何が起きたか:Data Manager APIがv1.8で更新、オーディエンス管理の新メソッドを追加
Google Ads Developer Blogは2026年7月30日、「Data Manager API updates: RemoveAllAudienceMembers method, ingestion field warnings, expanded address data」と題した記事を公開し、Data Manager APIの機能追加を告知しました。公式のリリースノートでは、同日付でバージョン1.8がリリースされたことが記載されています。
Search Engine Landはこの告知を受けて2026年8月3日に記事を掲載し、今回の更新を「オーディエンス管理をより賢くするもの」として紹介しています。同記事は更新の意義について「この更新は、自社データを扱う開発者にとっていくつかの摩擦点を取り除くものだ。オーディエンスの更新が簡単になり、取り込み時の問題が作業を中断せずに切り分けやすくなり、拡張された住所フィールドによってGoogleアナリティクスへユーザーデータを送る際の柔軟性が増す(The update removes several friction points for developers managing first-party data. Audience refreshes become simpler, ingestion issues are easier to troubleshoot without interrupting workflows, and the expanded address fields provide more flexibility when sending user data to Google Analytics.)」と説明しています。
前提の整理:そもそもData Manager APIとは何か
Data Manager APIは、Googleの公式ドキュメントによると、データパートナー・代理店・広告主が自社の一次データ(ファーストパーティデータ)を複数のGoogle広告関連プロダクトへ送るための、統一された取り込み用APIと位置づけられています。オーディエンスの情報とコンバージョンの情報を、単一のAPI経由でまとめて送信できる点が特徴です。
送信先(デスティネーション)として、Google広告、Googleアナリティクス、ディスプレイ&ビデオ360、キャンペーンマネージャー360、検索広告360、Googleアドマネージャーが挙げられています。扱えるデータは大きく2種類で、1つはカスタマーマッチやモバイル端末の識別子、PAIRデータといったオーディエンス系のデータ、もう1つはオフラインコンバージョンやイベントデータといったコンバージョン系のデータです。Googleアナリティクスやfirebase向けの推奨イベント・カスタムイベント、取引IDを伴うトランザクションデータの送信にも対応しているとされています。また、機密性の高いデータを保護するための「コンフィデンシャルマッチング」や暗号化の仕組みも備えているとされています。
つまり、これまで送信先ごとに個別のAPIや管理画面のインポート機能を使い分けていた作業を、1つのインターフェースに集約するための基盤であり、今回の更新はその基盤の使い勝手に関わるものと整理できます。
更新の詳細:4つの変更点
Search Engine Landの記事と公式リリースノートから確認できる今回の変更点は、次の4点です。
1つ目は、オーディエンスのメンバーをまとめて削除する新メソッド「RemoveAllAudienceMembers」の追加です。リリースノートによると、このメソッドはIngestionServiceに追加されたもので、指定したユーザーリストのメンバーをすべて削除、あるいは入れ替えるために使います。RPCリファレンスによれば、リクエストであるRemoveAllAudienceMembersRequestが持つフィールドは、送信先を指定するdestinations、削除の基準時刻を指定するremove_as_of_time、そして実際には書き込まず検証のみを行うvalidate_onlyです。remove_as_of_timeは「過去または現在でなければならず、将来のタイムスタンプは許可されない」と明記されており、指定しない場合は実行時点のメンバー全件が対象になるとされています。Search Engine Landはこの任意のタイムスタンプについて、「指定した日付より前に追加されたメンバーだけを削除できる」と説明しており、オーディエンス全体を洗い替えする作業が容易になるとしています。
2つ目は、項目単位の取り込み警告です。従来は任意項目に不正な値が含まれるとリクエストごと失敗する場面がありましたが、今回の更新により、有効なレコードは処理したうえで、問題のあった項目について詳細な警告を返すようになったと報じられています。リリースノートでは、イベントとオーディエンスの取り込みにおける詳細な警告として、レスポンスにfield_warningsフィールドが追加され、警告の理由・説明・該当する項目のパスを保持するFieldWarningというリソースと、警告の種類を表すWarningReason列挙型が新設されたことが記載されています。無効化されたカスタム変数や、販売者IDの欠落といったケースが警告の対象として挙げられています。
