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Google、匿名化した検索データの競合提供をEUが命令(DMA)【2026年7月】

Google、匿名化した検索データの競合提供をEUが命令(DMA)【2026年7月】

EUの欧州委員会が、デジタル市場法(DMA)に基づく2つの拘束的決定を採択し、Googleに対して匿名化した検索データを競合の検索エンジンやAIチャットボットへ提供するよう命じたと、Search Engine Journalが報じています。委員会は「Googleのこれまでのデータ共有の取り組みは不十分だった」との見方を示しており、Googleは2つの決定のいずれにも反対の姿勢を表明しています。日本のSEO担当者にとって即座に順位や計測が変わる話ではありませんが、検索・AIエコシステムの前提が動く可能性のある規制動向として押さえておきたいニュースです。

何が起きたのか

Search Engine Journalによると、欧州委員会は2026年7月16日、デジタル市場法(Digital Markets Act、DMA)に基づく2つの拘束的決定(binding decisions)を採択しました。これらは別々の決定であり、内容は次のとおりです。1つ目は、Googleに対し匿名化した検索データを、条件を満たす競合の検索エンジンおよびAIチャットボットへ提供するよう求めるもの。2つ目は、AndroidのOS機能を、音声起動やアプリ内機能の面で競合のAIアシスタントに開放するよう求めるものです。委員会は、Googleのこれまでのデータ共有の取り組みは不十分だった(has failed)との見方を示したとされています。これらの決定はDMA上で拘束力を持つ一方、今回の措置そのものに制裁金は付随していないと報じられています。Googleは2つの決定のいずれにも反対しており、本記事は同社の主張と規制当局の決定内容の双方を、報道に基づいて整理するものです。

共有が求められるデータと、除外されるデータ

提供対象となるデータ

報道によれば、Googleが提供を求められる匿名化データには、匿名化された検索クエリの情報、クリックデータ、表示(view)データ、検索結果内での掲載順位のデータ、検索結果のメタデータ(言語・デバイス種別など)、閲覧されたURL、ユーザーのインタラクションなどが含まれるとされています。いずれも個々のユーザーを特定しない形に匿名化することが前提です。委員会はこの匿名化について、社内外のプライバシー専門家とともに開発した「多層的な技術プロセスと契約上のセーフガードを組み合わせたもの」と説明しているとされています。

提供対象外とされるデータ

一方で、共有の対象外とされるものも明確にされています。ランキングアルゴリズムそのもの、アカウント情報、個々の検索履歴、タイムスタンプ、そして件数が少ない(rare)クエリや長い(lengthy)クエリは提供対象に含まれないとされています。件数の少ないクエリや長文クエリを除外するのは、匿名化しても個人が推測されやすくなるリスクを避けるための線引きだと考えられます。つまり今回の枠組みは、Googleの中核であるランキングの仕組みや個人の行動履歴を開示させるものではなく、あくまで集計・匿名化された検索の挙動データを競合が利用できるようにする、という位置づけです。

データを受け取れる事業者の条件と、利用のルール

受領資格

データの提供を受けられるのは、一定の条件を満たした競合事業者に限られます。報道によれば、申請するすべての事業者は月間のEU利用者が最低5万人(50,000 monthly EU users)以上であることが求められます。加えて、2年以上の運用実績を持つこと、または新規参入者の場合は投資に関するテスト(investment test)のいずれかを満たす必要があります。さらに、Googleが実際にデータを共有する前に、セキュリティ審査(security screening)と独立監査(independent audit)を通過することが条件とされています。

許可される用途と、禁止される用途

受け取ったデータの使い道にも制限があります。許可されるのは、自社システムの改善に用いること、および自社の検索結果の取得・ランキングの仕組み(retrieval and ranking systems)を開発することで、AIの回答を裏付ける「グラウンディング(grounding)」も承認された用途の1つとされています。一方、禁止されるのは、汎用AIモデルの学習(training general AI models)に使うこと、およびGoogleの検索結果をそのまま複製(replicating Google’s results)することです。競合が「Googleの結果をコピーする」用途は認めず、あくまで自前のシステムを鍛えるためのデータとして使わせる、という切り分けになっています。

価格の考え方と今後のスケジュール

データ提供の価格は、市場実勢(open-market rates)ではなく、コスト回収(cost recovery)を基準に設定するとされています。Googleは価格に関する提案を遅くとも2027年1月までに提出することが求められています。もう一方のAndroidに関する決定では、主要機能の追加を遅くとも2027年8月1日までに、音声起動の同時利用については2028年8月1日までに対応する期限が示されているとされています。また委員会は、これらの措置を2年ごとに見直す(review every two years)方針だとされています。

Googleの反応

Googleは2つの決定のいずれにも同意していません。同社でグローバル渉外を統括するKent Walker氏(President of Global Affairs)は、今回の措置が数百万人規模の欧州のユーザーにとって「重要なプライバシーとセキュリティのガードレールを損なうおそれがある(risk undermining vital privacy and security guardrails)」と述べたと報じられています。同氏はまた、適切な匿名化やユーザーの認識・同意がないまま、欧州の検索データを不慣れな(unfamiliar)企業に開示することへの懸念を示し、Google側はこれまで繰り返し代替案を提案してきたと主張しているとされています。委員会と事業者の間で、匿名化がどの程度まで十分と言えるのかという評価が分かれている構図です。

