業界ニュース・Googleアップデート

GoogleがSerpApi訴訟の訴状を修正――ライセンス契約の条項を追加し、DMCA主張の立て直しを図る【2026年8月】

GoogleがSerpApi訴訟の訴状を修正――ライセンス契約の条項を追加し、DMCA主張の立て直しを図る【2026年8月】

Googleが2026年8月10日、SERPスクレイピングツール「SerpApi」に対するDMCA(デジタルミレニアム著作権法)訴訟の訴状を修正し、「修正訴状(Amended Complaint)」として提出したと、Search Engine Journal(Matt G. Southern氏、2026年8月12日付)およびSearch Engine Roundtable(Barry Schwartz氏、同日付)が報じています。7月20日の却下命令で連邦地裁のYvonne Gonzalez Rogers首席判事が不足を指摘したのは、Googleが結んでいるコンテンツライセンス契約の中身でした。今回の修正では、まさにその契約条項が追加され、Redditをはじめとするライセンス提供元からの要請が具体的に書き込まれています。

何が起きたか:Googleが8月10日付で訴状を修正、21日間の期限当日に提出

Search Engine Journalによれば、Googleは2026年8月10日、SerpApiに対する訴状を修正しました。連邦判事がGoogleのDMCA上の2つの請求(both of its DMCA claims)をいずれも退けてから3週間後、与えられた21日間(21 days)の修正期間の期限当日の提出だと報じられています。

Search Engine Roundtableも同じ日付を伝え、Googleが自社の検索結果に含まれる「ライセンスされたコンテンツを守る」アプローチを取っていると指摘しています。同記事はMediaPostの記述として「Googleの修正訴状には、ライセンスコンテンツに関するいくつかの新しい主張が含まれている(“Google’s amended complaint includes some new allegations regarding licensed content.”)」という一文を引用しています。

追加されたのは、Gonzalez Rogers首席判事が当初の訴状に欠けていると判断した材料そのもの、すなわちGoogleのコンテンツライセンス契約の条項です。指摘された穴を契約書の開示で埋めにいった、という位置づけになります。

修正で追加された中身:ライセンス契約の条項と、Redditからの明示的な要請

Search Engine Journalによると、修正訴状はライセンス契約がGoogle側に何を義務づけているかを具体的に記述しています。あるライセンス提供元との契約は、2017年までさかのぼるバージョンで、ライセンスコンテンツを外部からのアクセスから保護する「商業的に合理的な努力(commercially reasonable efforts)」をGoogleに求めているとされます。別の提供元は、ライセンスされた素材が第三者によってダウンロード可能な状態に置かれないことを要求しているとされています。

さらにGoogleは、Redditとの契約が、第三者によるライセンスコンテンツの抜き出しと独自の商業化を許さないよう定めていると主張しています。Search Engine Roundtableは、GoogleがRedditから「第三者がライセンスコンテンツを抽出し、独自に商業化することを可能にしないよう(“not to enable third parties to extract and independently commercialize the licensed content”)」指示されていたと主張していると伝えています。Googleは「ライセンスパートナー(licensing partners)」が「ライセンスコンテンツへの不正アクセスをGoogleが防ぐよう明示的に要請した(“expressly requested that Google prevent unauthorized access to licensed content”)」とも記載したとされています。

Search Engine Journalは、Redditがスクレイパーによる転売を疑った後に技術的措置を求めた、とGoogleが主張している点にも触れています。Googleはユーザーがアップロードした写真やレビューを保護すると明記した自社のプライバシーポリシー(Privacy Policy)も根拠に挙げているとのことです。

Googleが添えた留保:「必要な範囲においては、許可を得ていた」という条件付きの主張

注目すべきは、Googleが裁判所の求めたものを提出しつつ留保を付けている点です。Search Engine Journalは、修正訴状の書きぶりについて、SearchGuardのような措置を運用するために著作権者の許可が必要である限りにおいて(to the extent it needs permission from copyright holders)、Googleはその許可を有していたし現在も有している、という形式だと報じています。

同記事は、この留保によってGoogleが「アクセス制御を導入する企業はそもそも許可を必要としない」という従来の立場を維持していると説明しています。裁判所は7月にこの主張を退けていますが、否定された法解釈を残したまま、許可が必要と判断された場合にも成立するよう主張を二段構えにした形です。