3つ目は、住所データの拡張です。リリースノートによると、UserDataで使われるAddressInfoに、address_line、city、administrative_areaの3つのフィールドが追加されました。Search Engine Landはこれを、氏名・郵便番号・地域といった既存のフィールドに加えて、番地、市区町村、都道府県や州にあたる情報をGoogleアナリティクス向けに送れるようになったものと説明しています。あわせて、ユーザーから提供された住所データが、複数ソースのイベントにおける識別子の要件を満たしうる点にも触れられています。なお、リリースノートではv1.8で新しいエラー理由としてINVALID_REMOVE_AS_OF_TIMEとREQUIRED_PREREQUISITE_LINK_MISSINGが追加されたことも記載されています。
4つ目は、AIエージェント向けの「スキル」の提供です。Search Engine Landは、Data Manager APIの実装を支援するAIエージェントスキルがGoogleのSkillsリポジトリで公開され、AI支援のコーディング環境で連携を組みやすくなったと伝えています。実際にgithub.com/google/skillsには「data-manager-api-setup」というスキルが置かれており、その説明には、Data Manager APIのクライアントライブラリの導入と認証設定の手順を開発者に案内するものと記されています。Google CloudプロジェクトでのAPI有効化、アプリケーションのデフォルト認証情報(ADC)と必要なスコープの設定、Python・Java・Node・PHP・.NETといった言語ごとのライブラリ導入が対象で、オーディエンスやイベントの取り込みロジックそのものは対象外として、別のスキルに委ねられていると明記されています。Google広告APIについてもエージェントスキルの解説ページが用意されています。
背景:段階的に機能を広げてきたData Manager API
今回の更新は突発的なものではなく、リリースノートを見ると、Data Manager APIは2026年に入ってから継続的に対応範囲を広げてきたことが分かります。
2026年2月17日のv1.5では、オーディエンスのライフサイクル管理一式、ユーザーIDのサポート、パートナーリンク関連のサービスが加わりました。2026年5月7日のv1.6では、Google広告の店舗販売コンバージョン、Googleアナリティクスのカスタムイベント対応の強化、クーポンコードの計測が追加されています。2026年5月28日のv1.7では、キャンペーンマネージャー360・検索広告360・ディスプレイ&ビデオ360向けのオフラインコンバージョンイベント、複合的なデータのサポート、IPアドレスの取り込みが加わりました。
こうした流れを踏まえると、v1.5で整備されたオーディエンス管理の機能に対して、v1.8で「全件を消す」という運用上必ず必要になる操作が補完された形と読み取れます。Search Engine Landは記事のまとめで、「今回のData Manager APIのリリースは、オーディエンス管理を効率化し、エラー処理を改善し、データ収集の対応範囲を広げるもので、Google広告、ディスプレイ&ビデオ360、Googleアナリティクスをまたいで顧客データを管理するための、より効率的な手段を開発者に提供する(The latest Data Manager API release streamlines audience management, improves error handling and expands data collection capabilities, giving developers more efficient tools for managing customer data across Google Ads, Display & Video 360 and Google Analytics.)」と評価しています。
なぜ重要か:広告主とデータ担当者への影響
広告主側の実務にとって、今回の更新が持つ意味は主に3つに整理できます。
1つ目は、オーディエンスの洗い替え作業の負荷が下がる可能性です。これまでカスタマーマッチのリストを入れ替える際は、削除したいメンバーを特定して送る必要がありましたが、RemoveAllAudienceMembersでは「どこから消すか」を指定すれば足りるため、リストを定期的に作り直す運用が組みやすくなります。remove_as_of_timeを使えば、一定時点より前に追加された古いメンバーだけを整理するという使い方も想定できます。
2つ目は、データ品質の可視性が上がることです。項目単位の警告が返るようになると、「なぜ一部のデータだけが反映されていないのか」を、リクエスト全体の成否ではなく項目レベルで追えるようになります。連携が止まらないまま問題箇所だけを把握できるため、原因の切り分けが現実的な作業量に収まりやすくなります。
3つ目は、自動入札やキャンペーン運用の前提となる入力データの精度に関わる点です。Google広告では、リード獲得の全工程を可視化するLead Journey Mappingのように、コンバージョンデータの質を高めることを狙った機能が相次いで登場しています。また、P-MaxやDemand Genで推奨予算を提示するBudget Panelのような自動化の支援機能も同様ですが、いずれも入力となるデータの正確さが前提になります。Data Manager APIの改善は、その入力側を整えるための基盤整備という位置づけで捉えるのが妥当です。
今日からできる確認手順
自社でData Manager APIを利用している、あるいは利用を検討している場合、次の点を確認しておくと今回の更新を取り込みやすくなります。
1点目は、現在利用しているAPIのバージョンと、公式のリリースノートを突き合わせることです。v1.8で追加されたメソッドやフィールドを使うには、クライアントライブラリの更新が必要になる場合があります。
