何が起きたか:Z世代のClaude購入検討率が四半期でほぼ倍増
Search Engine Journalに掲載された記事「Gen Z Now Treats Claude And OpenAI Like Consumer Brands, But Trust Is Still An Issue」で、著者のGreg Jarboe氏(SEO-PR共同創業者)は、調査会社YouGovが2026年7月29日に公開したブランド分析「Brands Rising Among Gen Z in the U.S. in 2026」を取り上げています。
同分析によると、米国Z世代成人のあいだで購入検討率を大きく伸ばしたブランドの上位に、AI関連の名前が複数並びました。Claudeは2026年第1四半期(1〜3月)の14.2%から第2四半期(4〜6月)には28.1%へとほぼ倍増し、OpenAIは10.1%から22.1%へ、伸び率にして118.8%の上昇を記録したとされています。製品ブランドとしてのChatGPTも16.3%から25.4%へと、5割を超える伸びを見せました。
Jarboe氏はこの動きについて、Z世代がAI企業をスニーカーブランドや動画配信サービスと同じ土俵で捉え始めた兆候だとしています。AI企業が技術者向けのツールベンダーではなく、一般消費者が「そこから買うかどうか」を検討する対象として認識され始めた、という位置づけです。
調査の詳細:YouGov BrandIndexが測っている「Consideration」とは
この数値の出どころであるYouGov BrandIndexは、2,000を超えるブランドを日次の調査で継続追跡している同社のブランド指標プラットフォームです。今回引用されている「Consideration(購入検討)」は、そのブランドから購入を検討すると答えた回答者の割合を示す指標だと同社は説明しています。
YouGovの公表によれば、今回の分析は2026年第1四半期と第2四半期のスコアを比較したもので、対象はZ世代の成人です。同社はZ世代を1997年から2012年生まれと定義したうえで、18歳以上の成人を調査対象としています。またランキングに含めるための条件として、最低300サンプルの基数、135日以上のスコア取得期間、そして第2四半期のConsiderationスコアが15%以上であることを課したとしています。
同社が挙げた主な上昇ブランドは次のとおりです。Johnnie Walkerが7.5%から20.0%へと伸び率166.7%で最大の上昇幅を記録し、Claudeが14.2%から28.1%、OpenAIが10.1%から22.1%、ChatGPTが16.3%から25.4%、Google Assistantが8.1%から15.8%(伸び率95.1%)、アウトドア小売のREIが9.0%から17.2%(同91.1%)と続きます。このほかStacy’s、Philips、Bridgestone、Dove Baby、Bumble Beeも上昇ブランドとして名前が挙がっています。
ClaudeとOpenAIの上昇について、YouGovは四半期中のマーケティングと製品投入を要因として挙げています。Anthropicは初のスーパーボウル広告でClaudeが広告を掲載しない方針を打ち出し、同時期にClaude Cowork、Claude Design、新モデルを投入して利用上限も引き上げました。OpenAIはCodexを軸としたスーパーボウル広告を展開し、ChatGPTの標準モデルを継続的に改良したとされています。
読み方の注意:Google AssistantとREIが示す「これはAIの物語ではない」
Jarboe氏は、このランキングをAI企業の勝利として単純に読むことへの注意も促しています。
ひとつはGoogle Assistantです。同ブランドのConsiderationは8.1%から15.8%へ上昇しましたが、Jarboe氏はこれを巧みなブランド戦略の成果ではなく、Google I/OでのGemini関連発表や新しいスマートスピーカーの投入といったエコシステム全体の動きに引きずられた「名前の残存認知」によるものだと分析しています。プラットフォームの移行期に、旧来のブランド名が周辺の話題によって押し上げられた形です。
もうひとつはREIです。同社の上昇は、季節性の高いアウトドア需要、6,000点超を対象とした年間最大級の5月セール、ライフスタイル系メディアでの露出によるものだとされています。Jarboe氏はこれを、今回のランキングが「実は隠れたAIの物語」ではないことの証拠だとし、上昇の要因は季節性、販促費、カテゴリー需要であってGEO(生成エンジン最適化)の施策ではないと指摘しています。つまり、広いチャネルでのブランド構築は依然として消費者の検討行動を動かしており、しかもコンテンツ最適化よりも速く効くことがある、という読み方です。
