広告・PPC

Amazonが米国のGoogleショッピングから撤退して1年、いまも復帰せず――CPCはほぼ下がらず競合が空白を埋めたとSearch Engine Journalが分析【2026年7月】

Amazonが米国のGoogleショッピングから撤退して1年、いまも復帰せず――CPCはほぼ下がらず競合が空白を埋めたとSearch Engine Journalが分析【2026年7月】

米国のGoogleショッピング広告オークションから、Amazonが2025年7月23日前後を境に姿を消し、それから1年近くが経過した現在も復帰していないと、Search Engine Journal(Brooke Osmundson氏)が2026年7月に報じています。記事は、Tinuitiの2026年第2四半期版デジタル広告ベンチマークレポートなど複数の調査データをもとに、離脱直後に多くの広告運用者が予想した「CPC急落」が実際には起きなかったこと、そしてTemuやShein、Walmartといった競合がその空白の一部を埋めた経緯を検証しています。米国市場に固有の動きではありますが、大口出稿者の撤退がオークション構造に与える影響を数値で追える事例として、広告運用者の参考になる内容です。

何が起きたか:Amazonが米国のGoogleショッピングから消えて1年、いまも掲載シェアは0%

Search Engine Journalの記事(タイトル:「Amazon Left US Google Shopping A Year Ago & Never Came Back(Amazonは1年前に米国のGoogleショッピングから離脱し、二度と戻らなかった)」)によると、Amazonは2025年7月23日前後を境に米国のGoogleショッピング広告オークションからほぼ完全に姿を消し、Tinuitiの2026年第2四半期版デジタル広告ベンチマークレポート(Q2 2026 Digital Ads Benchmark Report)の時点でも、中央値的な競合小売事業者に対するAmazonの掲載シェア(impression share)は0%のままだと報じられています(“Tinuiti’s Q2 2026 Digital Ads Benchmark Report places Amazon’s U.S. Google Shopping impression share against the median retailer at 0%”)。

記事の著者はBrooke Osmundson氏(Smith Micro SoftwareのDirector of Growth Marketing)です。

タイムラインで見る撤退の経緯:60%から2日間で0%へ

記事によれば、Amazonの米国Googleショッピングにおける掲載シェア(中央値的な競合小売事業者との対比)は、2025年7月21日時点で60%(“Amazon’s U.S. Google Shopping impression share against the median competing retailer sat at 60%”)でした。ところがその2日後には、シェアが0%まで落ち込んだ(“Two days later, its impression share reached zero”)としています。

さらに記事は、この撤退が唐突な一日で起きたわけではなく、その前段階として2025年5月21日から6月8日にかけて、Amazonがすでに米国のGoogleショッピングでの存在感を大きく縮小していた(“Amazon had already sharply reduced its U.S. Google Shopping presence between May 21 and June 8”)とも指摘しています。

当初の予想と実際の数字:「CPC急落」は起きたのか

Amazonのような大口出稿者の撤退直後、多くの業界関係者は「CPC(クリック単価)が急落するのではないか」と予想しました。記事はSmarter EcommerceのMike Ryan氏のコメントを引用し、「パンデミックの深刻な局面以来、Amazonによるこれほど劇的な広告停止は見たことがない。あのときはCPCが20%下落した(I have not seen an ad stop this dramatic from Amazon since the acute phase of the pandemic lockdowns, which coincided with a 20% drop in cost-per-click)」と述べたと紹介しています。

しかし実際のデータはやや異なる推移を見せました。記事によると、2025年8月1日付でOptmyzrが公表した分析は慎重な見方を示し、予算配分を変更する前にCPC・掲載シェア・出稿額・コンバージョンを注視するよう助言した(“It advised advertisers to monitor CPCs, impression share, spending, and conversions before adjusting their budgets”)としています。また2025年8月上旬、Vervaunt社のJosh Duggan氏は「われわれのクライアント基盤全体で見ると、Amazonはショッピングオークションの約30%に登場している。CPCは下がっていない…とはいえ注視すべき動きであることは間違いない(Amazon appears in ~30% of Shopping auctions across our client base. CPCs haven’t dropped…but it’s definitely one to review.)」とコメントしたと記事は伝えています。