SEO・Web担当者はどう捉えるか

まず前提として、今回の決定はEUのDMAに基づく規制措置であり、対象はEUの市場・利用者です。日本のサイト運営者やSEO担当者にとって、自サイトの検索順位が今日明日で変わる話ではありませんし、Search Consoleに表示される表示回数・クリック数・掲載順位といった計測値が直接動くものでもありません。順位変動やアルゴリズム更新の話ではなく、検索・AI市場の競争環境に関わる制度の話だという点を、まず切り分けて理解しておくのが安全です。

そのうえで中期的な観点では、注視する価値があります。記事が引用するSE Rankingのデータでは、AIプラットフォームが世界のインターネットトラフィックに占める割合は2026年1月時点で0.24%にとどまるとされ、現時点で流入源としての存在感はまだ小さいのが実態です。しかし、匿名化された検索データへのアクセスが競合の検索エンジンやAIチャットボットに開かれれば、2027年以降、これらの事業者が土台となる検索データを一定程度そろえられるようになります。結果として、引用元(citation)や参照トラフィックの発生源が少数のプラットフォームに集中している現状が、より多様な提供者へと広がっていく可能性があります。実際にどれだけ影響が出るかは、どの企業が受領資格を満たして監査を通過し、そのデータをどれだけ有効に活用できるかに左右されるため、現段階では不確実です。日本の担当者としては、まずは「Google一強の検索データ環境が制度的に揺らぎ始めた」という構造変化のシグナルとして捉え、AI検索経由の流入をどう計測・最適化するかという自社の準備を進めておくのが現実的な向き合い方だと考えます。

所感

Scale Basics編集部としては、今回の決定は「検索データという競争の源泉を、規制当局が競合に開放させようとする」という点で、検索エコシステムの前提を長期的に動かしうる動きだと捉えています。ランキングアルゴリズムや個人の検索履歴は対象外とされ、匿名化と監査という条件付きである点からは、競争促進とプライバシー保護のバランスを慎重に取ろうとする意図がうかがえます。一方で、Googleが「不十分な匿名化のまま不慣れな企業にデータが渡るリスク」を主張しているように、実装の中身次第で評価は大きく変わりえます。現時点では決定が採択された段階で、価格提案や監査の運用はこれからです。断定的な結論を急がず、2027年に向けた各社の対応と、日本を含む他地域の規制がこれに追随するかどうかを、継続して見ていきたいところです。

まとめ

・欧州委員会は2026年7月16日、DMAに基づく2つの拘束的決定を採択。1つはGoogleに匿名化検索データの競合提供を、もう1つはAndroid機能の競合AIアシスタントへの開放を求めるもの

・共有対象は匿名化クエリ・クリック・表示・掲載順位・メタデータ・閲覧URL・インタラクション等。ランキングアルゴリズム、アカウント情報、検索履歴、タイムスタンプ、希少/長文クエリは対象外

・受領には月間EU利用者5万人以上、2年の運用実績または投資テスト、セキュリティ審査と独立監査の通過が必要。用途は自社システムの改善・自前の検索/ランキング開発・グラウンディングに限られ、汎用AI学習やGoogle結果の複製は禁止

・価格はコスト回収ベース。Googleの価格提案は2027年1月まで、Android関連は2027年8月1日・2028年8月1日が期限。委員会は2年ごとに見直す方針。Googleは両決定に反対

よくある質問

Q1: 今回EUはGoogleに何を命じたのか?

欧州委員会が2026年7月16日、DMA(デジタル市場法)に基づき2つの拘束的決定を採択しました。1つ目はGoogleに対し、匿名化した検索データを条件を満たす競合の検索エンジン・AIチャットボットへ提供するよう求めるもの、2つ目はAndroidのOS機能を音声起動やアプリ内機能の面で競合のAIアシスタントに開放するよう求めるものです。両決定はDMA上で拘束力を持ちますが、今回の措置自体に制裁金は付随していないと報じられています。

Q2: どんなデータが共有され、何が除外されるのか?

提供対象は、匿名化された検索クエリ情報、クリック・表示データ、検索結果内の掲載順位、メタデータ(言語・デバイス種別)、閲覧URL、ユーザーのインタラクションなどです。一方、ランキングアルゴリズム本体、アカウント情報、個々の検索履歴、タイムスタンプ、件数の少ないクエリや長文クエリは対象外とされています。個人が特定・推測されやすいデータを除いたうえで、集計・匿名化された検索の挙動データを共有させる枠組みです。

Q3: 日本のSEO担当者にすぐ影響はあるのか?

今回の決定はEUのDMAに基づく措置で、対象はEUの市場・利用者です。日本のサイトの検索順位やSearch Consoleの計測値が直接変わるものではありません。ただし中期的には、匿名化検索データが競合の検索エンジンやAIチャットボットに開かれることで、2027年以降、引用元や参照トラフィックの発生源が多様化する可能性があります。現時点では構造変化の兆しとして捉え、AI検索経由の流入の計測・最適化を準備しておくのが現実的です。

出典:Google Must Share Anonymized Search Data With Rivals(Search Engine Journal、2026年7月)https://www.searchenginejournal.com/google-must-share-anonymized-search-data-with-rivals/582922/

scale-basics編集部
監修

scale-basics編集部

SEO・AI検索最適化(AIO/LLMO/GEO)・Web制作の最前線で活動する専門チーム。テクニカルSEOからコンテンツ戦略、データ分析まで幅広い実務経験をもとに、最新のナレッジと実践的なノウハウを発信しています。

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