何が語られたのか
Search Engine LandのCorey Morris氏(Voltage社長兼CEO)による記事は、AI検索やアンサーエンジンの台頭を背景とした不確実性を理由に、SEOへの投資を一時停止する「様子見」戦略には、見えにくいながらも大きなコストが伴うと論じています。オーガニックの信頼性や権威性は時間をかけて積み重なっていくものであり、予算を凍結することは「モメンタム(勢い)の負債」を生み、それを回復するコストは時間を追うごとに高くなっていくと説明されています。記事は、市場が安定するのを待つことが、不確実な状況下でも施策を継続することよりもむしろリスクが高い可能性があると指摘しています。
自動販売機のたとえ
Morris氏は、オーガニックの信頼性について、同僚が語ったたとえを紹介しています。「同僚は最近、それ(オーガニックの信頼性)を自動販売機にたとえていた。1ドルを入れれば、決まった数のドルが返ってくるとは期待できない、というものだ(“A colleague recently compared them to a vending machine: You can’t put a dollar in and expect a predictable number of dollars to come back out.”)」。このたとえは、SEOへの投資が短期的・線形的な見返りを保証するものではなく、時間をかけて積み重ねる性質のものであることを示すために用いられています。
Lily Ray氏が指摘する「リスティクル戦略」の逆効果
記事では、Lily Ray氏が共有したデータとして、人気の「リスティクル(list article、まとめ記事)」戦略が逆効果になっている可能性があるという指摘が紹介されています。具体的には、一部の執筆者・専門家が、自らが属する業界のリストから外れてしまうケースがあるとされています。この事例は、様子見や既存の定番施策への固執が、必ずしも安全な選択ではないことを示す一例として言及されています。
様子見をやめて何をすべきか:5つの推奨事項
記事は、様子見に代わる実務的なアプローチとして、次の5点を推奨しています。
- 真のコストを測定する:投資を継続する場合と一時停止する場合の差(市場シェアの損失、回復にかかる時間、パイプラインへの影響)を把握する
- 基盤を維持する:オリジナルコンテンツ、E-E-A-Tの各種シグナル、データといった土台を、新興の戦術に飛びつくのではなく維持する
- トリガーイベントを活用する:全面停止ではなく、社内優先事項の変化・競合の動き・アルゴリズム更新といった重要な変化があった際に再評価する運用にする
- コントロールされた実験を行う:競合が効果的だと報告している手法をテスト・モニタリングするためにリソースを割き、革新と実績のあるアプローチのバランスを取る
- リスクを定量化する:モメンタム損失がもたらす具体的なリスクを言語化し、投資継続の事業上の根拠を社内のステークホルダーに示す
なぜ重要か / SEO・実務への影響
この記事が示す視点は、日本国内でもAI検索(AI Overviewsや各種チャットボット検索)の急速な普及を受けて、「とりあえずSEO予算を止めて様子を見る」という判断を検討している企業にとって重要な材料になります。記事が指摘するとおり、オーガニックの信頼性や権威性は短期間で作り直せるものではなく、一度投資を止めてしまうと、再開後の回復にはそれ以上の時間とコストがかかる可能性があります。全面停止か全面投資かの二択ではなく、トリガーイベントに応じた見直しや、限定的な実験的施策を継続することが、不確実な時期における現実的な選択肢として提示されています。
所感
Scale Basics編集部としては、Morris氏が示す「モメンタムの負債」という考え方は、日本のSEO実務においても説得力のある視点だと受け止めています。特に、AI検索の台頭で先行きが見えにくいことを理由に、施策や予算の判断を先延ばしにしてしまう組織は少なくないと考えられます。一方で、記事が紹介するLily Ray氏の指摘のように、様子見の代わりに安易な定番施策(リスティクルなど)に固執することも、必ずしも安全ではないという点は重要な補足です。予算の全面停止でも思考停止的な施策継続でもなく、トリガーイベントに応じた再評価と、リスクの定量化による社内での説明責任を果たすアプローチが、現実的な落としどころになるのではないでしょうか。
まとめ
・Search Engine LandのCorey Morris氏(Voltage社長兼CEO)が、AI検索時代の不確実性を理由にSEO投資を一時停止する「様子見」戦略には、見えにくい大きなコストが伴うと指摘
・オーガニックの信頼性は時間をかけて積み重なるものであり、投資の凍結は「モメンタムの負債」を生み、回復コストは時間とともに高くなると説明
・Lily Ray氏の指摘として、人気の「リスティクル戦略」が逆効果になり、一部の執筆者が自らの業界リストから外れるケースがあると紹介されている
・様子見に代わる推奨事項として、真のコストの測定、基盤の維持、トリガーイベントの活用、コントロールされた実験、リスクの定量化という5点が挙げられている
よくある質問
Q1: 「様子見」のSEO戦略にはどのようなコストがあるのですか?
Corey Morris氏によれば、オーガニックの信頼性や権威性は時間をかけて積み重なるものであり、投資を一時停止すると「モメンタム(勢い)の負債」が生じます。この負債を回復するためのコストは、時間を追うごとに高くなっていくと説明されています。
Q2: 様子見の代わりに何をすべきだと推奨されていますか?
記事では、真のコストを測定すること、基盤(オリジナルコンテンツやE-E-A-Tシグナルなど)を維持すること、トリガーイベントに応じて再評価すること、コントロールされた実験を行うこと、リスクを定量化することの5点が推奨されています。
Q3: リスティクル戦略についてどのような指摘がありますか?
記事は、Lily Ray氏が共有したデータとして、人気のリスティクル(まとめ記事)戦略が逆効果になっている可能性があり、一部の執筆者が自らが属する業界のリストから外れてしまうケースがあると紹介しています。
出典:The hidden cost of a ‘wait and see’ SEO strategy(Search Engine Land、2026年7月24日)https://searchengineland.com/wait-see-seo-strategy-483348