何が起きたか:Google広告の顧客獲得設定に計測専用の選択肢が追加
Search Engine Roundtableの記事「New Google Ads Report On New Customers Acquired」によると、Google広告は「Report on new customers acquired」という新しい顧客獲得オプションの展開を進めているとされています。記事はGoogleの説明として「Drive purchases from new and existing customers without changing bidding(入札を変更せずに、新規顧客と既存顧客の両方から購入を促進する)」という一文を伝えています。
この機能はVasant Chaudhary氏が発見し、Thomas Eccel氏が同氏をクレジットしたうえでLinkedInに投稿したことで広まったと報じられています。Eccel氏は投稿の中で「Now Google added a reporting setting: Report on new customers acquired = just measurement, no bidding algo impact. You get the New customers and New customer value columns.(Googleがレポート用の設定を追加した。Report on new customers acquiredは計測のみで、入札アルゴリズムへの影響はない。New customersとNew customer valueの列が使えるようになる)」と述べています。つまりこの設定を有効にすると、新規顧客の件数と価値が独立したレポート列として得られるということです。
管理画面の詳細:顧客獲得の選択肢は3つに
Eccel氏が公開し、Search Engine Roundtableが掲載したスクリーンショットでは、Google広告の「Customer acquisition(顧客獲得)」設定に「Optimise for new customers(新規顧客に最適化する)」というチェックボックスがあり、その下に3つの選択肢が並んでいます。
1つ目は「Bid higher for new customers (recommended)(新規顧客に対してより高く入札する/推奨)」で、すべての顧客にリーチして全体の購入を促進しながら新規顧客の獲得を支援する、と説明されています。2つ目は「Only bid for new customers(新規顧客に対してのみ入札する)」で、入札戦略にかかわらずキャンペーンを新規顧客のみに限定する、とされています。
そして3つ目が今回追加された「Report on new customers acquired」で、スクリーンショット上では新しい項目として強調表示されています。つまり従来は「入札を新規顧客寄りに変える」二択しかなかったところに、「入札は変えずレポートだけ取る」という第三の選択肢が加わった構成です。
なお、この新オプションがどのキャンペーンタイプで利用できるのか、どの範囲まで展開が進んでいるのかについて、報道記事では明示されていません。全アカウントへの提供状況も現時点では確認できないため、自社アカウントで表示されているかどうかを個別に確かめる必要があります。
これまでの「0.01」回避策と、何が変わるのか
Eccel氏の投稿によると、これまで新規顧客と既存顧客の内訳をレポートで見たい運用者は、入札を実質的に変えないまま計測だけを得るために独特の回避策を使っていたとされています。同氏は「Remember the hack? To get the new vs existing customer split without changing your bidding, you had to pick “Bid higher for new customers” and set the value to 0.01.(あの裏技を覚えているだろうか。入札を変えずに新規顧客と既存顧客の内訳を得るには、「Bid higher for new customers」を選び、値を0.01に設定する必要があった)」と説明しています。
つまり本来は入札を変えるための設定を選んだうえで、新規顧客に上乗せする価値をほぼゼロに等しい0.01にすることで、入札への実害を最小化しつつレポート列だけを解放するという運用でした。Eccel氏はこれを「Technically it changed bidding. Practically it changed nothing.(技術的には入札を変えていた。実務上は何も変えていなかった)」と表現しています。
同氏はさらに、今回の設定が「0.01の”回避策”を置き換えることになる」との見方を示しています。運用側の実務としては、入札戦略の説明とレポート設定の説明を切り分けて社内やクライアントに提示できるようになる点が大きな違いです。
背景:顧客ライフサイクル目標と「新規顧客」の判定条件
今回のオプションは、Google広告が提供する顧客ライフサイクル目標(customer lifecycle goals)の枠組みの中に位置づけられます。Google公式ヘルプ「About customer lifecycle goals」によると、顧客ライフサイクル目標は「新規顧客の獲得目標(New customer acquisition goal)」と「維持目標(Retention goal)」の2つのカテゴリに分かれ、いずれもスマート自動入札(Smart Bidding)によって動作すると説明されています。
同ヘルプが表形式で示しているモードは、本稿執筆時点では3つです。「New Customer Value Mode(Bid higher for new customers than existing ones)」は検索・P-MAX・ショッピング・デマンドジェネレーションが対象で、目標広告費用対効果(Target ROAS)などの価値ベース入札とあわせて使い、少なくとも1つの購入コンバージョン目標が必要とされています。「High Value New Customer Mode」はP-MAXと検索が対象です。「New Customer Only Mode(Only bid for new customers)」はすべての入札戦略で利用でき、購入コンバージョン目標は必須ではないものの正確なレポートのために推奨されると記載されています。
ここで注意したいのは、本稿執筆時点で参照した同ヘルプページに「Report on new customers acquired」という記述は見当たらないという点です。管理画面が先行し、公式ドキュメントの更新が追いついていない段階とみられます。仕様の詳細はGoogleの正式なドキュメント更新を待つ必要があります。
また「新規顧客」の判定そのものは、コンバージョントラッキングのタグ側で渡すパラメータに依存します。Google公式ヘルプ「Set up new customer acquisition parameter in your conversion tracking tag」によると、new_customerパラメータはTrue/False/未指定のいずれかを取り、Trueは「指定期間内に購入していない新規顧客」を意味します。同ページには「540-day lapse window recommended and set at default, but not required(540日の離脱期間が推奨かつ既定値として設定されているが、必須ではない)」、また文字列で渡すcustomer_typeパラメータについても「再訪顧客に対してGoogleが自動検出する期間は540日」と記載されています。ゲスト購入などで判別できない場合は未指定を送る想定である点も明記されています。
