何が起きたか:AI Citationsにブランド指名の軸が入った
Search Engine Landの報道によれば、Microsoftはアクセス解析ツールのClarityを更新し、AI Citationsダッシュボードおよび各AIレポートに、ブランド指名(branded)と非指名(non-branded)の内訳を追加しました。原文の表現では、Clarityはクエリ分析とフィルタリングをまたいで両者を切り分けられるようになっています。
ここで扱われているクエリは、ユーザーが検索窓に入力したキーワードではありません。Microsoftの説明では、AIシステムが回答の裏付けとなる情報を探すために使う「grounding queries(グラウンディング・クエリ)」、つまりAIが回答を組み立てる過程で内部的に投げる問い合わせが対象です。今回の更新は、その問い合わせについて自社ブランド名を含むものと含まないものを見分けられるようにしたものです。
Search Engine Landは記事内で、これらの新機能を示すMicrosoft Clarityブログのスクリーンショットを掲載しています。原文が扱っているのは、「何が追加されたか」の4点と、Microsoftの発言の引用、そしてSearch Engine Land自身の評価です。
Microsoftの発言:「ブランド指名クエリのセグメンテーション」
Search Engine Landは、Microsoftの説明として2つの文を引用しています。ひとつ目は次のとおりです。
「その分析をより簡単にするため、Microsoft Clarityは今回、AI Citationsダッシュボードにブランド指名クエリのセグメンテーションを追加します(To make that analysis easier, Microsoft Clarity now adds branded query segmentation to the AI Citations dashboard)」
ふたつ目は、追加された機能が何を可能にするかを述べたものです。
「AIシステムが回答の裏付け情報を調べるために使うグラウンディング・クエリについて、ブランド指名のものと非指名のものを区別できるようになりました(You can now distinguish branded and non-branded grounding queries AI systems use to look up supporting information for a response)」
Microsoftが「その分析をより簡単にするため」と書いていることからも、分析対象そのものが増えたというより、すでに取れていたデータを分けて読めるようにした更新だと読み取れます。
追加された4点の内訳
原文は、追加された「ブランド指名 対 非指名」のビューを4点挙げています。以下は原文の記述に沿った整理です。
1. クエリカードのブランド指名ラベル
個々のクエリが、クエリビューの中でブランド指名(branded)として明確にマークされるようになりました。原文の説明では、これによりブランド固有のクエリをすばやく特定でき、AIシステムが何を調べたのかをひと目で把握できるようになります。
2. Share of Authorityのクエリ種別による内訳
Share of Authorityカードが、ブランド指名クエリと非指名クエリで結果を分けて表示するようになりました。原文はこの効果を、自社の権威性(authority)がどこで最も強いのか――自社ブランドに言及したクエリなのか、より一般的なクエリなのか――をより明確に見られるようになる、と説明しています。なお、Share of Authorityという指標がどう算出されるのかについて、原文は説明していません。
3. ブランド指名/非指名のフィルタ
ダッシュボードのデータを、ブランド指名クエリまたは非指名クエリで絞り込めるようになりました。原文が挙げている用途は、AIシステムが自社ブランドを直接調べにきた場合と、より広く一般的なトピックを調べにきた場合とで、自社の可視性(visibility)のパフォーマンスがどう違うかを比較することです。
4. より精緻な引用分析
4点目は、上記3つの結果として得られる分析上のメリットです。原文の説明では、ブランド主導の需要(brand-led demand)と一般的な発見(generic discovery)を切り分けることで、ブランドの強さをより適切に評価でき、発見と比較検討の機会を特定でき、引用パフォーマンスの変化をより高い確信をもって解釈できるようになります。
