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Claudeの透かしの正体は「単語選択に使う乱数の出どころ」――Anthropicが仕組みを公開、全文の書き換えで消えることも明言【2026年8月】

Claudeの透かしの正体は「単語選択に使う乱数の出どころ」――Anthropicが仕組みを公開、全文の書き換えで消えることも明言【2026年8月】

Anthropicが2026年8月14日、Claudeのテキスト透かし(ウォーターマーク)がどのように機能するかを説明する記事を公開しました。これを受けてSearch Engine Journal(Roger Montti氏)が8月15日、仕組みの要点と「どうすれば透かしを消せるのか」までを整理した記事を公開しています。結論から言えば、透かしはテキストに埋め込まれたUnicode文字や隠し文字ではありません。またAIらしい言い回しの検出でもありません。LLMが次の単語を選ぶときに使う乱数の出どころを、鍵(キー)と直前の数語から決まる値に置き換えることで、鍵を持つ者だけが確認できるパターンを残す方式です。Anthropicは軽い編集では完全には消えないが、全単語を置き換える完全な書き換えでは消えると明言しています。生成AIで下書きを作る運用が広がった現場にとって、検出の可否と限界を正確に把握しておく価値のある内容です。

何が公開されたか:透かしは「乱数の出どころ」を差し替える方式

Search Engine Journalの記事は、Anthropicの発表がMirrorMarkと呼ばれる類似の透かし手法について以前報じられていた内容のほぼすべてを裏付けたと整理し、透かしの実体は「LLMがテキストを生成する際の乱数性を鏡のように写したランダム性のパターンそのもの」だと説明しています。

まず、よく語られる誤解が明確に否定されています。記事は「一部のAIインフルエンサーが言うような、テキストに埋め込まれたUnicode文字は存在しない。したがってテキストファイルにコピー&ペーストして除去したり識別したりできるものではない」と述べています。さらに、em dash(全角ダッシュ)の使い方の話でもなく、「It’s not this, it’s that」的な言い回しのパターンの話でもなく、何かがAIによって書かれた可能性を測るものでもない、と整理しています。探しているのは特定の透かしパターンです。

Anthropic自身の説明は次のとおりです。「そのパターンは読者には検出できないが、それを符号化する鍵を持つ者には検出できる。透かしが使われている場合も選択は依然ランダムに行われるが、ランダム性の出どころが異なる。次の単語を選ぶのに任意の乱数生成器を使うのではなく、透かしは鍵と直前のいくつかの単語を使って、モデルがどの単語を選ぶべきかを決める。つまりClaudeが選ぶ単語は依然としてランダムだが、その単語の並びが、鍵を使っていたならClaudeが行ったはずの選択と整合するかどうかを確認できる(“That pattern is undetectable to the reader, but is detectable to anyone who has a key that encodes it…”)」。

Anthropicの公式記事は、この仕組みをモノポリーの比喩で説明しています。サイコロを振る代わりに円周率の数字の並びを使い、ランダムに選んだ桁から順に「出た目」として使うと、プレイヤーにとってもゲームの結果にとっても違いはないが、後から全部の手を見て円周率の値を知っていれば、円周率を使ったゲームだったと推定できる、というものです。

SynthID-Textの一種であり、SynthIDそのものではない

Anthropicは、この透かしがGoogle DeepMindが2024年にNature誌の論文で公表したSynthID-Textのアプローチの一種であると述べています。公式記事の記述は「Claudeのテキスト透かしは、2024年にGoogle DeepMindがNature誌の論文で公表したSynthID-Textアプローチの一種である。これは2022年のScott Aaronson氏の提案に遡る一群の手法に属し、いずれも上述の設計原理――透かしは単語を選ぶ際に使うランダム性の出どころだけを変える――を共有している」というものです。

Search Engine Journalはこの点に注意を促しています。SynthIDは2024年に開発されたもので、この2年で技術水準は大きく進んだ、という指摘です。記事によれば、最近のSynthIDの発展形であるMirrorMarkは、透かしを生成テキスト全体に分散させ、周囲の単語を各部分の配置を決める文脈として使うことで編集への耐性を高めています。SynthIDがゼロビットの透かし(透かしがあるか無いかを検出するだけ)である一方、MirrorMarkは複数ビットの情報を符号化でき、CABS(Context-Anchored Balanced Scheduler)という仕組みで各透かしの埋め込み位置を決めるとされています。

