Merchant Centerに追加された新レポート「AI performance insights」
Search Engine Journalによると、GoogleはGoogle Merchant Centerに「AI performance insights」という名称のレポートを追加し、パイロット展開を始めました。レポートの表示場所は、Merchant Center内の「Analytics(アナリティクス)→Products(商品)→AI performance」タブです。レポートには、AI ModeやAI Overviews上でユーザーがどのような質問をしているかについて、質問のタイプ、頻度、購買ジャーニーの段階、製品用語、そしてシェア・オブ・ボイス(Share of Voice)の指標が含まれます。提供地域は現時点でオーストラリア・カナダ・インド・ニュージーランドへの拡大が予定されているとされています。
レポートで見えるようになったこと
質問のタイプ・頻度・購買ジャーニー
「AI performance insights」では、AI ModeやAI Overviews上で交わされているショッピング関連の質問がどのようなタイプに分類され、どれくらいの頻度で発生しているか、そしてそれが購買ジャーニーのどの段階(比較検討段階なのか、購入直前なのかなど)で発生しているかを把握できます。あわせて、質問の中に登場する製品用語(product terms)も確認できるとされています。
シェア・オブ・ボイス指標
レポートにはシェア・オブ・ボイス(Share of Voice)の指標も含まれており、AI ModeやAI Overviews上での自社商品の露出度合いを、グループ化されたクエリ単位で把握できるようになります。
それでも残る計測のギャップ
一方で記事は、Googleのこうした取り組みが増えても、AI検索の計測には依然として大きなギャップが残ると指摘しています。
クリックデータの欠如
Googleが提供するAI関連のレポートには、いずれもクリックデータが含まれていません。記事は「クリックが依然として最も欠けている重要なデータだ(“Clicks remain the most significant data point we’re missing.”)」としています。
個別クエリが見えない
レポートで見られるのは個別のクエリではなく、グループ化・分類された情報のみです。Search ConsoleのAIレポートについても、ページ・国・デバイス・日別の表示回数(impressions)は確認できるものの、クリック指標はなく、クエリ単位の指標も横断的には提供されていません。記事はこの状況を「需要そのものではなく、需要の輪郭がわかる(“You understand the shape of the demand, rather than the demand itself.”)」と表現しています。
競合セットの非公開
シェア・オブ・ボイスの算出元となる競合セットの詳細はGoogleから開示されておらず、ユーザー側でカスタマイズすることもできません。また、グループ化されたクエリデータはMerchant Center限定の機能であり、Search Consoleには提供されていません。
データを扱ううえでの留意点
独立系SEOコンサルタントのBrodie Clark氏は、こうしたデータについて「データの裏側には、大きなアクショナビリティ(actionability、実際の打ち手につながる度合い)があるわけではない(“There isn’t a great deal of actionability behind the data”)」と指摘しています。加えて記事では、いくつかの留意点が挙げられています。シェア・オブ・ボイスは代理店のレポートにおいて誤解を招く場合があり、0%や100%といった数値が出ることがあります。また、対象はオーガニックのみで、有料広告(Paid)は含まれません。商品フィードを持たないサイトはグループ化されたクエリの洞察を得られず、アフィリエイトサイト・レビューサイト・編集記事系のサイトについては、そもそもクエリ次元でのレポート自体が提供されていません。
背景にある事情
記事では、こうしたAI関連レポートの拡充の背景として、英国のCMA(競争・市場庁、Competition and Markets Authority)が定める9か月の実装要件についても触れられています。
SEO・データ分析担当者はどう捉えるか
ここで押さえておきたいのは、今回の話が「検索順位(ランキング)」の変動に関するものではなく、「計測・可視化」に関するものだという点です。表示回数(インプレッション)ベースのデータは拡充されつつありますが、クリックデータや個別クエリといった、これまでSEO担当者が実務で頼りにしてきた計測軸は依然として提供されていません。Merchant Centerの「AI performance insights」も、対象は商品フィードを持つ小売業者に限られており、アフィリエイトサイトやメディアサイトには恩恵が及びにくい点にも注意が必要です。自社のAI検索経由の需要を把握したい場合は、まず自社が商品フィードを持つ小売業者に該当するかを確認したうえで、シェア・オブ・ボイスなどの指標が「傾向把握」用であり「個別のアクション判断」には向かないことを前提に活用するのが妥当です。
所感
Scale Basics編集部としては、GoogleがAI検索領域のレポーティングを段階的に拡充している動き自体は歓迎できるものの、クリックデータや個別クエリという「実務上もっとも知りたい情報」が依然として欠けている状況は変わっていないと受け止めています。Brodie Clark氏が指摘するとおり、現状のデータは需要の輪郭をつかむには役立つものの、具体的な打ち手に直結するアクショナビリティには乏しいというのが実態でしょう。今回のMerchant Centerの機能拡張も対象が商品フィードを持つ小売業者に限定される点を踏まえると、多くのサイト運営者にとっては「引き続きクリックデータの開示を待つしかない」状況が続くと言えそうです。
まとめ
・GoogleはMerchant Centerに「AI performance insights」レポートを追加し、AI ModeやAI Overviews上のショッピング関連の質問(タイプ・頻度・購買ジャーニー・製品用語・シェア・オブ・ボイス)を小売業者に示すパイロットを開始(オーストラリア・カナダ・インド・ニュージーランドへ拡大予定)
・一方でクリックデータはGoogleのAI関連レポートすべてで欠如しており、個別クエリも見られず、グループ化・分類された情報のみが提供される
・Search ConsoleのAIレポートは表示回数(ページ・国・デバイス・日別)は確認できるがクリック指標がなく、競合セットの詳細も非公開・カスタマイズ不可
・シェア・オブ・ボイスは代理店レポートで誤解を招く場合があり(0%や100%表示など)、対象はオーガニックのみ。商品フィードのないサイトやアフィリエイト・レビュー・編集系サイトはクエリ次元の洞察を得られない
よくある質問
Q1: Merchant Centerの「AI performance insights」とは何ですか?
GoogleがGoogle Merchant Centerに追加したパイロットレポートで、Analytics→Products→AI performanceタブから確認できます。AI ModeやAI Overviews上でユーザーがどのようなショッピング関連の質問をしているかを、質問のタイプ、頻度、購買ジャーニーの段階、製品用語、シェア・オブ・ボイスの指標として示します。現在はオーストラリア・カナダ・インド・ニュージーランドへの拡大が予定されています。
Q2: クリックデータはこのレポートで確認できますか?
確認できません。Googleが提供するAI関連レポートには、いずれもクリックデータが含まれていません。Search ConsoleのAIレポートでも、表示回数(ページ・国・デバイス・日別)は確認できますが、クリック指標やクエリ単位の横断的な指標は提供されていません。
Q3: このレポートはすべてのサイトが利用できますか?
いいえ。グループ化されたクエリデータはMerchant Center限定の機能であり、商品フィードを持つ小売業者向けです。商品フィードを持たないサイトはこの洞察を得られず、アフィリエイトサイト・レビューサイト・編集記事系のサイトには、そもそもクエリ次元でのレポート自体が提供されていません。
出典:Google’s AI Search Data Is Growing, But The Gaps Remain(Search Engine Journal、2026年7月21日)https://www.searchenginejournal.com/googles-ai-search-data-is-growing-but-the-gaps-remain/582558/