この記事でわかること
WordPress 7.1「Mary Lou」は米国時間2026年8月19日にリリースされ、運用に最も効くのはレスポンシブスタイルのコア搭載とブラウザ内画像処理です。適用はステージングで確認してからにします。
- 01リリースの規模米国時間2026年8月19日に公開。800人を超える貢献者と170人を超える初貢献者が参加し、1500件を超える機能改善と修正が含まれます。
- 02レスポンシブスタイルサイトエディターとグローバルスタイルから、カスタムCSSなしで画面サイズごとの見た目を調整・プレビューできます。theme.jsonで独自のブレークポイントも定義可能です。
- 03ブラウザ内画像処理圧縮・リサイズ・サムネイル生成がWebAssemblyでビルドされたlibvipsによりブラウザ内で実行され、PHPのメモリ上限やタイムアウトを回避できます。
- 04AVIF・HEIC対応AVIF・HEIC・HDRゲインマップにネイティブ対応。オプトイン方式のGIFから動画への変換も加わり、画像の軽量化をコアの範囲で進められます。
- 05TabsとPlaylist新ブロックはTabsとPlaylistの2つ。管理バーは全エディターに常駐し、投稿エディターは全テーマで完全にiframe化されました。
- 06更新前の注意点iframe化と投稿一覧テーブルの構造変更は、管理画面をカスタマイズしたサイトで挙動が変わりえます。バックアップとステージング確認を経てから適用します。
何が起きたか:WordPress 7.1「Mary Lou」が正式リリース
WordPress公式のリリースアナウンスによれば、WordPressの各リリースは音楽の世界に消えることのない足跡を残したアーティストを讃えて命名されており、7.1のコードネーム「Mary Lou」はジャズピアニスト、アレンジャー、作曲家であるMary Lou Williamsに由来します。スウィングからビバップ、宗教音楽としてのジャズ(sacred jazz)まで主要な時代を横断しながら自らのサウンドを刷新し続け、1940年代にはハーレムの自宅アパートを夜ごとのワークショップに変え、Thelonious MonkやDizzy Gillespieらとビバップを形づくったとされる人物です。この「刷新と協働」が7.1の着想源になったと公式アナウンスは説明しています。
機能面の全体像について、公式アナウンスは次のように述べています。「WordPress 7.1は、あなたの働き方を軸に組み立てられています。管理画面をたどること、デザインを制御すること、他の人と共同作業すること、そして作りたいものを作ること(“WordPress 7.1 is built around how you work: navigating the admin, controlling your designs, collaborating with others, and building what you want.”)」。管理画面の操作性、デザイン制御、共同編集、拡張性の4つの軸に沿って機能が整えられたリリースです。
今回のリリースリードはAnne McCarthy氏が務めました。公式アナウンスは、7.1が世界中の800人を超える貢献者の尽力を反映したものであり、170人を超える初めての貢献者を迎え入れたこと、そして1500件を超える機能改善と修正が届けられたことを明らかにしています。
レスポンシブスタイルがコアに――カスタムCSSなしで画面サイズごとの調整が可能に
サイト運営者にとって影響が大きい変更の一つが、レスポンシブ対応のスタイル調整がコアの機能として組み込まれた点です。公式アナウンスによれば、7.1はサイトエディターにより多くのレスポンシブ制御を直接持ち込みました。ブロックが異なる画面サイズでどう見えるかを、グローバルスタイルから、あるいは個別のブロック設定から、カスタムCSSなしでスタイリングできるようになっています。
さらに、作業中に異なるビューポートサイズでの表示をプレビューすることも可能になりました。従来からあったブロックの表示・非表示の切り替えオプションに、この組み込みのレスポンシブスタイリングが加わった形です。ブロックテーマ側でも、theme.json内で独自のモバイル用・タブレット用のブレークポイントを定義し、レスポンシブスタイルおよびブロックの表示制御に使われる既定値を上書きできるようになりました。