広告主・サイト運営者がやるべきこと
まず確認すべきは、自社アカウントの該当キャンペーンで「Report on new customers acquired」が選択肢として表示されているかどうかです。表示されていない場合は、従来どおりの構成のまま様子を見ることになります。
次に、現在「Bid higher for new customers」を選んだうえで新規顧客の価値に0.01を設定しているキャンペーンがないかを棚卸ししてください。計測目的だけで設定していたのであれば、新オプションが利用可能になった段階で置き換えの候補になります。ただし切り替えは入札設定の変更として記録されるため、前後の期間で成果を比較できるよう変更日を必ずメモしておくことをおすすめします。
そして、新規顧客の判定を支えているのはタグ側のパラメータであるという点も見落とせません。new_customerまたはcustomer_typeが実際に送信されているか、購入完了ページで値が正しく切り替わっているかを、ブラウザの開発者ツールやタグ管理ツールのプレビューで確認しておくと、レポートを開いた際に列が空になる事態を避けられます。この「計測の器を先に整える」考え方は、リード獲得の全工程を可視化するツールとしてGoogleが公開したLead Journey Mappingのヘルプとも通じるところがあります。
あわせて、新規顧客の獲得件数と価値が独立した列として見えるようになれば、キャンペーン単位の増額判断の根拠も変わり得ます。P-MAXやデマンドジェネレーションについては推奨予算を最大3段階で示す「Budget Panel」も報じられており、レポートの粒度と予算提案の両面が同時に動いている点は押さえておきたいところです。
今日からできる確認手順
1点目は、キャンペーン設定の「Customer acquisition」セクションを開き、選択肢が2つのままか3つに増えているかを目視で確認することです。アカウントやキャンペーンタイプによって表示が異なる可能性があるため、主要なキャンペーンを一通り見ておくと安全です。
2点目は、レポート画面の列設定で「New customers」「New customer value」が追加できる状態かを確かめることです。列が追加できても値が入らない場合は、設定側ではなくタグ側の実装を疑うのが定石です。
3点目は、Google公式ヘルプの更新を定期的に確認することです。本稿執筆時点では公式ドキュメントに新オプションの記載が確認できないため、対象キャンペーンタイプや必要な前提条件が後から明文化される可能性があります。
所感
運営者としては、今回の変更は機能追加そのものよりも「計測と入札を分離できるようになった」という設計上の意味が大きいと捉えています。0.01の回避策は、入札を変えないための設定でありながら形式上は入札設定を触るという矛盾を抱えており、レポートを受け取る側から見れば説明の難しい構成でした。計測専用の選択肢が用意されることで、成果報告の透明性は確実に上がります。
一方で、切り替えを急ぐ必要はないとも考えています。報道段階では対象キャンペーンタイプも展開範囲も明示されておらず、公式ヘルプの記載も確認できていません。既存の設定が実務上問題なく機能しているのであれば、公式ドキュメントの更新と自社アカウントでの表示を確認してから、変更日を記録したうえで移行するのが堅実です。設定変更それ自体が成果を押し上げるものではない点は、社内説明でも明確にしておきたいところです。
まとめ
・Search Engine Roundtableが、Google広告の顧客獲得設定に「Report on new customers acquired」という新オプションが展開されつつあると報じた
・Googleの説明は「Drive purchases from new and existing customers without changing bidding」で、入札を変更せずに新規顧客と既存顧客を分けて計測する設定とされている
・有効にすると「New customers」「New customer value」というレポート列が利用可能になるとThomas Eccel氏が説明している
・従来は「Bid higher for new customers」を選び価値を0.01に設定する回避策が使われていたが、今回の正規オプションがこれを置き換えるとみられている
・本稿執筆時点でGoogle公式ヘルプに新オプションの記載は確認できず、対象キャンペーンタイプや展開範囲も報道では明示されていない
よくある質問
Q1: 「Report on new customers acquired」は入札に影響しますか?
Thomas Eccel氏はLinkedInで「just measurement, no bidding algo impact(計測のみで、入札アルゴリズムへの影響はない)」と説明しており、Googleの設定文言も「入札を変更せずに」と記載されていると報じられています。ただしGoogle公式ヘルプでの記載は本稿執筆時点で確認できていないため、詳細な仕様は公式ドキュメントの更新を待つ必要があります。
Q2: これまで使われていた「0.01」の回避策とは何ですか?
新規顧客と既存顧客の内訳をレポートで見るために、「Bid higher for new customers」を選んだうえで新規顧客に上乗せする価値を0.01という極めて小さい値に設定する運用です。Eccel氏はこれを「技術的には入札を変えていたが、実務上は何も変えていなかった」と表現しており、今回の新オプションが置き換えることになるとしています。
Q3: この設定を有効にすると何が見られるようになりますか?
報道によると「New customers(新規顧客)」と「New customer value(新規顧客の価値)」というレポート列が利用可能になります。ただし新規顧客の判定はコンバージョンタグ側のパラメータに依存し、Google公式ヘルプではnew_customerやcustomer_typeを送信すること、再訪顧客の自動検出期間が540日であることが説明されています。
出典:New Google Ads Report On New Customers Acquired(Search Engine Roundtable、Barry Schwartz氏、2026年8月7日)https://www.seroundtable.com/google-ads-report-on-new-customers-acquired-41832.html
参考:Thomas Eccel氏のLinkedIn投稿https://www.linkedin.com/posts/thomaseccel_ppc-googleads-share-7490707193697161216-kp_m//About customer lifecycle goals(Google広告ヘルプ)https://support.google.com/google-ads/answer/12080169?hl=en/Set up new customer acquisition parameter in your conversion tracking tag(Google広告ヘルプ)https://support.google.com/google-ads/answer/12077475?hl=en