何が起きたか:OKF v0.2で5つの信頼シグナルが追加された
Search Engine Journalの記事(見出し:「Google’s Open Knowledge Format Adds Five Trust Signals(GoogleのOpen Knowledge Formatが5つの信頼シグナルを追加)」)によると、Googleはオープン・ナレッジ・フォーマットの更新版であるバージョン0.2を発表しました。記事は、この新バージョンが「OKFの利用側(consumer)がOKFバンドルについて5つの側面を検証するために使える、5つの信頼関連機能」を追加したものだと説明しています。
記事が挙げている5つの信頼シグナルと、それに対応するOKFのフィールドおよび概念タイプは次のとおりです。Provenance(field: sources)、Trust(fields: generated, verified)、Freshness(field: stale_after)、Lifecycle(field: status)、Attestation(new concept type: Attested Computation)。5つのうち4つは既存の概念に付け足す「フィールド」ですが、最後のAttestationだけはフィールドではなく新しい「タイプ」である点が特徴です。
記事によれば、Googleの発表はこの5つのシグナルを、OKFバンドルに対する5つの問いに答えて信頼を確立するもの、と位置づけています。その5つの問いは、「これは何から作られたのか?(provenance) これはどの程度信頼できるのか?(trust) それはまだ正しいのか?(freshness) これは現行バージョンなのか?(lifecycle) この数値は、そうすべきと決めた方法で算出されたのか?(attestation)」(“What was this created from? (provenance) How much should I trust it? (trust) Is it still true? (freshness) Is it the current version? (lifecycle) Was this number produced the way we said it must be? (attestation)”)というものです。
そもそもOpen Knowledge Format(OKF)とは何か
Search Engine Journalの記事はOKFそのものの定義には踏み込んでいないため、ここではGoogleが同時に公開した公式発表(Google Cloud公式ブログ、2026年7月25日付、Sam McVeety氏・Amir Hormati氏)の記述で補足します。OKFは、データ資産に関する構造化された知識を共有するための、標準化されたベンダー中立のフォーマットです。公式発表は「エージェントが必要とするコンテキスト(テーブルのスキーマ、指標の定義、運用手順書)は、専有サービスの中でも、非構造のテキスト塊の中に散らばった状態でもなく、フォーマットの中に置かれるべきだ(“The context that agents need (table schemas, metric definitions, runbooks) should live in a format, not in a proprietary service, and not scattered across unstructured text blobs.”)」と説明しています。
2026年6月に公開された最初のバージョンv0.1は、「マークダウンとYAMLフロントマター、そしていくつかの取り決めだけ(“just markdown, YAML frontmatter, and a handful of conventions”)」でできた、きわめて軽量な仕様でした。実体はディレクトリとテキストファイルの集合で、公式発表の例では、概要と変更履歴のindex.mdとlog.md、テーブル定義を置くtables/、売上や粗利といった指標の定義を置くmetrics/、計算方法を置くcomputations/、実行手段を置くskills/、検証ロジックを置くattesters/、業務ルールを置くpolicies/といったフォルダで一式(バンドル)が構成されています。
ここで押さえておきたいのは、OKFがSchema.orgのボキャブラリやJSON-LDのような、ウェブページの内容を検索エンジンに説明するための構造化データとは別物だという点です。構造化データが「公開ページの内容を検索エンジンに伝える」ためのものであるのに対し、OKFが扱うのは社内のテーブル定義や指標の定義といったデータ資産の意味であり、その受け手として想定されているのはAIエージェントやLLM、アプリケーションです。名称に「知識(Knowledge)」とあるためナレッジグラフや構造化データと混同されやすいのですが、少なくとも今回の報道の範囲では、検索結果の見え方を直接操作するための仕様としては説明されていません。