背景と影響:AIアシスタントへの信頼は28%、検索エンジンとは42ポイント差
記事がもうひとつの軸として置いているのが、信頼の数字です。Jarboe氏は、YouGovが19市場で実施した検索行動調査「The New Search Journey: How AI Is Changing Online Discovery」を引き、AIアシスタントから得た情報を信頼すると答えた米国の検索利用者は28%にとどまり、検索エンジンを信頼する70%に対して42ポイントの開きがあると報じています。同調査ではAI検索の利用率でも米国が19市場中で最も低い48%で、インド、インドネシア、UAEの89%、英国の54%と比べて差があるとされています。
ここで重要なのは、2つの数字が見ている対象が違うという点です。28.1%というClaudeのConsiderationは米国Z世代成人が対象で、28%という信頼の数字は米国の検索利用者全体が対象です。Jarboe氏はこの2つを並べたうえで「Z世代は見たところClaudeやOpenAIから購入することを検討する。しかし、どちらかに事実に基づく答えを委ねる用意がある米国人全体の割合は、はるかに小さい」と述べ、「検討と信頼は同じ通貨ではない(Consideration and trust are not the same currency.)」と整理しています。そして、この差はAIプラットフォームを軸にGEO戦略を組み立てようとする担当者にとって「本当に居心地の悪いギャップ」だとしています。
この構図は、AI検索が既存の検索を置き換えるのではなく、その上に重なっているという見方とも整合します。Similarwebの調査ではChatGPT利用者の95%がGoogleも併用し続けていたと報じられており、詳しくはAI検索はGoogleを置き換えず「上に重なっている」――Similarwebの38ページ報告で解説しています。ブランドとしての人気が高まることと、そのブランドの回答が事実として信頼されることは、別々に進んでいるということになります。
サイト運営者・マーケターがやるべきこと
Jarboe氏は記事の後半で「3 Ways To Work The Gap(ギャップを活かす3つの方法)」として実務者向けの示唆を挙げています。自社のGEO施策やコンテンツ戦略に落とし込む際は、次の点を確認しておくとよさそうです。
1点目は、「AI可視性」をひとつの指標として扱うのをやめることです。Jarboe氏は、自社の想定読者が使っているAIプラットフォームそのもののブランド認知や購入検討率と、自社コンテンツが実際に信頼されて引用されているかどうかを、別々のシグナルとして追跡すべきだとしています。社内のレポートで両者が混ざっていないか、指標の定義を見直しておく価値があります。
2点目は、消費者の検討行動を動かした要因を正しく捉えることです。今回のランキングで数値を動かしたのはGEOの施策ではなく、有料メディア、季節性の高いキャンペーン、アーンドメディアでの報道露出だったと記事は整理しています。AI時代の施策をコンテンツ最適化だけに閉じず、広いチャネルでのブランド構築を並行して設計する必要があるということです。
3点目は、埋めるべきギャップを「認知」ではなく「信頼」に定めることです。Jarboe氏は、コンテンツとPRの戦略を信頼のギャップを埋める方向に組み立てるべきだとし、実名の情報源、検証可能なデータ、透明性のある方法論こそが、YouGov自身の信頼調査が示す「28%」という数字を動かす要素だと述べています。これはE-E-A-Tの考え方とも重なる方向性です。
あわせて、Z世代の購入検討率が伸びたからといって、AI経由の流入や引用がただちに増えるとは限らない点も押さえておきたいところです。ブランド指標の上昇はあくまで消費者側の態度変化であり、自社サイトの成果指標とは切り分けて評価する必要があります。
所感
運営者としては、今回の記事の価値は個別の数値そのものよりも、「同じAIという話題について、まったく違う方向を向いた2つの数字が同時に成り立っている」ことを可視化した点にあると捉えています。ブランドとしての勢いを示す28.1%と、情報源としての信頼の低さを示す28%が並んでいる状況は、AI検索まわりの施策を提案・報告する際の説明の難しさをそのまま表しています。