原文が触れていないこと
書かれていない範囲を明確にしておくことが、誤った前提での判断を防ぎます。Search Engine Landの記事に記述がないのは次の点です。
- 機能の提供開始日、および全ユーザーへの展開が完了しているかどうか
- 対応言語、および日本語のブランド名がどう判定されるか
- 集計対象となるAIサービスの具体名(どのAIアシスタントやチャット体験が含まれるか)
- 「ブランド指名」の判定ロジック(表記ゆれや略称をどう扱うか)
- Share of Authorityの算出方法、および利用にあたっての料金や提供条件
いずれも原文には明示されていません。実際の挙動や判定の細かさは、自社アカウントで確認する必要があります。
背景:AI検索での可視性は「順位」では測れない
ここからは運営者による整理です。従来の検索では、可視性の測定は「特定のクエリで何位か、クリック率はどうか」の積み上げで成り立っていました。AIによる回答生成の中で自社サイトが参照される場合、この枠組みはそのまま使えません。何位かではなく、引用されたかどうかが単位になるためです。しかもユーザーが投げた質問と、AIが裏で実行した問い合わせは一致しません。Microsoftが「grounding queries」という言葉を使っているのは、まさにその層のデータだからです。
ここで重要なのは、AI検索での引用状況と検索順位は別物だという点です。引用が増えたことは順位が上がったことを意味しませんし、順位が安定していてもAIの回答内で参照されていないことはあり得ます。今回のClarityの更新はAI側の引用データを細かく見るためのものであって、検索順位のレポートではありません。社内で数値を共有するときは、この線引きを最初に明示しておくのが安全です。
実務への影響:分けて見ると何が判断できるのか
以下は運営者の解釈で、原文が保証する内容ではありません。原文が4点目に挙げた「ブランド主導の需要と一般的な発見を切り分ける」という説明に沿うと、実務上の読み方は整理できます。
ブランド指名クエリでの引用が多いのに非指名クエリでの引用が少ない場合は、すでに自社を知っている人がAIに尋ねたときには参照されるが、まだ自社を知らない人が一般的なテーマで質問したときには参照されていない状態を示唆します。既存の認知は機能しているが、新規の発見経路としては弱いという読み方です。原文が「発見と比較検討の機会を特定できる」と書いているのは、この種の欠落を見つけられるという意味だと解釈できます。逆のパターン、つまり非指名側で拾われているのにブランド指名側が弱い場合は、自社名で調べられたときに返せる情報が薄い可能性があります。
数値の変動を解釈するときも同様です。全体の引用数だけでは増減の理由が特定できませんが、ブランド指名側が増えたのか非指名側が増えたのかが分かれば、認知施策の効果とコンテンツ側の変更の効果を切り分けて考えられます。原文が「引用パフォーマンスの変化をより高い確信をもって解釈できる」と述べているのは、この切り分けを指しています。
Search Engine Land自身は、レポートをブランド指名/非指名で分解しフィルタできることは自分にとって意味のあるデータに集中する助けになるとし、今回の更新はAI可視性を理解するうえで扱える情報が少し増えるものだ、とまとめています。
今日からできる確認手順
原文に操作手順やUIの詳細は書かれていません。以下は運営者が、原文で説明されている機能の範囲内で組み立てた確認の順序です。実際の画面表示は自社アカウントで確認してください。
- 自社のClarityでAI Citationsダッシュボードが使える状態かを確認する。今回の更新はこのダッシュボードとAIレポートに対して行われたものです。
- クエリのビューでブランド指名のラベルが付いているかを見る。表示されていれば、更新が自社アカウントに届いていると判断できます。
- ラベルの中身を目視で確かめる。原文は判定ロジックを説明していないため、自社の表記ゆれ(英字表記、略称、サービス名単体など)がどう扱われているかは実データで見るほかありません。
- Share of Authorityカードで、ブランド指名側と非指名側のどちらで強いかを確認する。前段の2パターン(認知はあるが発見が弱い/発見はあるが指名で弱い)のどちらに近いかを判断します。
- フィルタで両者を切り替えて一覧する。非指名側のテーマは自社が答えるべき質問の実データ、ブランド指名側の軸(料金、評判、比較など)は自社名と一緒に何が調べられているかの手がかりです。記録は検索順位のレポートと混ぜず、欄を分けて残します。