管理バーが全エディターに常駐――ダッシュボードから編集画面まで一貫した導線
WordPressの管理バーが、すべてのエディターを移動する間も表示され続けるようになりました。公式アナウンスは、これによって常に自分が今どこにいるかが分かり、慣れたツールに簡単にアクセスできるようになると説明しています。投稿を書いているときもサイトのデザインを編集しているときも、必要なツールが手の届く範囲に置かれる設計です。あわせて管理バーには、体験をより磨き上げるための小さな見た目の更新も加えられています。
編集体験の一貫性という観点では、投稿エディターがすべてのテーマで完全にiframe化され、サイトエディターと同じ構造になったことも見逃せません。編集キャンバスが管理画面インターフェースとは別に動作するため、管理画面側のスタイルがコンテンツに干渉しなくなります。また、ビューポート相対単位やメディアクエリが編集キャンバスを直接対象とするようになり、レスポンシブレイアウトを組み立てる際の挙動がより予測しやすくなりました。
メディア編集の刷新――ブラウザ内画像処理とAVIF・HEIC対応
画像まわりは今回のリリースで最も踏み込んだ変更が入った領域です。まず編集面では、新しいメディアエディターのモーダルが従来のインライン切り抜きツールを置き換えました。自由形式および縦横比指定でのトリミング、水平・垂直方向の反転、精密な回転制御、そしてメタデータの編集が一つの専用ワークフローにまとめられています。入口となる「切り抜き(Crop)」ボタンは同じ場所に残されています。
処理の仕組みそのものも変わりました。公式アナウンスは次のように説明しています。「画像の圧縮、リサイズ、サムネイル生成が、ブラウザ内で行われるようになりました。これによりサーバー負荷が軽減され、より小さなファイルが生成されます――PHPのメモリ上限やアップロードのタイムアウトに突き当たることなく(“Image compression, resizing, and thumbnail generation now happen in the browser, reducing server load and producing smaller files — without hitting PHP memory limits or upload timeouts.”)」。この処理はWebAssemblyでビルドされたlibvipsによって実行されるとされており、大きな画像のアップロードがメモリ上限やタイムアウトで失敗するという、共有ホスティング環境で起こりがちなトラブルを避けやすくなります。
対応フォーマットも拡張されました。7.1のメディア処理はAVIF、HEIC、そしてHDRゲインマップをネイティブにサポートし、現代のカメラやスマートフォンがすでに生成している画像フォーマットをそのまま扱えます。加えて、オプトイン方式のGIFから動画への変換が用意され、一般にファイルサイズがより小さくなるとされています。アップロードの進捗表示と自動リトライも追加され、通信が途切れた場合でも失敗しにくくなりました。メディアライブラリの表示は既定で無限スクロールになり、ユーザーごとの設定でページ送り表示に戻すこともできます。
Notesの強化と2つの新ブロック――Tabs・Playlist
共同編集の機能であるNotesが強化されました。Notesはリッチテキストとメンションに対応し、太字・斜体・コードでの書式設定やリンク追加ができるほか、「@」で共同編集者をメンションして通知を送れます。さらに、ブロック全体ではなく特定のテキスト部分に対してノートを残せるようになり、同じブロック上で複数の会話を並行して進めることや、長いノートを折りたたんでマージンを整理しておくこともできます。
新しく追加されたブロックは2つです。1つはPlaylist(プレイリスト)ブロックで、複数のオーディオトラックを一つのプレイリストにまとめられます。再生中の各トラックの様子を視覚的に伝えるオプションの波形表示も用意されています。もう1つはTabs(タブ)ブロックで、すべての情報を一度に表示するのではなくタブ切り替えのパネルに整理でき、関連する情報をコンテンツを混雑させずに提示できるとされています。いずれもこれまで追加のプラグインで実現することが多かった機能です。また、ボタンブロックにはインタラクティブなスタイル設定が入り、エディターのスタイル制御からホバー・フォーカス・アクティブの各状態に個別のスタイルを指定できるようになりました。1つのボタンだけに適用するか、すべてのボタンに適用するかも選べます。