四半期ベースの集計でも、大幅なCPC急落は確認されませんでした。記事によると、米国の2025年第3四半期(Q3 2025)データでは、標準のショッピングキャンペーンとPerformance Maxキャンペーンを合わせたGoogleショッピングへの出稿額が前年同期比14%増加し、クリック数は15%増加した一方、平均CPCの下落は1%にとどまった(“Google Shopping spending increased 14% year over year during Q3 2025 across standard Shopping and Performance Max campaigns. Clicks rose 15%, while average CPCs declined 1%”)としています。撤退前(2025年7月16日~22日の週)と撤退直後の週を比較したデータでも、CPCの下落は8.3%、クリック数は7.8%増加、コンバージョン価値は5.5%減少(“CPCs fell 8.3%. Clicks increased 7.8%. Conversion value declined 5.5%”)にとどまったと報じられています。続く2025年第4四半期(Q4 2025、ホリデーシーズン)も、Googleショッピングへの出稿額が前年同期比16%増加し、クリック数の伸びも同程度、CPCの下落は約1%にとどまった(“Google Shopping spend increased 16% YoY, with similar click growth. CPCs only fell about 1%”)とTinuitiのQ4 2025ベンチマークが伝えています。同じくこのベンチマークは、ホリデーシーズンを通じてAmazonが米国のGoogleショッピングオークションのほぼすべてから不在のままだった(“Amazon remained absent from nearly all U.S. Google Shopping auctions through the holiday season”)とも指摘しています。

空いた競合枠の行方:Temu・Shein・Walmartと国際市場との対比

Amazonが抜けた枠については、単一の事業者が代替したわけではなく、複数の競合が部分的に埋めたと記事は説明しています。見出しの一つは「Temu, Shein, & Walmart Filled Part Of The Gap(Temu・Shein・Walmartが空白の一部を埋めた)」となっており、Temuは2025年4月にGoogleショッピング広告から一度撤退した後、同年7月中旬に広告を再開し(“Temu resumed Google Shopping ads in mid-July after withdrawing in April”)、Sheinも1か月強の空白期間を経て復帰した(“Shein returned after sitting out for slightly more than one month”)としています。

欧州のデータでは、広告主が競合として遭遇するブランドにTemuを挙げる割合が60%から75%に上昇した(“the share of advertisers encountering Temu as a competitor increased from 60% to 75%”)と報じられています。Smarter Ecommerceはこの状況を「安いクリックと新規顧客を求めるゴールドラッシュ(gold rush for cheaper clicks and new customers)」、Amazon撤退による空白を「巨大な空洞(colossal void)」と表現したと記事は紹介しています。

一方でAmazonの復帰は、米国以外では比較的早く進みました。記事は、Smarter Ecommerceが追跡する国際市場のすべてで1か月以内にAmazonが復帰した(“Within one month, Amazon had returned across every international market Smarter Ecommerce tracked”)一方、米国だけが唯一の例外だった(“The United States remained the sole exception”)としています。具体的には、英国での掲載シェアは2025年7月21日の55%から翌22日には43%へ(“Amazon’s UK impression share declined from 55% on July 21 to 43% on July 22”)、ドイツでの掲載シェアも同様に37%から34%へ(“Amazon’s German impression share followed the same pattern, falling from 37% to 34%”)、それぞれ一時的に縮小したと報じられています。

なぜ米国だけ復帰しないのか:「インクリメンタリティ・テスト」という仮説

記事は、Amazonが米国のGoogleショッピングにだけ戻ってこない理由について、複数の分析者による仮説を紹介しています。Tinuitiのリサーチ部門ディレクターであるMark Ballard氏は、Amazonが自社のGoogleショッピングへの投資が増分的な売上(インクリメンタルな売上)を生んでいるかどうかを検証する目的でテストを行っていた可能性がある(“Amazon may have been testing whether its Google Shopping investment generated incremental sales”)と示唆したと記事は伝えています。Smarter Ecommerceも同様に、7月の撤退の背景として考えられる要因の一つに、大規模なインクリメンタリティ・テスト(incrementality test、施策が本当に「上乗せの」成果を生んでいるかを検証する手法)を挙げていた(“also included a large-scale incrementality test among its possible explanations for the July withdrawal”)としています。

なお、記事が参照するTinuitiの2025年第2四半期(Q2 2025)ベンチマークでは、この時点ですでに「他の要因も影響していた可能性がある(other considerations may have been at play)」との留保が示されていたとも紹介されており、単純な費用対効果の悪化だけでは説明しきれない動きだったことがうかがえます。

SEO/PPC実務への影響と確認すべきこと

この分析はあくまで米国市場におけるAmazonとGoogleショッピングという特定の組み合わせについてのものであり、日本国内の事業者に同じ現象がそのまま当てはまるわけではありません。ただし、大口出稿者の撤退がオークション全体のCPCや競合構成にどう波及するかを定量的に追った事例として、広告予算配分や競合監視の考え方には一定の示唆があります。

記事はVMLのBrandon Yann氏のコメントも紹介しており、ブランドは自社によるSearch to Amazon(検索広告経由でAmazon上の販売ページへ送客する)キャンペーンを、アトリビューション(成果貢献度の計測)込みで運用することを検討すべきだと助言した(“Brandon Yann of VML recommended that brands consider running their own Search-to-Amazon campaigns with attribution”)としています。加えてOptmyzrは、大口競合の撤退局面では慌てて予算配分を変えるのではなく、CPC・掲載シェア・出稿額・コンバージョンの推移を継続的に監視した上で判断すべきだと助言しています。