所感
ここからは記事本文にはない、運営者の見解です。今回の更新は機能としては地味ですが、AI検索の計測という領域では実務的な意味が大きいと考えています。AI経由の引用データは「総量」でしか見えないことが多く、増減があっても原因の切り分けができなかったからです。ブランド指名か否かという軸は、その切り分けの中でも最も基本的で、解釈しやすいものです。
一方で、判定ロジックが公開されていない点は割り引いて見る必要があります。日本語圏の事業者にとっては、社名の英字表記とカタカナ表記、サービス名だけの言及、一般名詞に近いブランド名で判定がどう振る舞うかが実用性を左右します。ラベルを信じて集計を組む前に、そのラベルが自社にとって正しいかを見る、という順序が要ります。
報告のしかたにも注意が要ります。AI Citationsの数値は検索順位でもトラフィックでもなく、引用されたことが訪問につながるかは別の話です。そこを飛ばして「AIでの露出が増えたので成果が出た」と報告すると、後で説明がつかなくなります。今回できるようになったのは、あくまで「AIが何を調べにきて、そのとき自社が参照されたか」を種類別に見ることです。その範囲で使う限り、解析ツール側にこうした軸が増えたことは素直に歓迎できる変化だと見ています。
まとめ
・Search Engine Landが2026年8月3日付で、Microsoftがアクセス解析ツールClarityを更新し、AI CitationsダッシュボードとAIレポートにブランド指名/非指名の内訳を追加したと報じた
・Microsoftは「AIシステムが回答の裏付け情報を調べるために使うグラウンディング・クエリについて、ブランド指名と非指名を区別できるようになった」と説明している
・追加は4点で、クエリカードでのブランド指名ラベル表示、Share of Authorityのクエリ種別による内訳、ブランド指名/非指名でのフィルタ、そしてブランド主導の需要と一般的な発見の切り分けによるより精緻な引用分析である
・提供開始日、対応言語、対象となるAIサービス名、ブランド指名の判定ロジック、Share of Authorityの算出方法、料金や提供条件については原文に明示されていない
・AI検索での引用状況と検索順位は別の指標であり、引用が増えたことは順位が上がったことを意味しない
よくある質問
Q1: 今回Clarityに追加されたのは具体的にどの部分ですか?
Search Engine Landの報道によれば、AI CitationsダッシュボードとAIレポートに4点が追加されました。クエリカードで個々のクエリにブランド指名のラベルが付くこと、Share of Authorityカードがクエリ種別ごとに結果を分けて表示すること、ダッシュボードのデータをブランド指名/非指名で絞り込むフィルタが使えること、そしてブランド主導の需要と一般的な発見の切り分けによるより精緻な引用分析です。提供開始日や対応言語については原文に明示されていません。
Q2: ブランド指名クエリと非指名クエリを分けて見ると、何が判断できますか?
原文は、ブランド主導の需要と一般的な発見を切り分けることで、ブランドの強さをより適切に評価でき、発見と比較検討の機会を特定でき、引用パフォーマンスの変化をより高い確信をもって解釈できるようになると説明しています。フィルタの用途としては、AIシステムが自社ブランドを直接調べにきた場合と、より広く一般的なトピックを調べにきた場合とで、可視性のパフォーマンスがどう違うかを比較できると述べられています。
Q3: AI Citationsの数値が動いたら、検索順位が上がったと考えてよいですか?
いいえ、両者は別の指標です。AI Citationsが扱うのは、AIシステムが回答の裏付け情報を探すために実行した問い合わせと、そこで自社が参照されたかどうかであり、検索結果ページでの順位とは測定対象も変動要因も異なります。今回の更新はAI側の引用データをブランド指名か非指名かで分けて見られるようにしたものであり、検索順位に関する情報を提供するものではありません。
出典:Microsoft Clarity adds branded and non-branded AI queries(Search Engine Land、2026年8月3日)https://searchengineland.com/microsoft-clarity-adds-branded-and-non-branded-ai-queries-484185