開発者向けの変更点:SVG Icon APIの公開とAbilities APIの拡張
公式アナウンスは、WordPress 7.1がアイコン、自動化、管理画面インターフェース、レスポンシブスタイリングという領域で、開発者が使うAPIとツールを拡張したと説明しています。まずSVG Icon APIが公開APIになりました。開発者はwp_register_icon_collection()、wp_register_icon()、wp_get_icon()といった関数を使って独自のアイコンコレクションやアイコンを登録し、エディター全体で組み込みのライブラリと並べて利用できます。
次にAbilities APIです。公式アナウンスによれば、Abilities APIはWordPress 6.9で導入された基盤の上に、フィルター可能な実行ライフサイクル、カスタムバリデーション、共有されたディスカバリーを加えるものです。これらの追加によってWordPressの上に統合機能や自動化を構築しやすくなり、AIを活用したツーリングもその対象に含まれるとしています。
管理画面のUI開発向けには、新しいDesign Systemが導入されました。色、角丸(roundness)、カーソルスタイルを含む、管理画面インターフェースをテーマ化するための基礎的なサポートを提供するもので、セマンティックなデザイントークンとThemeProviderというReactコンポーネントを使い、独自の管理画面に一貫性を持たせつつWordPressらしい佇まいを保てます。
テーマ作者向けには、theme.jsonを通じてレスポンシブスタイリングと、ホバー・フォーカス・フォーカスビジブル・アクティブの各疑似状態に対するスタイリングが利用できるようになり、あわせてサイトエディターのページ・テンプレート・パーツ・パターンの各画面を支えるDataViewsおよびDataFormの設定用に新しいフィルターが追加されました。
アクセシビリティと編集体験の改善
WordPress 7.1は、コアとエディターの両方でアクセシビリティの改善を継続しています。新たにwp_get_tooltip()とwp_get_toggletip()という関数が追加され、投稿のメタボックスやログイン画面を含む管理画面のより多くの場所で、アクセシブルなツールチップが利用できるようになりました。
スクリーンリーダーのサポートも管理画面インターフェース全体で改善され、投稿一覧テーブルにおいてラベルがより明確になり、ナビゲーションがより予測しやすくなっています。この投稿一覧テーブルの扱いについては、本サイトでもWordPress 7.1で投稿一覧のHTML構造がアクセシビリティ対応のため変更され、一部プラグインに影響が出る可能性がある件を事前に取り上げていました。管理画面の投稿一覧に独自の列や操作を追加しているプラグインを使っている場合は、7.1へ更新した後に表示や操作が意図どおりかを確認しておくとよいでしょう。なお、新しく追加されたTabsブロックとPlaylistブロック、エディターのナビゲーションと操作に関する改善も、今回のアクセシビリティ対応の一部だと公式アナウンスは位置づけています。
SEO・サイト運営への影響:編集部の考察
Scale Basics編集部としては、今回のリリースで運営実務に最も効いてくるのは画像処理のブラウザ内実行だと考えます。圧縮・リサイズ・サムネイル生成がサーバー側からブラウザ側へ移ることで、公式アナウンスが挙げているとおりサーバー負荷が下がり、生成されるファイルも小さくなります。ページの表示速度はCore Web Vitalsを通じて検索評価に関わる要素であり、そこに直接効くのは画像の軽量化です。加えてAVIFへのネイティブ対応により、これまでプラグインや外部サービスに頼っていた次世代フォーマットの扱いをコアの機能の範囲で進められる余地も広がりました。共有サーバーでメモリ上限やタイムアウトに悩まされてきたサイトほど恩恵は大きいはずです。