日本の運用者にとっての示唆としては、(1)自社の主要な競合が広告オークションから急に退出・参入した際に、CPCや掲載シェアの変化を四半期単位で定点観測できる体制を持っておくこと、(2)表示回数や掲載シェアの増減だけで一喜一憂せず、コンバージョン価値まで含めて評価すること、の2点が挙げられそうです。あくまで米国の事例からの示唆にとどまる点にはご留意ください。

所感

Scale Basics編集部としては、今回の記事が示す最大のポイントは「大口出稿者が消えても、オークション全体のCPCは必ずしも大きく下がらない」という実測データだと考えています。掲載シェア60%規模のAmazonが2日間で市場から消えたにもかかわらず、2025年第3・第4四半期の集計でCPCの下落が1%前後にとどまったという数字は、広告運用者が抱きがちな「大口競合が減れば入札は楽になる」という直感的な予想を裏切るものです。

また、Amazonが米国以外の市場には1か月以内に戻った一方で、米国市場だけ1年近く不在を続けているという非対称性は、単純なコスト最適化ではなく、Tinuitiのリサーチディレクターが示唆するような増分効果検証(インクリメンタリティ・テスト)が背景にある可能性を強く感じさせます。日本の事業者が直接まねできる打ち手ではありませんが、主要チャネルへの出稿を止める・減らす判断をする際に「増分効果をどう定義し、誰がその結果を受け入れる権限を持つか、そして結果を受け入れる準備をしておくか」を事前に決めておくという記事の結び(define incremental value before testing, secure the authority to act, and prepare to accept the answer)は、業種を問わず参考になる姿勢だと感じます。

まとめ

・Amazonは2025年7月21日に60%あった米国Googleショッピングでの掲載シェアを、その2日後には0%まで落とし、Tinuitiの2026年第2四半期ベンチマークでも掲載シェアは0%のままだとSearch Engine Journalが報じている

・撤退直後は「CPC急落」が予想されたが、2025年第3・第4四半期の実測では出稿額とクリック数が増加した一方、CPCの下落は1%前後にとどまった

・空いた競合枠はTemu・Shein・Walmartなど複数の事業者が部分的に埋め、欧州では広告主がTemuを競合として挙げる割合が60%から75%に上昇した

・Amazonは米国以外の国際市場には1か月以内に復帰した一方、米国市場だけは唯一の例外として不在が続いている

・専門家からは、Amazonが自社のGoogleショッピング投資の増分効果(インクリメンタリティ)を検証するテストを行っている可能性が指摘されている

よくある質問

Q1: Amazonはいつ、どのように米国のGoogleショッピングから撤退しましたか?

記事によると、Amazonの米国Googleショッピングにおける掲載シェアは2025年7月21日時点で60%でしたが、その2日後には0%まで落ち込みました。事前の告知や段階的な縮小ではなく、短期間で急激にオークションから姿を消したかたちです。なお、その前段階として同年5月21日から6月8日にかけて、すでに存在感を大きく縮小していたことも記事は指摘しています。

Q2: 撤退後、GoogleショッピングのCPCは記事が伝えるように実際に下がったのですか?

大幅な下落はしませんでした。記事によると、2025年第3四半期の米国データでは、Googleショッピングへの出稿額が前年同期比14%増加し、クリック数は15%増加した一方、平均CPCの下落は1%にとどまりました。続く第4四半期(ホリデーシーズン)も出稿額が16%増加する一方でCPCの下落は約1%にとどまったと、Tinuitiのベンチマークデータをもとに記事は伝えています。

Q3: Amazonが米国のGoogleショッピングに戻らない理由として、記事は何を挙げていますか?

記事は、Tinuitiのリサーチ部門ディレクターであるMark Ballard氏の見解として、Amazonが自社のGoogleショッピングへの投資が増分的な売上を生んでいるかどうかを検証するテスト(インクリメンタリティ・テスト)を行っていた可能性を挙げています。Smarter Ecommerceも同様の仮説を撤退理由の一つとして挙げていますが、記事はAmazon自身がその理由や結果を公表していない点にも言及しています。

出典:Amazon Left US Google Shopping A Year Ago & Never Came Back(Search Engine Journal、Brooke Osmundson氏)https://www.searchenginejournal.com/amazon-left-us-google-shopping-a-year-ago-never-came-back/583307/

scale-basics編集部
監修

scale-basics編集部

SEO・AI検索最適化(AIO/LLMO/GEO)・Web制作の最前線で活動する専門チーム。テクニカルSEOからコンテンツ戦略、データ分析まで幅広い実務経験をもとに、最新のナレッジと実践的なノウハウを発信しています。

編集部について詳しく見る →