前提の確認:7月20日の却下命令はなぜ2つに分かれていたのか

Search Engine Journalによれば、Gonzalez Rogers首席判事は7月20日の却下を2つに分けていました。1つ目は、SearchGuardが著作権コンテンツを一切含まない検索結果を保護していたケースに基づく請求で、DMCAが著作権のない著作物を対象としていないことを理由に、修正を認めない形で却下されました。Googleはこの部分を再度主張し直すことができません。

2つ目は、著作権で保護された素材を含む検索結果に基づく請求で、こちらは修正の余地を残した却下(dismissed with leave to amend)でした。DMCA第1201条(a)(3)(B)は、要件の一部として、アクセス制御が「著作権者の承認のもとで(with the authority of the copyright owner)」機能することを求めています。Googleはナレッジパネル(Knowledge Panels)向けに画像をライセンスしていると主張していたものの、ライセンスの条項が提出されていなかったため、裁判所はGoogleがSearchGuardを導入する権限を有していたと結論づけられませんでした。この空白を埋めるのが今回の修正訴状です。

同じ命令の中で、裁判所はSerpApi側の複数の主張も退けています。DMCAは違反によって損害を受けたあらゆる者に及び著作権者に限られないとして、Googleが提訴主体として不適格だという主張は認められませんでした。SearchGuardが著作権素材だけを狭く対象とする必要はないとも判断され、Googleの回避に関する主張(circumvention allegations)も却下の独立した理由とは認められていません。

まだ決着していない論点:回避回数の範囲と、専門家が指摘するリスク

Search Engine Journalは、修正訴状にも未解決の論点が残ると指摘しています。修正訴状はSearchGuardの説明を絞り込み、この措置を検索結果に表示されるためにライセンスされた著作物と結びつける形に改めました。しかし違反回数は同じように絞り込まれておらず、Googleは依然として数十億回(billions)の回避行為があったと主張し、その対象をライセンスコンテンツを含む結果ページに限定するとは明示していないとされています。7月の命令は、著作権コンテンツを含まない検索結果に基づく請求を認めていません。

また、Public KnowledgeでDMCAを専門とするMeredith Rose氏は、7月の命令後にArs Technicaに対し、この立場はGoogleにとってリスクを伴うと述べたと報じられています。その主張をすることが、自社のナレッジパネルにどれだけの著作権素材が含まれているかを公に認めることを意味するからです。同氏はGoogleについて「少し自分で自分を追い込んでしまった(“talked themselves into a little bit of a corner”)」と表現しています。

SEO実務への影響と今後の見通し:SERP取得系ツールが最も近い位置にいる

Search Engine Journalは、Googleがこれらの請求を復活させられるかどうかは、ライセンス契約が「著作権者がSearchGuardによる保護に同意していた」ことを示すかどうかにかかりうると整理しています。この承認(authorization)の問題は回避行為の是非とは別に積み上がる第二の論点であり、スクレイピング訴訟にGoogleのコンテンツ提携契約そのものを引き込みます。同記事は、Google検索から情報を取得するランクトラッカー、SERPモニター、AI可視化ツール(AI visibility tools)が、この裁判の問いに最も近い位置にいると指摘しています。

今後の手続きについては、SerpApi側の代理人が火曜日の時点で、同社は自社の立場に引き続き自信を持っており応答する予定だと述べたと報じられています。これが次の提出物になります。ただし7月の命令は、SerpApiが最初の却下申立てで主張できたはずの論点を2度目の却下申立て(second motion to dismiss)で持ち出すことを禁じています。ディスカバリー(discovery、証拠開示手続き)は、裁判所がこうした申立てについて判断を下すまで停止されたままです。

並行して、RedditがSerpApiに対して起こしているDMCA訴訟も進行しています。Search Engine Journalは、MediaPostの報道として、7月31日にニューヨーク南部地区連邦地裁(Southern District of New York)のPaul Engelmayer判事がRedditの主要なDMCA請求の続行を認めたと伝えています。なおSearch Engine Roundtableは、公式の訴状はまもなくCourt Listener上で確認できるようになるはずだとしています。

所感

運営者としては、争点が「公開ページへのアクセスをブロックすることがDMCA上の回避にあたるか」という一般論から、「Googleのライセンス契約にアクセス制御を導入する権限が書かれているか」という契約書の中身の問題へ移った点を重く見ています。7月の却下で「著作物を含まない検索結果」という広い部分は修正不可の形で確定しており、残った戦線はライセンスコンテンツという狭い領域に絞られました。

