何が起きたか:Googleが欧州のDMA対応を「品質の最大の低下」と表現
Search Engine RoundtableのBarry Schwartz氏は2026年9月8日、Googleが欧州でデジタル市場法(Digital Markets Act、DMA)への対応となる変更を展開し、それをGoogle検索の歴史における「品質の最大の低下(largest reduction in quality)」と呼んだと伝えました。記事は、Googleの担当者がReuters(ロイター)に語った内容として、次の一文を引用しています。
The changes mark the largest reduction in quality of service at the world's most popular internet search engine in its 29-year search history
日本語にすると『今回の変更は、世界で最も人気のあるインターネット検索エンジンにおいて、その29年の検索の歴史の中で最大のサービス品質の低下を意味する』という内容です。検索の品質について、提供している当事者であるGoogle側が「最大の低下」という強い言葉を使ったことが、この記事の中心です。
ここで押さえておきたいのは、これがGoogleの公式ブログなどでの発表として報じられたものではない点です。出典の記事は、Googleの担当者がReutersに語った内容として引用しており、編集部としても伝聞として扱うのが妥当だと考えます。なおDMA(デジタル市場法)そのものの条文や適用範囲、対象となる国や言語については、出典では説明されていません。
対象は垂直検索サービス(VSS)に関する変更
Schwartz氏は、今回の件は垂直検索サービス(vertical search services、VSS)に固有のもので、先週報じられた「サイトの評判の悪用(site reputation abuse)」ポリシーの欧州向け変更とは別だと書いています。同じ時期に複数の変更が並んで報じられているため、対象を混ぜて理解すると読み違えることになります。
VSSに関して、記事はReutersの記述を次のように引用しています。
Google said it sees that in reality the changes favor price comparison sites, also known as vertical search services (VSS), linked to sectors including hotels, airlines and restaurants, such as Expedia or Booking.com. They get more prominence in search results over companies in those sectors that are listed with just a link to their websites, telephone numbers and address.
日本語にすると『Googleは、実際にはこの変更が、ホテル・航空会社・レストランを含む分野に結びついた価格比較サイト、すなわち垂直検索サービス(VSS)を有利にすると見ている、と述べた。ExpediaやBooking.comのような価格比較サイトは、自社サイトへのリンクと電話番号、住所だけが掲載されているそれらの分野の企業よりも、検索結果でより目立つようになる』という内容です。
ここで示されている構図は単純です。ホテルや航空会社、レストランのように自社サイトを持つ事業者と、それらを横断して比較を提供するサイトとの間で、検索結果上の見え方に差が生じるという指摘です。VSSとは、特定の分野に絞って比較や検索を提供するサイトを指す呼び方で、出典はその例としてExpediaとBooking.comを挙げています。一方で、この差がいつから、どの国や言語で適用されるのかは、出典では明示されていません。
刷新後の検索結果の見え方
Reutersの記述として、記事は新しい検索結果のレイアウトを次のように伝えています。
The revamped search results will highlight one specialized search engine at the top of the page, followed by two others with fewer details while a carousel of hotels, airlines and restaurants for example will sit below them with key features such as real-time prices stripped out. The rankings will be determined by Google's algorithm.
日本語にすると『刷新された検索結果では、1つの専門検索エンジンがページ上部で強調され、その下に詳細の少ない2つが続く。一方で、たとえばホテル・航空会社・レストランのカルーセルはそれらの下に置かれ、リアルタイム価格のような重要な要素は取り除かれる。順位はGoogleのアルゴリズムによって決まる』という内容です。
実務の観点で目を引くのは2点です。1つは、上部に強調されるのが専門検索エンジン1社で、続く2社は詳細が少ない形になるという序列がある点です。もう1つは、その下に置かれるカルーセルから、リアルタイム価格のような重要な要素が外されるとされている点です。価格は宿泊や移動の比較で判断材料になりやすい要素なので、それが外れた状態で表示されるなら、同じ位置に出ていてもクリックの入り方は変わり得ます。ただし順位の決まり方については、Googleのアルゴリズムによるという説明にとどまり、それ以上の基準は出典では示されていません。
Googleが2024年のテストで示した数値
Schwartz氏によれば、Googleはこの形を2024年にテストして結果を提示しましたが、欧州委員会(European Commission)は取り合わなかったとされています。記事の表現はbut the European Commission did not careで、日本語にすると『しかし欧州委員会は気にしなかった』という内容です。当時Googleが書いた内容として、記事は次を引用しています。
People were measurably less satisfied with their search results and it took them longer to find hotels, including by having to do more searches. More people also gave up and did not find what they were looking for.