詳細①:出所(Provenance)と信頼(Trust)――sources・generated・verified
1つ目のProvenance(プロヴェナンス/出所)では、新しく「sources」フィールドが導入されました。記事によれば、これは概念の中の情報がどこから来たのかを記録するもので、利用側がそれを作るのに使われた元の情報源を特定できるようにします。Googleはこのフィールドについて、「新しいsourcesフィールドは、その概念が由来する素材を記録する。外部のドキュメントかもしれないし、バンドル内の相対パスかもしれないし、あるいは『プロジェクトXの全クエリ』のようなスコープ記述子かもしれない(“The new sources field records the materials a concept derives from: an external doc, a bundle-relative path, or even a scope descriptor like ‘all queries in project X.'”)」と説明しています。
注目すべきは、Googleが意図的に「信頼度スコア」を持ち込まなかった点です。記事は「OKFはシグナルを記録するのであって、信頼度スコアを記録するのではない。スコアは主観的で、利用側をまたいで持ち運べず、すぐに古くなる(“OKF records the signals, not a credibility score. A score is subjective, doesn’t port across consumers, and goes stale.”)」というGoogleの説明を引用しています。記事はあわせて、信頼性のシグナルは記録されるがスコア化はされず、利用頻度や更新日といった要素に基づいて利用側が動的に信頼性を評価できるようにしている、と補足しています。公式発表の例では、sourcesの各項目にauthor(作成者)、usage_count(利用回数)、last_modified(最終更新日)といった客観的な値が並びます。
2つ目のTrust(信頼)は、generatedとverifiedという2つのフィールドで構成されます。記事によれば、「generated」フィールドは誰がその概念を作成したかを記録し、「verified」フィールドは誰がそれを独立して確認したかを記録します。そして、利用側(AIエージェント、LLM、あるいはアプリケーション)は、この検証情報を使って、未検証か、機械が確認したものか、人間がレビューしたものか、という基準で概念を絞り込めるとしています。公式発表では、verifiedキーが無ければ未検証(unverified)、機械のアクターだけが確認していれば機械確認済み(machine-confirmed)、human:から始まるアクターが確認していれば人間レビュー済み(human-reviewed)という「信頼ティア(trust tier)」を利用側が導出できると説明されています。
詳細②:鮮度(Freshness)・状態(Lifecycle)・証明(Attestation)
3つ目と4つ目のFreshnessとLifecycleは、statusとstale_afterという2つのフィールドで扱われます。記事の説明では、statusフィールドは概念がライフサイクルのどの段階にあるかを伝えるもので、利用側は下書き(draft)なのか、現行(current)なのか、それとも古くなった非推奨(deprecated)なのかを判別できます。stale_afterフィールドは、その日付を過ぎたら使用前に再検証すべきという期限を指定します。記事は、利用側がこれらのフィールドを使って再検証が必要な概念を洗い出したり、古い概念を新しい作業から除外しつつ過去の参照用には残したりできる、としています。
5つ目のAttestation(アテステーション/証明)は、前の4つとは性質が異なります。記事は「Attested Computationはフィールドではなく、新しいタイプ(Type)である」と明記しています。Attested Computationは、ある値を計算する際の承認された方法を定義し、その計算が本来意図されたとおりに実行されたことを検証する手段を提供するものです。