実務としては、自社が使うランクトラッキングツールやSERP取得系API、AI可視化ツールについて、取得対象が順位や表示要素といったメタ情報なのか、ナレッジパネルの画像やレビュー本文といったライセンス由来のコンテンツそのものなのかを切り分けておくことをおすすめします。今回の修正訴状が焦点を当てているのは後者です。ただし確定した司法判断が出たわけではなく、報道は訴状提出という手続き段階の事実にとどまります。計測体制を今すぐ組み替える必要はありませんが、代替手段の有無は把握しておく価値があるでしょう。

まとめ

・Googleは2026年8月10日、SerpApiに対するDMCA訴訟の訴状を「修正訴状(Amended Complaint)」として提出。7月20日に2つのDMCA請求が却下されてから3週間後、21日間の期限当日の提出と報じられている

・追加されたのはコンテンツライセンス契約の条項で、2017年までさかのぼるバージョンで「商業的に合理的な努力」による保護を求める契約、第三者のダウンロードを禁じる契約、Redditによる「第三者に抽出・独自の商業化をさせない」という指示などが挙がっている

・Googleは「SearchGuardのような措置に著作権者の許可が必要である限りにおいて、その許可を有していた」という留保付きの書き方で、許可は不要だという従来の立場を維持したままだとされる

・7月20日の命令は、著作権コンテンツを含まない結果に基づく請求を修正不可の形で却下し、著作権素材を含む結果に基づく請求のみ修正を認めた。裁判所はSerpApi側の複数の主張も退けている

・修正訴状でも回避回数は絞り込まれず数十億回の主張が残るなど未決の論点があり、SerpApi側は応答予定でディスカバリーは停止中。RedditのDMCA訴訟も7月31日に主要請求の続行が認められている

よくある質問

Q1: 今回の修正訴状では、具体的に何が新しく追加されたのですか?

Googleのコンテンツライセンス契約の条項が追加されたと報じられています。2017年までさかのぼるバージョンでライセンスコンテンツを外部アクセスから守る「商業的に合理的な努力」を求める契約、ライセンス素材が第三者にダウンロードされないことを求める別の提供元の契約、そしてRedditが第三者による抽出と独自の商業化を許さないよう指示していたというGoogleの主張などです。ユーザーがアップロードした写真やレビューを保護すると記載した自社のプライバシーポリシーも根拠に挙げられています。

Q2: 7月の却下命令で修正が認められなかった部分はどうなりますか?

Search Engine Journalによれば、SearchGuardが著作権コンテンツを一切含まない検索結果を保護していたケースに基づく請求は、修正を認めない形で却下されており、Googleは再度主張し直すことができないとされています。DMCAが著作権のない著作物を対象としていないことが理由です。今回の修正訴状が対象にしているのは、著作権で保護された素材を含む検索結果に基づく請求のほうです。

Q3: SERP取得系ツールを使う側は、今回の修正をどう受け止めればよいですか?

Search Engine Journalは、Google検索から情報を取得するランクトラッカー、SERPモニター、AI可視化ツールが、この裁判が試している問いに最も近い位置にいると指摘しています。ただし報じられているのは訴状提出という手続き段階の事実であり、司法判断が確定したわけではありません。SerpApi側は応答を予定しており、ディスカバリーは裁判所の判断が出るまで停止中です。RedditがSerpApiに対して起こした別のDMCA訴訟も、7月31日に主要な請求の続行が認められています。

出典:Google Amends SerpApi Suit With Content Licensing Terms(Search Engine Journal、Matt G. Southern氏、2026年8月12日)https://www.searchenginejournal.com/google-amends-serpapi-suit-with-content-licensing-terms/585505/

出典:Google Amends Lawsuit Against SerpApi Over Licensed Content(Search Engine Roundtable、Barry Schwartz氏、2026年8月12日)https://www.seroundtable.com/google-amends-serpapi-lawsuit-41860.html

SEO基礎おじ
執筆・監修

SEO基礎おじ

フリーランスのWeb制作者/SEO実務者(実務歴3年以上)。HTML・CSS・JavaScript・WordPressを自分で実装する立場から、テクニカルSEO・構造化データ・GA4/Search Consoleの計測設計までを一人で担当しています。当サイトを実験台にして、施策の効果は自分で取った実測データで検証してから記事にしています。「SEO基礎おじ」は筆名です。

監修者プロフィールを見る →