何が起きたか:あるフォーラムの「/threads/」だけが手動対策を受けた
Search Engine Journalの記事によると、発端はRedditに投稿された相談でした。あるフォーラムサイトの運営者が、Googleから届いた手動対策(マニュアルアクション)の通知について報告しています。
運営者によれば、通知メッセージの内容は「メッセージ(WNC-651700、2026年7月17日ごろ)の内容は次のとおりだ。『付加価値がほとんど、または全くない薄いコンテンツ(“Thin content with little or no added value.”)』」というものでした。これは一部のセクションのみを対象とする部分的な手動対策で、人間の審査担当者がサイトの一部を確認し、ランキングに値しないと判断して抑制した、というものです。
運営者は「Affectsフィールドが名指ししているのはただ1つ、windowsforum.com/threads/というURLパターンだけだ(“The Affects field names exactly one thing: the URL pattern windowsforum.com/threads/.”)。それは168,290件の可視スレッドと50万件を超える投稿、20年分がまとめて抑制されたということだ(“That’s 168,290 visible threads and over half a million posts, twenty years deep, suppressed together.”)」と説明しています。さらに「サンプルとなるURLは1つも提示されなかった。1つもだ(“No example URLs were provided. Not one.”)」とも述べており、具体的にどのページが問題視されたのかは開示されていません。
Google公式のスパムポリシーが定義する「thin content」
Search Engine Journalは、Googleには「thin content(薄いコンテンツ)」の定義が複数ある、と説明しています。そのひとつが「thin affiliate content(薄いアフィリエイトコンテンツ)」で、アフィリエイトサイトに掲載された、商品説明やレビューが提携元(マーチャント)のサイトからそのまま複製されただけのコンテンツを指します。
Google公式のスパムポリシーページでも、この定義は「thin affiliation(薄いアフィリエイト)とは、商品説明やレビューが元の販売元(マーチャント)から直接コピーされ、独自のコンテンツや付加価値が一切ない、アフィリエイトリンク付きのコンテンツを公開する行為である(“Thin affiliation is the practice of publishing content with product affiliate links where the product descriptions and reviews are copied directly from the original merchant without any original content or added value.”)」と説明されています。
また、元Googler(Google出身者)のMatt Cutts氏は、動画の中で薄いアフィリエイトコンテンツについて「独自の見識や調査、分析(“original insight or research or analysis”)」や、価値を付加する(“add value”)独自動画のようなコンテンツが欠けている、と説明しています。Cutts氏はさらに、薄いコンテンツの対極にあるのは、サイト運営者自身が執筆し、付加価値があり、独自性があり、著者本来の専門性を反映したコンテンツだ、とも述べています。ただしこれはCutts氏在職当時からGoogleが示してきた一般的な考え方であり、今回のフォーラムの事例について新たにGoogleが説明したものではない点に注意が必要です。
Search Engine Journalは、このほかの薄いコンテンツの例として「シンジケート(配信)コンテンツ」「アーティクルマーケティング(記事広告)コンテンツ」も挙げています。
「本当に薄いはずのセクション」がなぜ対策を受けなかったのか
運営者が納得できていなかったのは、サイト内には今回対策を受けた「/threads/」以外にも、明らかにより「薄い」と思われるセクションが2つあったにもかかわらず、そちらは手動対策の対象にならなかった、という点です。1つは配信されたヘッドラインのフィード、もう1つはアーカイブ化されたナレッジベースで、いずれも3年間活動が止まっていたといいます。
運営者は次のように綴っています。「腑に落ちない部分。薄いコンテンツと判定されそうな明らかな候補はサイト内に2つある。古い配信ヘッドラインのフィードと、アーカイブ化されたナレッジベースだ。合わせて11,927スレッド、平均年齢は約12.5年(“Together, that’s 11,927 threads with a mean age of about 12.5 years.”)」「……この素材はPanda、Penguin、2023年9月のhelpful content updateを通じて、さらにコミュニティが元のドメインから移行した際も、継続してクロール・インデックス・順位付けされ続けてきた……15年間、2つのドメイン、Googleが実施したあらゆる主要なランキング変更を経ても、手動対策を受けたことは一度もなかった(“Fifteen years, two domains, every major ranking change Google has shipped and it never drew a manual action.”)」。