レスポンシブスタイルのコア搭載も、運用の負債を減らす方向に働くと考えます。画面サイズごとの見た目の調整はこれまでカスタムCSSで対応するケースが多く、そのCSSが誰にも触れない状態で残り続けることが改修コストを押し上げてきました。編集画面から画面サイズ別のスタイルを設定できれば、非エンジニアの担当者が自分でレイアウトを調整できる範囲が広がり、モバイルでの見づらさを放置しない運用に近づけられます。
一方で、メジャーアップデートである以上、いきなり本番環境に適用するのは避けるべきだと考えます。投稿エディターが全テーマで完全にiframe化された点は、管理画面側のCSSやJavaScriptに依存したカスタマイズを持つサイトでは挙動が変わりうる変更です。バックアップの取得とステージング環境での確認という基本手順を踏んだうえで反映するのが安全です。なお、直近ではセキュリティリリース7.0.3で深刻度8.9の未認証XSS脆弱性を含む12件が修正されているため、7.1への移行をすぐに判断できない場合も、セキュリティ修正を含むバージョンまでは確実に上げておくことをおすすめします。
まとめ
・WordPress 7.1「Mary Lou」が米国時間2026年8月19日に正式リリースされた。コードネームはジャズピアニストのMary Lou Williamsに由来する
・800人を超える貢献者が参加し、170人を超える初貢献者を迎え、1500件を超える機能改善と修正が含まれる。リリースリードはAnne McCarthy氏が務めた
・サイトエディターにレスポンシブ制御が入り、カスタムCSSなしで画面サイズごとのスタイル設定とプレビューが可能になった。ブロックテーマはtheme.jsonで独自のブレークポイントを定義できる
・画像の圧縮・リサイズ・サムネイル生成がWebAssembly版libvipsによりブラウザ内で実行されるようになり、AVIF・HEIC・HDRゲインマップにネイティブ対応した
・管理バーがすべてのエディターに常駐し、投稿エディターは全テーマで完全にiframe化された。Notesはリッチテキストとメンションおよびテキストレベルのコメントに対応し、Tabs・Playlistの2ブロックが追加された
・開発者向けにはSVG Icon APIの公開化、WordPress 6.9で導入された基盤を拡張するAbilities API、管理画面向けDesign System、theme.jsonの疑似状態スタイリングなどが提供される
よくある質問
Q1: WordPress 7.1の主な新機能は何ですか?
公式アナウンスが挙げている主な変更は、サイトエディターに組み込まれたレスポンシブスタイル、すべてのエディターに常駐するようになった管理バー、切り抜き・反転・回転・メタデータ編集を一つにまとめた新しいメディアエディター、リッチテキストと@メンションに対応したNotes、そしてPlaylistとTabsという2つの新ブロックです。あわせてIconブロック用に独自のアイコンセットを登録するAPIも追加されています。
Q2: 画像処理がブラウザ内で行われるようになると何が変わりますか?
公式アナウンスによれば、画像の圧縮・リサイズ・サムネイル生成がブラウザ内で実行されるようになり、サーバー負荷が軽減され、生成されるファイルもより小さくなります。処理はWebAssemblyでビルドされたlibvipsによって行われ、PHPのメモリ上限やアップロードのタイムアウトに突き当たらずに大きめの画像を扱えるようになります。加えてAVIF、HEIC、HDRゲインマップにネイティブ対応しました。
Q3: WordPress 7.1にはすぐ更新すべきですか?
7.1はセキュリティリリースではなく機能追加を含むメジャーアップデートのため、Scale Basics編集部としては、バックアップの取得とステージング環境での動作確認を経てから本番に適用することをおすすめします。特に投稿エディターが全テーマで完全にiframe化された点や管理画面の投稿一覧テーブルの構造変更は、管理画面をカスタマイズしているサイトで挙動が変わりうる部分です。
出典:WordPress 7.1 “Mary Lou”(WordPress公式リリースアナウンス、2026年8月19日)https://wordpress.org/news/2026/08/mary-lou/
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