Googleの公式な説明は、この違いを次のように述べています。「Provenanceは、その主張がどこから来たのかに答える。Attestationはもっと難しい問い、すなわちエージェントが金額を報告した瞬間に問題になる問いに答える。この数値は、そうすべきと決めた方法で算出されたのか、それともエージェントが独自のSQLを即興で書いたのか?(“Provenance answers where a claim came from. Attestation answers a harder question that matters the moment an agent reports a dollar figure: was this number produced the way we said it must be, or did the agent improvise its own SQL?”)」。記事は続けて、OKF v0.2が導入するこの新しい概念タイプは、値が何を意味するかだけでなく、それを計算するための公認された方法と、その公認されたものが実際に実行されたことを確認する手段までを備えている、と説明しています。
背景:エージェントが1万件の定義を一晩で書く時代に何が壊れたか
なぜ今このような信頼シグナルが必要になったのかについて、Google Cloudの公式発表は率直な理由を挙げています。「人間が書いたwikiページには暗黙の保証が付いてくる。人がそれを書いたのであり、間違っていればその人に責任を問うことができる。エージェントが一晩で1万件の概念を生成するとき、その保証は失われる(“A human-authored wiki page comes with an implicit guarantee: a person wrote it, and you can hold them accountable if it is wrong. When an agent generates ten thousand concepts overnight, that guarantee is gone.”)」というものです。
つまり、AIエージェントがドキュメントを書き、別のAIエージェントがそれを読んで意思決定や集計を行う流れが現実になった結果、「誰が書いたのか」「誰が確かめたのか」「いつまで有効か」を人間の記憶や暗黙知に頼れなくなった、ということです。今回追加された5つのシグナルは、その暗黙の保証を機械可読な形に置き換える試みだと整理できます。なお公式発表によれば、v0.2は後方互換で、追加されたフィールドはすべて任意項目のため、v0.1のバンドルはそのままv0.2として通用するとされています。
Search Engine Journalの記事は最後に、Googleがこの更新を反映するためにGitHubリポジトリを更新し、解説にあたる発表を公開したと伝えています。仕様書はGoogleCloudPlatform/knowledge-catalogリポジトリのokf/SPEC.mdで公開されています。
実務への影響:SEO・PPC・GEO運用のどこに効くか
まず正確に押さえておきたいのは、今回のSearch Engine Journalの記事には、AI Overviews(AIによる概要)やAI Mode、ChatGPTといったAI検索サービスへの言及が一切ないという点です。記事が「利用側(consumer)」として挙げているのはAIエージェント、LLM、アプリケーションであり、OKFのバンドルはウェブ上の公開ページではなく、社内のデータ資産の定義を運ぶものとして描かれています。したがって現時点では、「OKFを書けばAI検索に引用されやすくなる」といった因果関係は、原文のどこにも書かれていません。この点を取り違えると、成果の出ない施策に工数を割くことになります。
そのうえで、SEO・PPC・GEOの実務者にとって意味があるのは、Googleが「機械が生成した情報をどう信頼するか」に対して示した設計の考え方そのものです。出所を記録するがスコアは付けない、作成者と検証者を分けて記録する、有効期限を絶対日付で持つ、古い定義は消さずに非推奨として残す、数値は計算方法まで含めて再現可能にする。これらは、AIが生成した情報の信頼性を担保するために必要な要素を、Googleが自ら列挙したものと読めます。
身近な応用先としては、まず社内のレポーティング基盤が挙げられます。広告やSEOのレポートをAIに要約させる運用が広がるなか、「このコンバージョン数の定義は誰がいつ作り、誰が確認し、いつまで有効なのか」を人間の申し送りではなくファイルに書いておく発想は、OKFを採用しなくても取り入れられます。指標の定義が担当者の頭の中にしかない状態は、インハウスと代理店で分業している体制では特に事故を招きやすい部分です。
所感
ここからは記事本文にはない、Scale Basics編集部の見解です。今回のニュースで最も重要なのは、追加された5つのフィールドの名前を覚えることではなく、「AIが書いた情報をAIが読む」前提で信頼をどう設計するか、というGoogleの答えが公開された点だと考えています。出所は記録するがスコアは付けない、という判断は特に示唆的です。スコアは主観的で持ち運べず古くなる、という理由づけは、被リンクやドメイン評価を単一の数値で語りたがる私たちの業界にも、そのまま跳ね返ってくる指摘だと感じます。
