何が起きたか:8月17日に目標ベース入札の挙動が変わる
記事の冒頭では、変更の内容が次のように説明されています。「8月17日より、予算に制約があり目標ベースの入札戦略を使用しているキャンペーンは、設定した目標を超過するのではなく、より一貫してその目標に近づくようになる(“Starting August 17, campaigns that are limited by budget and use a target-based bid strategy will deliver more consistently toward the target you set instead of overshooting it.”)」。
これまで、予算に制約があり目標CPAまたは目標ROASで運用しているキャンペーンは、しばしば目標を上回る成果を出していました。記事はその理由を「予算上限こそが実質的な制約になっていたため、システムは目標に達するまで支出を使い切ることがなかった(“the budget cap was the real constraint, so the algorithm never spent all the way up to the target.”)」と説明しています。8月17日以降は、この関係が変わります。
対象となるキャンペーンとならないキャンペーン
今回の変更は、すべてのキャンペーンタイプに一律に適用されるわけではありません。記事によると「この変更は、Search、Shopping、Performance Max、Demand Gen、Travel、Displayの各キャンペーンにおける目標ベースキャンペーンに適用される一方、App、Video reach、Video viewの各キャンペーンは対象外となる(“The update applies to target-based campaigns across Search, Shopping, Performance Max, Demand Gen, Travel, and Display, while App, Video reach, and Video view campaigns are excluded.”)」とされています。
Google公式のサポートページ(support.google.com/google-ads/answer/17061251)でも同様の内容が確認でき、対象キャンペーンとしてSearch・Shopping・Performance Max・Demand Gen・Display・Hotel・Travelが挙げられており、App Campaigns・Video reach campaigns・Video view campaignsは従来どおりの入札挙動を継続するとされています。ShoppingとPerformance Maxが明確に対象に含まれているため、EC事業者にとっては見過ごせない変更です。
何がどう変わるのか:$100のtarget CPAを例に
記事は、具体的な変化を次の例で説明しています。「目標CPAが$100に設定されていて、実際には$50でコンバージョンを獲得できているキャンペーンがあるとする。変更後は、この実績が$100に近づいていく(“Take a campaign with a $100 target CPA that has been delivering conversions at $50. After the change, it will move toward $100.”)」。
なぜこうした動きになるのかについて、記事は「8月17日以降、システムはこの(目標との)余裕を、まだ使える余地として扱うようになる。より単価の高いコンバージョンも追いかけるようになり、それが平均値を設定した目標に向けて引き上げる(“After August 17, the system treats that headroom as room to work with. It will pursue additional conversions that cost more, which pulls your average up toward the target you set.”)」と説明しています。Googleはこの変更を「スケールする際により予測可能なパフォーマンス(“more predictable performance as you scale”)」を提供するものと位置づけています。
Google側の説明:「入札目標は効率とコントロールのためのレバー」
この変更を巡っては、目標ベースのキャンペーンが実質的に支出増を強制されるのではないか、という受け止め方も出ています。これに対し、Google広告のリエゾンを務めるGinny Marvin氏は次のように説明したと記事は伝えています。「入札目標は、効率性と支出コントロールのためのレバーであることを意図している。一方、Maximize ConversionsとMaximize Conversion Valueは、目標を設定しない固定予算のために作られた戦略だ(“Bidding targets are meant to be your lever for efficiency and spend control, while Maximize Conversions and Maximize Conversion Value are the strategies built for a fixed budget with no target.”)」。
つまりGoogle側の位置づけとしては、目標に「近づける」ことは支出コントロールの精度を高めるための変更であり、目標を設定したくない場合はMaximize Conversions系の戦略を使うべき、という整理です。とはいえ、目標値を「上限の目安」として運用してきた広告主にとっては、実質的な支出増として現れる可能性がある点は変わりません。
事前に使えるツールと3つの選択肢
記事では、Googleがこの変更に合わせて提供している関連ツールも紹介されています。まず、7月6日からアカウントで利用可能になっている入札目標調整ツールについて、「7月6日からアカウントで利用可能になっている入札目標調整ツール(Bid Target Adjustment Tool)は、この過去の実績を可視化し、更新後の目標値を直接適用できるようにする(“The Bid Target Adjustment Tool, live in accounts since July 6, surfaces this historical performance and lets you apply updated targets directly.”)」と説明されています。
