何が起きたか:AI生成物の修正案件が87%増
Search Engine Journalによれば、AIが生成した成果物を修正するための案件の掲載が、Freelancer.comにおいて2025年8月から2026年6月までで87%増加し、世界全体で10,760件に達しました。これはGuardianが報じたプラットフォームの内部データにもとづく数字です。
同じ報道で示された他のプラットフォームの数字もあります。Guardianに共有されたUpworkのデータでは、AIの出力を修正する仕事にあたるAIの是正案件が前年比で70%増加しました。Fiverrは、「AI cleanup」というサービスの検索が2023年から2026年にかけて20倍以上に伸びたとしています。
報道が取り上げているのは、デザイナー、ライター、動画編集者といった職種です。ChatGPTやClaudeのようなツールの出力を洗練させることに、いまでは自分の時間の多くを費やしている人たちです。そして彼らに共通する不満として挙げられているのが、依頼側がこうした修理を素早く安価なものとして予算に組むことが多い一方で、その作業はゼロから始めるのと同じだけの労力を要する場合があるという点です。
3つのプラットフォームの数字は直接比較できない
ここは誤読を避けるうえで重要な部分です。Search Engine Journalは、3つの数字が測っているものが違うと明記しています。
Freelancer.comは案件の掲載数を数えており、Upworkは案件そのものを追跡し、Fiverrはキーワードの検索を見ています。測定している対象も期間も異なるため、これらの数字は直接比較できません。
整理すると次のようになります。Freelancer.comは修正案件の掲載が87%増で10,760件に到達、期間は2025年8月から2026年6月です。UpworkはAIの是正案件が70%増で、期間は前年比です。Fiverrは「AI cleanup」サービスの検索が20倍以上で、期間は2023年から2026年です。出典はGuardianで、Freelancer.com、Upwork、Fiverrから共有されたデータにもとづいています。
Freelancer.comの数字の内訳についても説明があります。同社の集計には、「correct AI」「AI hallucination」「AI error」といった語句でタグ付けされた案件が含まれています。もっとも多いカテゴリはグラフィックデザインで、続いて動画編集、校正、コンテンツライティングです。
現場の証言:見積もりと実作業の乖離
数字よりも具体的なのが、当事者の証言です。
Freelancer.comのCEOであるMatt Barrie氏は同紙に対し、この種の仕事は、AIをまず一度目の作業に使ったあとで自分では解けない問題にぶつかった中小企業や起業家から来ることが多いと述べています。同氏によれば、下書きの段階で節約した時間と金は、それを商用利用に耐える状態へ準備する「きわめて時間のかかる」作業によって食い潰されうるとされています。
フロリダで専業のイラストレーターをしているTodd Van Linda氏の例も挙げられています。あるクライアントは、児童書向けにAIが生成した13点から15点のイラストの修正に対して約500ドルを提示し、それぞれ15分程度で終わると想定していました。同氏はこれを断っています。自身の料金は1時間65ドルで、「そこから下がることはない」と述べています。
副業でフリーランスをしている複合メディア編集者のNathan McConnell氏の例は、作業量の水準がわかるものです。同氏は、指が余分に生えていたり左足が2本あったりする、AIが生成した約100枚のタロットデッキについて、1枚ごとにPhotoshopで2時間から3時間を費やしました。断る仕事もあるとし、次のように述べています。
I've told a client before that it's 'too' slop. There's no way I can fix this.
日本語にすると「以前クライアントに、これは『too』slopだと伝えたことがある。これを直す方法はない」という内容です。
一方で減った仕事もある:Management Science誌の研究
市場全体の動きとしては、増えた需要だけを見ると像を誤ります。
Search Engine Journalは、Management Science誌に掲載された研究を引用しています。それによれば、ChatGPTの登場後、一部のフリーランスのライティングやコーディングの仕事への需要は落ちました。自動化にもっともさらされているライティングとコーディングの案件の掲載は、さらされる度合いの低い仕事と比べて、ChatGPTの登場から8ヶ月のうちに21%減少しました。画像生成ツールが登場したあとには、画像制作の案件掲載が17%減っています。
あわせて同誌は、Freelancer.comの2025年の年次報告が、1案件あたりの平均入札数を54件、前年比8%増としていたことにも触れています。
つまり、AIによって減った需要と、AIの後始末として生まれた需要が同時に存在しているという構図です。
SEOコンテンツとの接点(編集部の見解)
ここからは、報道内容を踏まえた編集部の判断です。
まず、この記事の数字がいちばん効くのは、AIで下書きを作る運用のコスト見積もりです。Search Engine Journalは、安価なAIの初稿でも使える状態にするまでにフリーランサーの工数が必要になりうるとし、報道に登場するフリーランサーたちはその工数がゼロから作る場合と同等になりうると述べていると整理しています。Freelancer.comのCEOの発言も同じ内容です。下書きの生成コストだけを見て内製化の判断をすると、この後工程が予算から抜け落ちます。