実務上は、AIプラットフォームの人気上昇をそのまま「AI検索対策を急ぐべき根拠」として使うと、論拠として弱くなりがちです。Jarboe氏が「検討はスタートゲートであってゴールラインではない(Consideration is a starting gate, not a finish line.)」と結んでいるとおり、ブランド指標と引用・流入の実績は分けて追い、後者を動かす打ち手として一次データや実名の情報源といった信頼性の要素を積み上げていくのが、現時点では堅実な進め方だと考えます。
まとめ
・YouGovの分析で、米国Z世代成人におけるClaudeの購入検討率が2026年第1四半期の14.2%から第2四半期は28.1%へほぼ倍増し、OpenAIも10.1%から22.1%(伸び率118.8%)へ上昇した
・YouGov BrandIndexは2,000超のブランドを日次追跡しており、今回の分析はZ世代(1997〜2012年生まれ)の成人を対象に、最低300サンプル・135日以上の追跡・第2四半期15%以上といった条件で抽出されている
・上昇ブランドにはJohnnie Walker(7.5%→20.0%)やREI(9.0%→17.2%)も含まれ、記事はランキングがAI企業だけの物語ではないと指摘している
・一方、YouGovの19市場調査では、AIアシスタントの情報を信頼する米国の検索利用者は28%で、検索エンジンの70%と42ポイントの差がある
・記事は「検討と信頼は同じ通貨ではない」として、AIプラットフォームのブランド指標と自社コンテンツが信頼される度合いを別々に追跡し、信頼のギャップを埋める方向に戦略を組むよう提案している
よくある質問
Q1: YouGovの「Consideration」とは何を測った指標ですか?
YouGov BrandIndexが日次調査で測定している指標のひとつで、そのブランドから購入を検討すると答えた回答者の割合を示すものだと同社は説明しています。今回の分析では、米国のZ世代成人(1997年から2012年生まれで18歳以上)を対象に、2026年第1四半期と第2四半期のスコアが比較されました。最低300サンプルの基数、135日以上のスコア取得、第2四半期に15%以上といった条件を満たすブランドが対象とされています。
Q2: Z世代のAIブランド人気が高まれば、AI検索経由の集客も増えるのですか?
今回の調査からはそう言い切れません。購入検討率はAIプラットフォーム自体に対する消費者の態度を示す指標であり、自社サイトのコンテンツがAIに引用されるかどうかとは別の話です。記事も、AIアシスタントの情報を信頼する米国の検索利用者は28%で検索エンジンの70%と42ポイントの差があるとして、両者を「同じ通貨ではない」と整理しています。
Q3: マーケターはこの調査結果をどう実務に活かせばよいですか?
記事が挙げているのは3点です。AI可視性をひとつの指標にまとめず、プラットフォームのブランド指標と自社コンテンツが信頼される度合いを分けて追跡すること。数値を動かしたのがGEO施策ではなく有料メディアや季節キャンペーン、報道露出だった点を踏まえ、広いチャネルでのブランド構築を並行させること。そして、実名の情報源、検証可能なデータ、透明性のある方法論によって認知ではなく信頼のギャップを埋めることです。
出典:Gen Z Now Treats Claude And OpenAI Like Consumer Brands, But Trust Is Still An Issue(Search Engine Journal、Greg Jarboe氏、2026年8月7日)https://www.searchenginejournal.com/gen-z-now-treats-claude-and-openai-like-consumer-brands-but-trust-is-still-an-issue/584449/
一次情報:Brands Rising Among Gen Z in the U.S. in 2026(YouGov、2026年7月29日)https://yougov.com/en-us/articles/55235-brands-rising-among-gen-z-in-the-us-in-2026
一次情報:Searching for answers: How AI is changing online discovery in 2026(YouGov、2026年7月9日)https://yougov.com/en-us/reports/55071-us-websearch-ai-report-2026