この投稿にはRedditユーザーから反発の声も上がり、Googleの検索市場での独占的な立場を問題視する意見も見られたといいます。あるユーザー「Stablogger」氏は、このフォーラムの評判を踏まえればなおさら衝撃的だとしたうえで、「薄いコンテンツがあるのは間違いないが、繰り返しの多いスレッドやほぼ空のスレッドはどのフォーラムにも(Redditにも)ある」「それがユーザー生成コンテンツというものの性質であり、投稿者の同意なしに薄いスレッドを削除するのが解決策にはなり得ない」という趣旨のコメントを寄せています。これに対しSearch Engine Journalは、Stablogger氏の見解とは裏腹に、古く薄い会話を整理・削除(プルーニング)することは実際には選択肢のひとつであり、多くのフォーラム運営者が実践している、と指摘しています。
「原因はAI生成コンテンツではないか」という専門家の推測
Search Engine Journalは、Googleは過去に「AI生成コンテンツであること自体が自動的に悪いわけではない(“content that is AI-generated does not automatically mean it’s bad”)」と説明してきた、としたうえで、オーストラリア在住のSEO専門家Gagan Ghotra氏が、今回の薄いコンテンツによる手動対策の原因はAI生成コンテンツではないかという見方を示した、と伝えています。ここで重要なのは、これはGoogleの公式見解ではなく、あくまで第三者であるGhotra氏個人の推測だという点です。
Ghotra氏はX(旧Twitter)で「おそらく、ほとんどの投稿に自動返信していたAIボットがこれを引き起こしたのだろう😅(“Probably their AI bot auto replying to most of posts triggered this 😅”)」と投稿し(2026年7月26日)、対象フォーラムのスクリーンショットを添付しました。Search Engine Journalによれば、このスクリーンショットには、フォーラムがAIチャットボットを「スタッフメンバー」として扱っており、2023年3月14日以降活動を続け、これまでに111,050件もの返信を投稿してきたことが写っていたといいます。
この点についてSearch Engine Journal(Roger Montti氏)は、フォーラムというコンテンツ形式に期待される付加価値は実体験に基づく回答である点にある、との見方を示しています。AIには実体験がなく、書籍や他のウェブサイトなど「どこか別の場所」から得た受け売りの知識を扱うにすぎないため、フォーラムの文脈では付加価値を生まず、ユーザーが質問を投稿する際に期待しているものとは異なる、というのがMontti氏自身の分析です。ただしこれもSearch Engine Journal側の解釈であり、Googleが「フォーラムのAI回答だから対策した」と公式に説明したわけではありません。
Google公式ポリシーが名指しする「スケールされたコンテンツの悪用」
Scale Basics編集部がGoogle検索セントラルのスパムポリシーページを確認したところ、今回SEJが挙げた「thin affiliate content」とは別に、「スケールされたコンテンツの悪用(Scaled content abuse)」という項目があり、そこでは生成AIツールの利用が名指しで例示されていることが分かりました。同ポリシーは「スケールされたコンテンツの悪用とは、検索順位を操作することを主目的として大量のページが生成される行為であり、この不正な手法は、どのような方法で作成されたかにかかわらず、ユーザーにとってほとんど、あるいは全く価値のないオリジナリティに欠けたコンテンツを大量に作ることに主眼が置かれている(“Scaled content abuse is when many pages are generated for the primary purpose of manipulating search rankings and not helping users.”)」と定義しています。
その具体例の1つとして「生成AIツールやその他の類似ツールを使って、ユーザーに価値を追加することなく大量のページを生成すること(“Using generative AI tools or other similar tools to generate many pages without adding value for users”)」が明記されています。今回のフォーラムの手動対策がこの項目に基づくものかどうかは確認されていませんが、Googleのスパムポリシー上、生成AIによる大量コンテンツ生成そのものが公式に違反例として名指しされている、という事実は、AI活用を進める事業者にとって押さえておく価値があります。
なぜ重要か・SEO/GEO実務への影響
今回の事例が示しているのは、Googleの手動対策の通知が「thin content」とだけ告げ、具体的な対象URLの例を一切示さない場合がある、という運用の実態です。運営者は自らサイト内を精査し、どのセクションが原因かを推測するほかありませんでした。AIチャットボットやFAQ自動生成、コメント自動応答など、AIを使って大量にコンテンツやレスポンスを生成している事業者ほど、こうした通知を受けた際に原因の特定に苦労するリスクが高いといえます。