また、Googleが6月15日に拡張したSmart Bidding Explorationについては、「ROASの許容範囲(tolerance)を設定することで、通常であればスキップされるはずのコンバージョンにつながるクエリにもアルゴリズムが入札できるようになり、リーチが広がる(“set a ROAS tolerance so the algorithm can bid on converting queries it would normally skip, widening reach.”)」機能だと紹介されています。ベータ版で提供されているPromotion Modeについても言及があり、「定義したピーク期間に向けて、一時的な予算とROAS許容範囲の引き上げをスケジュールし、期間終了後は自動的に元に戻る(“a temporary budget and ROAS tolerance boost for a defined peak window and then closes itself.”)」機能とされています。
そのうえで記事は、8月17日を前に広告主が取れる選択肢を3つ挙げています。1つ目は「目標を実際のパフォーマンスに合わせてリセットする(“Reset the target to your actual performance.”)」、2つ目は「予算を引き上げ、明示された目標のままスケールさせる(“Raise the budget and scale at the stated target.”)」、3つ目は「意図的に目標へドリフトさせるままにする(“Let it drift toward the target on purpose.”)」というものです。
監査の具体的な進め方についても、「『Limited by budget』のフラグが付いていて、目標CPAまたは目標ROASを使用しているキャンペーンをすべて洗い出す。過去90日間について、実際のCPAまたはROASを設定目標と比較する(“Pull every campaign flagged ‘Limited by budget’ that uses Target CPA or Target ROAS. Compare actual CPA or ROAS to the stated target over the last 90 days.”)」という手順が示されています。
なぜ重要か・SEO/GEO実務への影響
この変更が特に重要なのは、対象キャンペーンにShoppingとPerformance Maxが明記されている点です。EC事業者はtROASでの運用比率が高く、かつ予算上限に達しているキャンペーンを抱えているケースも多いため、8月17日を境に「これまで目標を上回っていた実績」が目標値付近まで下がる、つまり同じ売上・コンバージョン数を得るための広告費が増える可能性があります。記事も、Contribution Margin(貢献利益)ベースで実質的なROASの下限を設定しておくことと、Performance Maxではチャネル間のトラフィックシフトを監視しておくことをEC事業者への注意点として挙げています。
SEO・コンテンツ担当者にとっても無関係ではありません。広告費の実質的な増加は、オーガニック経由の獲得効率(CPA換算)との比較材料として社内で使われることが多く、広告側のコスト構造が変わればオーガニック施策への予算配分の議論にも影響します。ROASやCPAの基準値そのものが動く以上、広告・SEO双方の担当者が同じタイミングで数値の前提を揃えておく必要があります。
所感
Scale Basics編集部としては、この変更の実務上のポイントは「8月17日に何が起きるか」よりも「8月17日より前に何を確認しておくか」にあると考えています。記事が示す監査手順――「Limited by budget」のフラグが付いたtCPA/tROASキャンペーンを洗い出し、過去90日の実績と設定目標を突き合わせる――は、そのまま社内チェックリストとして使える具体性を持っています。
ECサイトの場合は、この監査に加えて、商品ごとの貢献利益率を踏まえた実質的なROAS下限を先に決めておくことが重要です。目標値をそのまま据え置いた場合、広告費が目標に向かって上振れした結果、貢献利益ベースでは赤字ラインを割り込むカテゴリが出てくる可能性があるためです。Performance Maxを使っている場合は、チャネル別(検索・ディスプレイ・YouTube・Discoverなど)のトラフィック配分が変更前後でどう動くかも、単月の指標だけでなく複数週にわたって観察しておくと変化に気づきやすくなります。あわせて、広告費の変動が想定内であることを事前に社内の意思決定者と共有しておけば、変更後に「なぜ急にCPAが上がったのか」という後追いの説明に追われずに済みます。
まとめ
・Google広告は2026年8月17日、予算制約下の目標ベース入札(tCPA/tROAS)キャンペーンの挙動を変更し、実績が設定目標により近づくようにする
・対象はSearch・Shopping・Performance Max・Demand Gen・Travel・Display(Google公式サポートではHotelも対象と明記)。App・Video reach・Video viewは対象外
・目標CPA $100に対し実績$50のキャンペーンは、変更後に実績が$100へ近づく方向に動くとされている
・広告主が取れる選択肢は「目標を実績に合わせてリセット」「予算を引き上げてそのままスケール」「意図的にドリフトを許容する」の3つ
・EC事業者は、貢献利益ベースの実質ROAS下限の設定と、Performance Maxのチャネル別トラフィックシフトの監視を、8月17日より前に済ませておくべきだとされている
よくある質問
Q1: 何が、いつから変わりますか?
2026年8月17日から、予算に制約のある(Limited by Budget)目標ベース入札キャンペーン――目標CPAまたは目標ROASを使うキャンペーン――の入札挙動が変わります。これまで目標を上回る成果を出していたキャンペーンについて、実績が設定した目標値により近づくようになります。
Q2: 対象となるキャンペーンタイプは何ですか?
Search、Shopping、Performance Max、Demand Gen、Travel、Displayが対象です(Google公式サポートページではHotelも対象に含まれています)。App Campaigns、Video reach campaigns、Video view campaignsは対象外で、従来どおりの入札挙動が続きます。
Q3: 広告主は何をすればよいですか?
記事では、「Limited by budget」のフラグが付いたtCPA/tROASキャンペーンを洗い出し、過去90日の実績と設定目標を比較する監査が推奨されています。そのうえで、目標を実績に合わせてリセットする、予算を引き上げて目標どおりスケールさせる、意図的にドリフトを許容する、という3つの対応から選ぶことになります。EC事業者は、あわせて貢献利益ベースの実質ROAS下限の設定も検討すべきだとされています。
出典:Google Ads’ Target-Based Bidding Update For Ecommerce(Search Engine Journal、Tony Adam氏、2026年7月27日)https://www.searchenginejournal.com/google-ads-target-based-bidding-update-for-ecommerce/581801/
参考:目標ベース入札の変更について(Google 広告 ヘルプ)https://support.google.com/google-ads/answer/17061251