2点目は、オーディエンスの洗い替え処理を自前で実装している場合に、RemoveAllAudienceMembersへの置き換えで簡素化できる箇所がないかを棚卸しすることです。ただし全件削除は影響範囲の大きい操作のため、validate_onlyによる検証実行を挟む運用を前提に検討することをおすすめします。
3点目は、取り込み処理のログ設計を見直し、レスポンスに含まれるfield_warningsを記録・監視する仕組みを用意することです。警告は処理を止めないため、意識して残さないと見過ごされる情報になります。
4点目は、Googleアナリティクス向けにユーザーデータを送っている場合に、自社が保有する住所情報のうち、新たに対応した項目に該当するデータがあるかを確認することです。あわせて、送信するデータの範囲について、社内のプライバシーポリシーや各種同意取得の状況と整合しているかを事前に確認しておく必要があります。
所感
運営者としては、今回の更新は派手さこそないものの、実務者にとっては歓迎すべき内容だと捉えています。とくに項目単位の警告は、これまで「なぜか一部のデータが入らない」という形で現れがちだった問題を、切り分け可能な情報として返すようにする変更であり、運用の再現性を高める効果が期待できます。
一方で、RemoveAllAudienceMembersのような全件削除の操作は、便利であると同時に事故のリスクも伴います。誤って本番のオーディエンスを消してしまえば、配信規模や学習に影響が出る可能性があるため、実行権限の管理と検証手順をセットで設計しておくことが重要です。API側が便利になるほど、運用ルール側の整備が問われる場面が増えるという点は、意識しておきたいところです。
まとめ
・Google Ads Developer Blogが2026年7月30日にData Manager APIの更新を告知し、公式リリースノートではv1.8として記載されている
・オーディエンスのメンバーを1回の呼び出しで全件削除できるRemoveAllAudienceMembersメソッドがIngestionServiceに追加され、任意のremove_as_of_timeで基準時刻を指定できる
・取り込み時に項目単位の警告を返すfield_warningsとFieldWarning、WarningReasonが追加され、有効なレコードを処理しつつ問題箇所を把握できるようになった
・UserDataのAddressInfoにaddress_line、city、administrative_areaが追加され、Googleアナリティクス向けの住所データの粒度が上がった
・GoogleのSkillsリポジトリにData Manager APIの導入・認証設定を支援するAIエージェントスキルが公開されている
よくある質問
Q1: Data Manager APIとはどのようなAPIですか?
公式ドキュメントによると、データパートナー・代理店・広告主が自社の一次データを複数のGoogle広告関連プロダクトへ送るための、統一された取り込み用APIです。送信先としてGoogle広告、Googleアナリティクス、ディスプレイ&ビデオ360、キャンペーンマネージャー360、検索広告360、Googleアドマネージャーが挙げられており、カスタマーマッチなどのオーディエンスデータと、オフラインコンバージョンなどのイベントデータを単一のAPIで送信できます。
Q2: RemoveAllAudienceMembersでは何ができますか?
指定したユーザーリストのメンバーをすべて削除、あるいは入れ替えるためのメソッドで、リリースノートによるとIngestionServiceに追加されました。リクエストには送信先を指定するdestinations、削除の基準時刻を指定するremove_as_of_time、検証のみを行うvalidate_onlyがあります。remove_as_of_timeは過去または現在の時刻でなければならず、将来のタイムスタンプは許可されません。Search Engine Landは、この任意のタイムスタンプにより指定日より前に追加されたメンバーだけを削除できると説明しています。
Q3: 項目単位の取り込み警告とは何ですか?
任意項目に不正な値が含まれていた場合に、リクエスト全体を失敗させるのではなく、有効なレコードを処理したうえで問題のある項目について警告を返す仕組みです。リリースノートでは、レスポンスにfield_warningsフィールドが追加され、警告の理由・説明・該当項目のパスを持つFieldWarningリソースと、警告の種類を表すWarningReason列挙型が新設されたと記載されています。無効化されたカスタム変数や販売者IDの欠落などが警告の対象として挙げられています。
出典:Google expands Data Manager API with smarter audience management(Search Engine Land、Anu Adegbola氏、2026年8月3日)https://searchengineland.com/google-expands-data-manager-api-with-smarter-audience-management-484191
一次情報:Data Manager API updates: RemoveAllAudienceMembers method, ingestion field warnings, expanded address data(Google Ads Developer Blog、2026年7月30日)https://ads-developers.googleblog.com/2026/07/data-manager-api-updates.html