また、フォーラムやQ&Aサイト、コミュニティサイトのように、ユーザー生成コンテンツ(UGC)と自動生成コンテンツが混在するサイトでは、どこまでが「人間の実体験に基づく価値」で、どこからが「受け売り情報の反復」になっているかの線引きが実務上難しくなります。GEO(生成エンジン最適化)の観点でも、AIが引用したくなるのは一次情報や実体験に基づく独自性のあるコンテンツであり、この点は検索エンジンのスパムポリシーとAI検索での引用されやすさの両面で共通する論点です。
所感
Scale Basics編集部としては、今回の事例で最も重要なのは「Googleが公式にAI生成コンテンツを罰すると発表したわけではない」という一点だと考えています。今回明らかになっているのは、(1)あるフォーラムが「thin content」を理由とする部分的な手動対策を受けたこと、(2)その通知には具体的な対象URLが一切示されなかったこと、(3)AI生成コンテンツが原因ではないかという見方はGoogle自身ではなく第三者のSEO専門家によるものであること、の3点です。この違いを混同して「AIコンテンツはGoogleに罰せられる」と一般化するのは早計だと考えます。
そのうえで、実務者が明日からできる確認手順としては、まず自社サイト内でAIが自動生成・自動応答しているセクション(FAQボット、コメント自動返信、レビュー要約、商品説明の自動生成など)を洗い出し、それぞれが投稿・生成している分量(スレッド数・ページ数・返信数)を把握することから始めるとよいでしょう。そのうえで、各セクションの内容が「そのページ・投稿だけで完結する独自の付加価値」を持っているか、それとも既存のウェブ上の情報を言い換えて反復しているだけかを、Googleの「スケールされたコンテンツの悪用」の定義(価値を追加せずに大量生成する、複数ページの内容を継ぎ接ぎする、意味が薄いのにキーワードだけ詰め込む、など)と照らし合わせて棚卸しすることを推奨します。特に、生成量が急激に増えているセクション(今回のケースのように数万~十万件規模で自動投稿が積み上がっている箇所)は優先的に点検すべきです。また、手動対策の通知は具体的なURL例を示さない場合がある以上、通知が来てから調べるのではなく、平常時からこうした棚卸しをルーティン化しておくことが望ましいと考えます。
まとめ
・あるフォーラムサイトがGoogleから「thin content(薄いコンテンツ)」を理由とする部分的な手動対策を受け、対象は「windowsforum.com/threads/」というURLパターンのみ、168,290スレッド・50万件超の投稿が抑制されたとRedditで報告された
・通知には具体的な対象URLの例が一切示されておらず、運営者は自らサイト内の他セクションと比較して原因を推測するしかなかった
・サイト内にはより古く「薄い」と見えるセクション(合計11,927スレッド、平均年齢約12.5年)もあったが、そちらは15年間・2ドメインにわたり一度も手動対策を受けていなかった
・AI生成コンテンツが原因ではないかという見方は、GoogleではなくSEO専門家Gagan Ghotra氏個人の推測であり、対象フォーラムのAIチャットボットは2023年3月以降に111,050件の返信を投稿していたことが分かっている
・Google公式のスパムポリシーには「スケールされたコンテンツの悪用」という項目があり、生成AIツールで価値を追加せずに大量のページを生成する行為が違反例として名指しされている
よくある質問
Q1: Googleは「AI生成コンテンツは薄いコンテンツとして罰する」と公式に発表したのですか?
いいえ。Search Engine Journalの記事によれば、Googleは過去に「AI生成コンテンツであること自体が自動的に悪いわけではない」と説明してきました。今回のフォーラムの事例でAI生成コンテンツが手動対策の原因だとしているのは、SEO専門家Gagan Ghotra氏個人の推測であり、Googleが公式に認めたものではありません。
Q2: 今回手動対策を受けたのはサイトのどの部分ですか?
報告によれば、対象は「windowsforum.com/threads/」というURLパターンのみで、168,290件のスレッドと50万件を超える投稿が対象とされました。サイトの他の部分には影響しない部分的な手動対策だったとされています。
Q3: Googleのスパムポリシーで生成AIコンテンツはどのように扱われていますか?
Google公式のスパムポリシーページには「スケールされたコンテンツの悪用(Scaled content abuse)」という項目があり、その具体例として「生成AIツールやその他の類似ツールを使って、ユーザーに価値を追加することなく大量のページを生成すること」が名指しで挙げられています。生成AIの利用自体が問題なのではなく、価値を追加せずに大量生成することが問題とされている点がポイントです。
出典:Google May Be Penalizing AI-Generated Content As Thin Content(Search Engine Journal、Roger Montti氏、2026年7月27日)https://www.searchenginejournal.com/google-may-be-penalizing-ai-generated-content-as-thin-content/583773/
参考:Google検索セントラル スパムポリシー(薄いアフィリエイトコンテンツ)https://developers.google.com/search/docs/essentials/spam-policies#thin-affiliate-pages
参考:Google検索セントラル スパムポリシー(スケールされたコンテンツの悪用)https://developers.google.com/search/docs/essentials/spam-policies#scaled-content