ただし記事は「MirrorMarkがAnthropicの使っているものだと言っているわけではない」と明確に留保を付けています。あくまで、2年前のSynthIDだけを前提に判断する前に、2026年版が何をできるかを見ておく価値があるという趣旨です。この区別は、社内で技術仕様を説明する際に混同しやすい部分です。

透かしはどう消えるか:軽い編集では残り、全文の書き換えで消える

記事が見出しに掲げているのは「どうすれば破れるのか」です。Anthropicの回答は明快です。「ある程度は可能だ。軽い編集ではおそらく透かしは完全には除去されない。全単語が置き換えられる完全な書き換えなら除去される。ただし後者の場合、そのテキストをもはやAI生成と呼べるかどうかは議論の余地がある(“Light editing probably won’t remove the watermark completely; a complete rewrite where every word is replaced will.”)」。

SynthIDは生成時に挿入された透かしの単語パターンを探すため、言い換えや十分な量の編集を行えば、透かしとして機能している単語が消えていく、という説明が続きます。

Anthropicの公式記事は、透かしが弱くなる条件も具体的に挙げています。第一に、小さなサンプルでは検出がうまく働きません。選択の機会が少なく、判断材料となる情報が少ないためで、文章が長くなるほどClaudeの関与に関する確信度は上がります。第二に、事実性の高い文章では透かしが疎になります。公式記事の例は「アイザック・ニュートンの最も有名な著作はPrincipia……」という文で、次の単語が「Mathematica」であることが唯一の正解である場合、透かしが作用する余地がありません。第三に校正です。人が書いた文章をClaudeに渡して文法と句読点だけを直させた場合、透かしはその数箇所の修正にしか宿れず、検出に足りない可能性があります。

コードについても同様の整理がされています。正確な出力が要求され、別の語を選べば事実として誤りになったりコードが壊れる場面では透かしは適用されません。公式記事は「2 + 2 =」の次のトークンを例に挙げています。ただしコード内のコメントのように、特定の語の選択が任意である領域では透かしが使われうるとされ、実際のコードへの影響は無視できる程度だと説明されています。

Anthropicが「できない」と明記していること

限界の記述も具体的です。Anthropicの公式記事によれば、鍵を使って答えられるのは「これはClaudeによって部分的に書かれた可能性がどれくらいあるか」という問いだけです。テキストが人間によって書かれたことを確認するものではなく、別のAIによって書かれたかどうかも判別できません(別のAIが透かしを使っていても鍵が異なり、方式そのものが違う可能性もあるため)。

透かしが証明する範囲についても、公式記事は「透かしはClaudeが何らかの時点でそのコンテンツに関与した可能性が高いことしか判定できない。『Claudeがこれを書いた』と『Claudeがこれを大幅に編集した』を区別できない」と述べています。加えて、透かしにはユーザーや組織、チャットを特定する情報は一切含まれず、鍵からも復元できないとされています。所有権や法的責任、利用規約上の権利も変わりません。

品質への影響については、Anthropicは社内テストで内容・創造性の水準・可読性への影響は見られなかったとし、SynthID-Textの論文でGoogle DeepMindが透かしを使ったモデルをGeminiのトラフィックの一部に提供し、高評価・低評価のレーティングを比較して統計的に有意な差が見られなかったこと、対照実験で人間の評価者が並べて比較しても品質の差を認めなかったことを挙げています。速度への影響はごくわずかで、追加のトークンを生成しないため提供・利用のコストも変わらないとされています。

背景:EU AI Actと8月2日、そして検出APIと画像のC2PA

透かし導入の理由としてAnthropicが挙げているのはEU AI Actへの準拠です。公式記事によれば、Anthropicは他の主要なAIモデル提供事業者とともに、合計約190の署名者が名を連ねた「AI生成コンテンツの透明性に関するEU行動規範(EU Code of Practice on Transparency of AI-Generated Content)」に2026年7月に署名しました。これはAIシステム提供者にAI生成テキストの「マーキング」手法の使用を求めるものです。

