスの更新、そして応答したモデルの違いが混在しています。
Search Engine Journalは、この点にこそ今回の追加の実務価値があると位置づけています。同記事は「もしAI Modeの引用が一貫しないことを追跡しているなら、同じクエリを3.7 Flash、Auto、Proで実行して結果を比較することで、モデル自体が差を生んでいるのかどうかを確認できるようになった」と書いています。従来はモデルを固定した比較が難しく、モデル差という変数を分離しにくかったわけです。
一方でその価値は限定的でもあります。同記事が「現時点では価値はやや限定的」と評しているとおり、選択にはAI ProまたはUltraの契約が必要で、無料枠のAI Modeでは同じ操作ができません。検証は有料契約者の環境でしか行えないという制約が付きます。なおSearch Engine LandのBarry Schwartz氏は「Googleはおそらく今後数週間から数か月のうちに、無料プランを含むすべての検索ユーザーにこれを展開するだろう」との見通しを示していますが、これは同氏の予測であり、Googleが表明した予定ではありません。
今日からできる検証手順
報じられている範囲の機能だけで組める、モデル差の切り分け手順を整理します。前提として、Google AI Pro または Ultra の契約アカウントと、英語でのAI Mode利用が必要です。
手順1:検証クエリを固定します。自社が引用されたい情報探索型のクエリを5本から10本ほど選び、表記を1文字も変えずに使い回せるようテキストで保存しておきます。
手順2:同じアカウント・同じ日・できるだけ短い時間帯の中で、AI Modeの「Ask anything」バーの「+」アイコンからモデルメニューを開き、Gemini 3.7 Flash、Auto、Proの3条件で同一クエリを実行します。条件を変えるのはモデルだけにするのが要点です。
手順3:各回答について、引用として提示されたドメインとURL、自社ページが含まれたかを記録します。あわせて、選択したモデル名・実行日時・アカウントの契約種別を必ず併記してください。後からどの条件の記録か判別できなくなるのが、最も多い失敗です。
手順4:モデルを変えずに同じクエリを複数回実行する対照も取ります。同一モデル内でも引用先が動くのであれば、その揺れはモデル差ではなく生成のゆらぎとして扱うべきものです。ここを飛ばすと、単なるゆらぎをモデルの性格差と読み違えます。
手順5:結果の読み方を決めておきます。モデルを切り替えたときだけ引用先が体系的に変わるなら、変動要因はモデル側にあると考えられます。どのモデルでも自社ページが引用されない、あるいは同じ競合が引用され続けるなら、要因は自社ページ側にあると見て、コンテンツ改善に工数を振り向ける判断ができます。なお「Auto」の結果は「Autoという条件で得られた結果」として独立に扱ってください。AutoがどのモデルにルーティングしているかはGoogleが公表していないため、特定モデルの結果と同一視できません。
所感
Scale Basics編集部としては、今回の追加を「AI Modeの性能が上がったニュース」ではなく、「AI Modeの計測に使える実験条件が1つ増えたニュース」として受け取るのが実務的だと考えています。既定モデルは変わっておらず、対象は有料契約者の英語環境に限られるため、日々の順位や流入への直接的な影響を今すぐ論じられる材料は報道の範囲に含まれていません。
特に注意したいのは、有料契約者の環境で得た検証結果を、無料ユーザーが見ているAI Modeの実態として社内やクライアントに報告してしまうことです。無料枠では3.7 Flashを選べないと明記されている以上、結果には必ず「AI Pro/Ultra契約・英語・モデル明示指定」という条件を添えるべきです。また、公式ヘルプがUIに追いついていない状況が示すとおり、AI Modeのモデル構成はドキュメントだけでは追えなくなっています。今後の既定モデル交代を見落とさないために、モデルメニューのスクリーンショットを月次で残すといった地味な記録が効いてくる局面だと見ています。
まとめ
・GoogleがAI Modeの選択可能なモデルにGemini 3.7 Flashを追加し、Google AI Pro および Ultra の契約者向けに英語でグローバル提供を開始したと、Search Engine JournalとSearch Engine Landが2026年8月14日に報じた
・選択はAI Modeの「Ask anything」バーの「+」アイコンから開くメニューで行い、「Gemini 3 models」セクションの「Auto」「Pro」の隣に表示される
・既定モデルになったのか、「Auto」の自動ルーティング対象かはいずれも公表されておらず、Googleのサポートドキュメントは現在も「Fast」と「Pro」の2つしか説明していない
・モデル本体は前日の8月13日に「コーディングとエージェント向けとして最も知的な主力モデル」として発表されたが、公式ブログにGoogle検索やAI Modeへの言及はなかった
・実務上の使いどころは、同一クエリをGemini 3.7 Flash・Auto・Proで実行して引用先を比較し、AI Modeの引用のブレがモデル差によるものかを切り分ける検証にある
よくある質問
Q1: Gemini 3.7 FlashはAI Modeの既定モデルになったのですか?
既定モデルになったとは報じられていません。Search Engine Journalは、今回の展開は新たな既定を設定するものではなく便利なツールを提供するものだと評しており、Robby Stein氏は既定になるのか、「Auto」の自動モデルルーティングの対象に含まれるのかについて言及しなかったと明記しています。同記事によれば、直近でAI Modeのグローバル既定と報じられていたのは5月のGoogle I/Oで導入されたGemini 3.5 Flashです。
Q2: 日本語のAI Modeでも使えますか?
今回は英語での提供開始と報じられています。Search Engine Journal・Search Engine Landのいずれも「in English(英語で)」グローバルに展開すると記載しており、日本語環境での提供可否には両記事とも触れていません。したがって現時点では、日本語で利用できるかどうかは不明です。
Q3: SEO担当者はこの追加をどう使えばよいですか?
AI Modeの引用先が回ごとに変わる原因を切り分ける検証に使えます。Search Engine Journalが指摘しているとおり、同じクエリをGemini 3.7 Flash、Auto、Proの3条件で実行して結果を比較すれば、モデル自体が差を生んでいるかを確認できます。ただし選択にはGoogle AI ProまたはUltraの契約が必要で、無料枠では同じ操作ができないため、結果を報告する際は契約種別・言語・選択したモデル名を条件として明示してください。
出典:Google Brings Gemini 3.7 Flash To AI Mode In Search(Search Engine Journal、Matt G. Southern氏、2026年8月14日)https://www.searchenginejournal.com/google-brings-gemini-3-7-flash-to-ai-mode-in-search/585923/
出典:Gemini 3.7 Flash rolling out in Google Search(Search Engine Land、Barry Schwartz氏、2026年8月14日)https://searchengineland.com/gemini-3-7-flash-rolling-out-in-google-search-485058
参考:Introducing Gemini 3.7 Flash(Google 公式ブログ、Tulsee Doshi氏、2026年8月13日)https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/introducing-gemini-3-7-flash/
参考:Get AI-powered responses with AI Mode in Google Search(Google 検索ヘルプ)https://support.google.com/websearch/answer/16011537