日本語にすると『人々は検索結果への満足度が測定できるほど低下し、ホテルを見つけるまでにより長い時間がかかった。より多くの検索をしなければならなくなったことも含まれる。あきらめて、探していたものを見つけられなかった人も増えた』という内容です。満足度の低下と、目的にたどり着くまでの手数の増加が、ここでの品質低下の中身として示されています。
流入については3点が示されています。Overall, traffic to hotels and intermediary sites went down.は『全体として、ホテルと仲介サイトへの流入は減少した』という内容、Hotels lost the most traffic (more than 10%), affecting hundreds of thousands of European hotels.は『ホテルが最も流入を失い(10%超)、数十万の欧州のホテルに影響した』という内容、Traffic to intermediary sites largely stayed flat.は『仲介サイトへの流入はおおむね横ばいだった』という内容です。
この10%超という数字は、Googleがテスト時に示したホテルへの流入の減少幅であり、今回展開された変更後の実測値として出典に示されているわけではありません。仲介サイトへの流入がおおむね横ばいだったという点と合わせて読むと、Googleが提示したのは「事業者側のサイトが不利になる一方、仲介側は変わらない」という主張の裏づけとしての数字だと整理できます。この数値をもとに欧州委員会がどう判断したのかについては、取り合わなかったという著者の記述以上の説明は出典にはありません。
出典の著者が示した疑問:品質の測り方
出典の記事は、Googleの主張をそのまま伝えるだけでなく、著者自身の疑問も併記しています。Schwartz氏は、Googleがここで品質を、ホテルのサイトへの流入量と、ユーザーがより多くの検索をしなければならなかったことで測っているのは面白いと感じると書いています。というのも、AI OverviewsやAI Modeは、サイトへの直接的な流入を減らし、かつユーザーの検索回数を増やす方向に働くからです。
これは著者の見解であり、Googleがこの対比について何かを述べたという記述は出典にはありません。ただし、品質という言葉が測り方によって意味を変えることを示す指摘として、SEO担当者が押さえておく価値はあります。流入量と検索回数という指標を品質の代理として使うなら、その基準は自社プロダクトにも同じように当たるはずだ、という筋の話です。記事はまた、29年の歴史で「品質の最大の低下」という今回の言い方自体がGoogleからの大きな表明だと位置づけ、この件の議論はXで行われているとしています。
現場への意味(編集部の見解)
ここからは編集部の整理です。出典から事実として確認できるのは、Googleが欧州でDMA対応の変更を展開したこと、Googleの担当者がそれを29年の検索の歴史で最大の品質低下だとReutersに述べたと報じられたこと、対象は垂直検索サービスに関する表示であること、2024年のテストではホテルへの流入が最も減り10%超だったとGoogleが示していたこと、の4点です。適用の範囲や時期、そして今回の変更後に実際に起きた変動の実測値は、出典では示されていません。
そのうえで実務に落とすなら、欧州向けの検索流入がある事業者は、順位そのものではなく検索結果上での見え方が変わる可能性を前提に置くのが安全です。上部に専門検索エンジンが置かれ、事業者側が並ぶカルーセルはその下、しかもリアルタイム価格のような要素が外されるとされているため、掲載順位が横ばいでもクリックの入り方は変わり得ます。したがって確認すべきは、順位が落ちたかどうかではなく、順位が変わらないのにクリックだけが落ちていないかという形の見方です。欧州の国や言語ごとにクリック数・表示回数・平均掲載順位の推移を分けて並べれば、この切り分けは自社データだけでも進められます。
もう一点、比較サイト側が目立つ構図が続くのであれば、自社サイトへの直接の流入だけでなく、比較サイト上に載っている自社の掲載内容そのものが接点として重みを増します。ただしこれは出典が示した構図からの編集部の推測であり、Googleが説明した内容ではありません。影響の大きさを数字で断定するのは避け、まずは欧州向けの数字を他の地域と分けて見る運用から始めるのが妥当だと考えます。
まとめ
・Search Engine RoundtableのBarry Schwartz氏が2026年9月8日、Googleが欧州でDMA対応の変更を展開し、それをGoogle検索の歴史における「品質の最大の低下」と呼んだと報じました
・Googleの担当者はReutersに対し、世界で最も人気のあるインターネット検索エンジンの29年の検索の歴史で最大のサービス品質の低下を意味すると述べたとされています
・対象は垂直検索サービス(VSS)に関する変更で、先週の「サイトの評判の悪用」ポリシーの欧州向け変更とは別だと著者は書いています
・Reutersの記述によれば、刷新後は専門検索エンジン1社がページ上部で強調され、詳細の少ない2社が続き、ホテル・航空会社・レストランのカルーセルはその下でリアルタイム価格などを外した形になり、順位はGoogleのアルゴリズムで決まります
・Googleが2024年のテストで示した結果では、ホテルが最も流入を失い(10%超)、数十万の欧州のホテルに影響した一方、仲介サイトへの流入はおおむね横ばいでした
・著者は、Googleが品質をサイトへの流入と検索回数で測っている点に疑問を示し、AI OverviewsやAI Modeも同じ方向に働くと書いています
よくある質問
Q1: 今回GoogleがEUのDMA対応について述べたのは何ですか?
Search Engine Roundtableによれば、Googleの担当者はReutersに対し、今回の変更が世界で最も人気のあるインターネット検索エンジンの29年の検索の歴史で最大のサービス品質の低下を意味すると述べたとされています。Googleの公式ブログでの発表としてではなく、担当者の発言としての報道です。
Q2: 検索結果の見え方はどう変わると報じられていますか?
Reutersの記述として、専門検索エンジン1社がページ上部で強調され、詳細の少ない2社が続き、その下にホテル・航空会社・レストランなどのカルーセルが置かれ、リアルタイム価格のような重要な要素は取り除かれるとされています。順位はGoogleのアルゴリズムによって決まると説明されています。
Q3: 流入への影響を示す数値はありますか?
Googleが2024年に行ったテストの結果として、ホテルが最も流入を失い(10%超)、数十万の欧州のホテルに影響した一方、仲介サイトへの流入はおおむね横ばいだったと示されています。これはテスト時の数値で、今回展開された変更の実測値は出典では示されていません。
出典:Google: EU DMA Changes Resulted In Largest Reduction In Search Quality(Search Engine Roundtable、Barry Schwartz氏、2026年9月8日)https://www.seroundtable.com/google-eu-dma-largest-reduction-quality-42042.html