公式記事は「8月2日時点で、EUは市場にサービスを提供するAI提供者にAI生成コンテンツのマーキングを求めている」と述べ、地域単位で適用範囲を限定する持続的な方法がまだないため、開始時点では全世界に適用すると説明しています。2026年8月2日より前に公開されたAnthropicのモデルについては、EUの法律に移行期間が設けられており、今後数か月かけて透かしを追加していく方針が示されています。

検出手段については「近くウォーターマーク検出APIを提供する予定で、実装の詳細を詰めている段階」とされています。画像などのテキスト以外のファイルは別扱いで、Claudeが .png、.jpg、.svg といった対応形式のファイルを生成した場合、そのファイルのメタデータに、Claudeによって作成または処理されたことを示す暗号署名付きの短い記述(コンテンツ・クレデンシャル)を添付します。これはカメラメーカーや写真編集ソフトが来歴を記録するのに使っている業界標準のC2PAで、C2PA対応ツールで読み取れます。Anthropicはファイルを投入して確認できる自社ツールも提供予定だとしています。公式記事はこのメタデータのラベルが透かしとはまったく別物であり、ファイル自体は何も変わらない(埋め込みや隠蔽ではない)と明記しています。

翻訳については、Claudeが生成した翻訳には透かしが載るとされています。この場合はすべての単語をClaudeが選んでいるためです。また、PangramのようなAI検出ソフトウェアとの違いも説明されています。検出ソフトは鍵を持たないため異なる手法を使い、AIの言い回しに現れる微妙な(そしてそれほど微妙でもない)癖を見ます。公式記事は例として、AIモデルが「this isn’t [X], it’s [Y]」という構文を好むように見えること、そして「quietly」という語を予想以上に多用することを挙げています。パターンの検知と透かしの確認は根本的に別物だという整理です。

今日からできる確認手順

コンテンツ制作の現場で確認しておくべき点を挙げます。第一に、社内やパートナーに対して「AI検出ツールの結果」と「透かしの検出結果」を区別して扱う運用にしておくことです。前者は言い回しの癖に基づく推定であり、後者は鍵を持つ者が行う照合です。両者を同じ「AI判定」として扱うと、根拠の強さを誤って伝えることになります。

第二に、EU向けにサービスを提供している場合は、AI生成コンテンツのマーキングに関する要件が8月2日時点で発生していることを前提に、自社の開示方針を法務と確認しておくことです。第三に、外注記事の検品ルールを見直す際は、透かしの性質を踏まえる必要があります。Claudeで下書きを作り人が全面的に書き換えた文章は透かしが消えている可能性が高く、逆に人が書いた文章をClaudeに校正させただけの場合も透かしが載りにくい、という非対称性があります。透かしの有無をそのまま「AI利用の有無」と読み替えることはできません。

第四に、Claudeで画像やSVGを生成している場合は、C2PAのコンテンツ・クレデンシャルがメタデータに付くことを前提に、公開前の書き出し工程でメタデータが保持されるのか除去されるのかを確認しておくとよいでしょう。

所感

Scale Basics編集部としては、今回の公開の実務的な意味は「透かしはAI利用の有無を判定する道具ではない」と確認できたことにあると考えています。Anthropic自身が、鍵で答えられるのは「Claudeが部分的に書いた可能性の高さ」だけであり、「Claudeが書いた」と「Claudeが大幅に編集した」を区別できないと明記しています。加えて、校正用途や事実性の高い短文では透かしが載りにくい。つまり検出できなかったことはAIを使っていない証明にはならず、検出できたことも執筆比率の証明にはなりません。この非対称性を理解しないまま社内の検品基準に「透かし検出」を組み込むと、公平性を欠く運用になります。

SEO・コンテンツ運用の観点では、透かしそのものが検索順位に影響するという情報はどこにもありません。Anthropicの説明では読者にも検出できず、テキストには何も追加されず、モデルが不自然な語を選ぶこともない、品質にも影響しないとされています。したがって「透かしが入るからAI下書きは順位に不利」といった推論は、現時点で根拠がありません。注意すべきは技術ではなく開示のほうで、EU市場向けの表示義務や取引先との契約上の表明保証が実務のリスクになります。