日本の事業会社と代理店の分業体制に引き付けると、実務的な学びは「定義とレビュー記録をコンテンツと同じ場所に置く」ことに尽きます。指標の定義書がスプレッドシート、更新履歴がチャット、最終確認が口頭、という状態は珍しくありませんが、これはOKFが解こうとしている問題そのものです。generatedとverifiedを分ける発想、つまり「作った人」と「確かめた人」を別々に記録するという最小限のルールだけでも、記事や広告文をAIに下書きさせる現在の運用にそのまま移植できます。編集体制のE-E-A-Tを社内向けに可視化する第一歩としても有効でしょう。
一方で、この仕様がAI検索での引用可能性に直接効くと期待するのは時期尚早です。OKFはあくまでデータ分析基盤側の仕様として発表されており、公開ウェブページの評価に接続されるという説明は今回の報道にはありません。GEOやLLMO文脈で語られるのを見かけたら、まず一次情報の範囲を確認することをおすすめします。ただし、Googleが「機械生成情報の信頼性」を判定する語彙を整備し始めていること自体は、中長期的にウェブ側の評価軸にも影響し得る動きとして注視する価値があります。
まとめ
・GoogleがOpen Knowledge Format(OKF)のバージョン0.2を公開し、利用側(consumer)がOKFバンドルを検証するための5つの信頼関連機能を追加したとSearch Engine Journalが報じた
・追加されたのはProvenance(field: sources)、Trust(fields: generated, verified)、Freshness(field: stale_after)、Lifecycle(field: status)、Attestation(new concept type: Attested Computation)の5つ
・Googleは信頼度スコアを持たせず「シグナルを記録するのであって信頼度スコアを記録するのではない」と説明し、利用側が利用頻度や更新日から自ら評価できる設計にしている
・Attested Computationだけはフィールドではなく新しいタイプで、値の意味に加えて公認された計算方法と、それが実際に実行されたことを確認する手段を持つ
・OKFはデータ資産の知識をAIエージェント間で受け渡すためのフォーマットで、記事にはAI OverviewsやChatGPTなどAI検索サービスへの言及はない
よくある質問
Q1: Open Knowledge Format(OKF)はSchema.orgの構造化データと同じものですか?
別物です。Search Engine Journalの記事はOKFの定義そのものには踏み込んでいませんが、Googleの公式発表によれば、OKFはデータ資産に関する構造化された知識を共有するための標準化されたベンダー中立のフォーマットで、マークダウンとYAMLフロントマターで記述されます。テーブルのスキーマや指標の定義、運用手順書といった、AIエージェントが必要とするコンテキストを運ぶことを目的としており、公開ウェブページの内容を検索エンジンに説明する構造化データとは想定される読み手も用途も異なります。
Q2: OKF v0.2で追加された5つの信頼シグナルは具体的に何ですか?
記事が挙げているのは、Provenance(field: sources)、Trust(fields: generated, verified)、Freshness(field: stale_after)、Lifecycle(field: status)、Attestation(new concept type: Attested Computation)の5つです。それぞれ、これは何から作られたのか、どの程度信頼できるのか、まだ正しいのか、現行バージョンなのか、そしてこの数値はそうすべきと決めた方法で算出されたのか、という5つの問いに対応しています。最後のAttestationだけはフィールドではなく新しい概念タイプである点が他と異なります。
Q3: OKFに対応すればAI Overviewsなどで引用されやすくなりますか?
今回のSearch Engine Journalの記事には、AI OverviewsやAI Mode、ChatGPTといったAI検索サービスへの言及はありません。記事がOKFの利用側として挙げているのはAIエージェント、LLM、アプリケーションであり、OKFバンドルは公開ウェブページではなく社内のデータ資産の定義を運ぶものとして説明されています。したがって、OKFの採用がAI検索での引用可能性を高めるという因果関係は、少なくとも今回の報道の範囲では示されていません。
出典:Google’s Open Knowledge Format Adds Five Trust Signals(Search Engine Journal、Roger Montti氏、2026年7月29日)https://www.searchenginejournal.com/googles-open-knowledge-format-adds-five-trust-signals/584120/