次に、SEOの文脈での接点についてです。Search Engine Journalは、先週になって別の懸念が生じたとし、Googleの8月のスパムアップデートがAIによって大量生産されたSEOコンテンツを対象にしていた可能性を示唆する報道があったことに触れています。ただし同誌は、Googleが公開時点でそれをアップデートの焦点として名指ししてはいないと明記しています。ここは重要な留保です。因果として確定した話ではありません。
そのうえで、実務的な結論としては、AIの出力を公開前に人が仕上げる工程を組み込むかどうかという判断に帰着します。仕上げの工数を確保できないのであれば、生成量を落としてでも公開する分だけを仕上げるほうが安全だという判断になります。理由は、修正案件の市場が拡大しているという事実そのものが、仕上げなしの成果物が実務で使えていないことの裏返しだからです。
もう1点、依頼する側として気をつけるべきは見積もりの立て方です。児童書のイラスト修正に約500ドルで1点15分と想定した例は、実際に断られています。修正を外注する場合、その作業をゼロから作る場合と同等の工数として見積もる前提で交渉に入るほうが、話が早く進みます。
この需要はいつまで続くのか
先行きについては、当事者のあいだでも見方が分かれています。
オーストラリアのライター・編集者であるKym Dunbar氏は、人間らしくするための作業の多くは、モデルが良くなるにつれて5年から10年のうちに枯れると予想しています。複合メディア編集者のNathan McConnell氏は、訓練を受けていない目には見過ごされるような間違いを捕まえるために、AIはいまも「面倒を見て」もらう必要があると述べています。スペインのグラフィックデザイナーであるLisa氏(同紙にフルネームの掲載を望まなかった)は、ロゴやパッケージのデザインでAIが自分に並ぶのは「もう1年か2年」のうちだと予想しています。
一方で、別の需要への転換もあります。Van Linda氏は昨年後半に修正の仕事を受けるのをやめており、それ以降、AIの結果に不満を持ったクライアントが手描きの作品を求めて同氏のところへ来るようになったと述べています。
まとめ
・AI生成物を修正する案件の掲載が、Freelancer.comで2025年8月から2026年6月までに87%増加し、世界全体で10,760件に達した(Guardian報道、プラットフォームの内部データ)
・Upworkのデータでは同種の是正案件が前年比70%増、Fiverrでは「AI cleanup」サービスの検索が2023年から2026年で20倍以上
・3つの数字は測定対象が異なる。Freelancer.comは掲載数、Upworkは案件、Fiverrはキーワード検索であり、直接比較はできない
・Freelancer.comでもっとも多いカテゴリはグラフィックデザインで、続いて動画編集、校正、コンテンツライティング
・依頼側は修正を短時間・低予算と見積もる傾向があるが、実際にはゼロから作るのと同等の労力になる場合がある。約100枚のAI生成タロットデッキで1枚2時間から3時間という例も
・一方でChatGPT登場後、自動化にさらされやすいライティングとコーディングの案件掲載は8ヶ月で21%減、画像制作は17%減(Management Science誌の研究)
・Googleの8月のスパムアップデートがAI大量生産のSEOコンテンツを対象にした可能性を示唆する報道はあるが、Googleはそれを焦点として名指ししていない
よくある質問
Q1: AI生成物の修正案件はどのくらい増えているのですか?
Freelancer.comの内部データでは、AI生成物の修正にあたる案件の掲載が2025年8月から2026年6月までで87%増加し、世界全体で10,760件に達しました。Upworkのデータでは同種のAI是正案件が前年比70%増、Fiverrでは「AI cleanup」というサービスの検索が2023年から2026年にかけて20倍以上に伸びています。いずれもGuardianが報じた数字です。
Q2: 3つのプラットフォームの数字を並べて比較してよいのですか?
できません。Search Engine Journalは、各プラットフォームが測っているものが違うと明記しています。Freelancer.comは案件の掲載数を数え、Upworkは案件そのものを追跡し、Fiverrはキーワードの検索を見ています。測定対象も期間も異なるため、これらの数字は直接比較できないとされています。
Q3: AIで下書きを作れば制作コストは下がりますか?
下がらない場合があります。Freelancer.comのCEOであるMatt Barrie氏は、下書きの段階で節約した時間と金は、それを商用利用に耐える状態へ準備する「きわめて時間のかかる」作業によって食い潰されうると述べています。報道に登場するフリーランサーたちも、修正の工数がゼロから作る場合と同等になりうるとしています。実例として、約100枚のAI生成タロットデッキで1枚あたり2時間から3時間を要したケースが挙げられています。
出典:AI Slop Cleanup Job Listings Up 87%, Report Says(Search Engine Journal、Matt G. Southern氏、2026年9月3日)https://www.searchenginejournal.com/ai-slop-cleanup-job-listings-report/588235/