もう1点、SEJが指摘しているSynthIDとMirrorMarkの世代差は、判断の前提として押さえておく価値があります。SEJ自身がAnthropicの採用方式を断定していない以上、「Claudeの透かしは編集耐性が高い/低い」と一般化するのは避けるべきです。実務としては、検出APIが実際に提供されてから、自社の文章で挙動を確かめるのが確実です。それまでは、透かしの存在を前提とした検品より、原稿の一次情報の確認や事実照合といった、成果物の品質そのものを見る運用を優先するのが妥当だと考えます。

まとめ

・Claudeのテキスト透かしはUnicode文字や隠し文字、メタデータではなく、次の単語を選ぶ乱数の出どころを鍵と直前の数語から決まる値に置き換える方式で、鍵を持つ者だけが照合できる

・AnthropicはGoogle DeepMindが2024年にNature誌で公表したSynthID-Textの一種だとしており、2022年のScott Aaronson氏の提案に遡る系譜に属する。SEJはMirrorMarkのような2026年版との世代差に注意を促しつつ、Anthropicの採用方式を断定はしていない

・軽い編集では完全には消えず、全単語を置き換える完全な書き換えでは消える。小さなサンプル、事実性の高い文章、校正のみの用途では透かしが弱くなる

・透かしで判定できるのは「Claudeが部分的に書いた可能性の高さ」だけで、人間が書いたことの確認や他のAIの判別、執筆と編集の区別はできず、ユーザーや組織を特定する情報も含まれない

・導入理由はEU AI Actへの準拠で、約190署名者の行動規範に2026年7月に署名。8月2日時点でEUはマーキングを要求しており、Anthropicは開始時点では全世界に適用。検出APIは提供予定、画像やSVGはC2PAのメタデータで扱う

よくある質問

Q1: Claudeの透かしは、テキストをコピー&ペーストすれば消えますか?

消えません。Search Engine Journalの記事は、透かしがテキストに埋め込まれたUnicode文字ではないため、テキストファイルにコピー&ペーストして除去したり識別したりできるものではないと明記しています。透かしは単語選択の並びそのものに宿るパターンであり、Anthropicによれば軽い編集では完全には除去されず、全単語を置き換える完全な書き換えで初めて除去されます。

Q2: 透かしが検出されなければ、AIを使っていない証明になりますか?

なりません。Anthropicの公式説明では、鍵で答えられるのは「これはClaudeによって部分的に書かれた可能性がどれくらいあるか」という問いだけで、テキストが人間によって書かれたことの確認や、別のAIによって書かれたかどうかの判別はできません。加えて、小さなサンプル、事実性の高い文章、文法と句読点だけの校正では透かしが検出に足りない可能性があるとされています。

Q3: Claudeが生成した画像には透かしが入るのですか?

テキストの透かしとは別の方式です。Anthropicの公式説明によると、Claudeが .png、.jpg、.svg などの対応形式のファイルを生成した場合、Claudeによって作成または処理されたことを示す暗号署名付きの短い記述をファイルのメタデータに添付します。これは業界標準のC2PAによるコンテンツ・クレデンシャルで、ファイル自体は変更されず、埋め込みや隠蔽でもないと明記されています。

出典:Anthropic Reveals What The Watermark Is And How It Can Be Defeated(Search Engine Journal、Roger Montti氏、2026年8月15日)https://www.searchenginejournal.com/anthropic-reveals-what-the-watermark-is-and-how-it-can-be-defeated/585930/

参考:How Claude’s text watermark works(Anthropic、2026年8月14日)https://www.anthropic.com/news/claude-text-watermark

SEO基礎おじ
執筆・監修

SEO基礎おじ

フリーランスのWeb制作者/SEO実務者(実務歴3年以上)。HTML・CSS・JavaScript・WordPressを自分で実装する立場から、テクニカルSEO・構造化データ・GA4/Search Consoleの計測設計までを一人で担当しています。当サイトを実験台にして、施策の効果は自分で取った実測データで検証してから記事にしています。「SEO基礎おじ」は筆名です。

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