何が起きたか:Google検索の約半分にAI Overviewsが出ている
Search Engine Roundtableの記事(見出し:「About Half Of Google Searches Have AI Overviews(Google検索の約半分にAI Overviewsが表示されている)」)は、読者への問いかけから始まっています。Google検索の結果の一番上にAI Overviewsをいつも見ている気がしないだろうか、という書き出しです。
そのうえで記事は、Similarwebの新しいデータによればAI Overviewsは全クエリの約43%で表示される(“new data from Similarweb says that AI Overviews show up for about 43% of all queries”)と伝えています。続けて、Semrushのデータではその数字が約48%になる(“Meanwhile, Semrush data has it at about 48% of all queries”)としています。約43%と約48%、どちらの数値をとっても「検索の約半分」という水準です。
さらに記事は、この割合がクエリのカテゴリによって変わり、情報収集型クエリ(informational queries)ではさらに高くなる傾向がある(“It depends on the query category because informational queries tend to be even higher.”)と指摘しています。全クエリ平均が約43%〜48%でも、調べものや比較検討といった意図のクエリ群だけを取り出せば、体感はもっと高くなり得るということです。
なお、この記事はGoogleの公式発表ではなく、第三者の計測データを紹介する短い速報です。記事にはAI Overviewsが検索結果の上部に表示されている実例のスクリーンショットも掲載され、フォーラムディスカッションの参照先としてXが挙げられています。
詳細:Similarweb約43%とSemrush約48%――調査元で数字が食い違う
この一報でまず目を引くのは、2つの調査元の数字が約5ポイントずれている点です。記事はSimilarwebのグラフと、Semrushのデータをそれぞれ掲載していますが、どちらの数値が正しいのか、なぜ差が生じるのかについての説明は加えていません。計測対象となったキーワードの母集団、対象国や言語、デバイス、計測が行われた期間といった条件も、記事には書かれていません。
ここから先はScale Basics編集部による一般的な実務上の補足です。第三者ツールが公表する表示率は、そのツールが追跡しているキーワードセットの中でAI Overviewsが確認されたクエリが何%あったかという値です。したがって追跡キーワードの構成が違えば数字はずれます。情報収集型のクエリを多く含むデータセットでは高く出やすく、指名検索や取引型の比率が高ければ低く出やすいと考えられます。加えて、同じクエリでも常に同じように表示されるとは限らないため、いつ何回計測したかによっても結果は動きます。
実務上は、43%と48%のどちらかを正解として採用するより、複数の独立した計測がそろって4割から5割の水準を示しているという桁の一致を重く見るのが妥当だと考えます。
推移:1年前は13%〜20%、グラフでは約15%から43%へ
この一報が持つ意味は、単月の水準よりも変化の速さにあります。記事は、SimilarwebがXに投稿したグラフについて、AI Overviewsが表示されるクエリの割合とその推移が分かるものだと説明し、約15%から43%まで一気に上がっている(“up from about 15% all the way to 43% in a short period of time”)と、短期間での上昇を強調しています。
さらに記事は、自身が1年前に同じ指標を扱ったときのことにも触れています。そのときの数字は約13%から20%だった(“I covered these percentages a year ago and it was at about 13% to 20%.”)としています。1年前に13%〜20%だったものが、いまは約43%〜48%です。おおよそ2倍から3倍の水準に増えた計算になります。
ただし、グラフの起点となる日付、集計の粒度、対象となったクエリの母数といった前提は記事に示されていません。約15%という起点と、1年前の記事で扱った13%〜20%という数値がどう対応するのかについても説明はなく、細かい数値の解釈は慎重に扱うべき部分です。
AI Modeの訪問はさらに速いペースで伸びている
記事はもうひとつ、同じSimilarwebのグラフから読み取れる点として、AI Modeへの訪問がさらに速く伸びている(“you can see AI Mode visits are growing even faster”)ことを挙げています。AI Overviewsの表示率の伸びよりも、AI Modeの訪問の伸びのほうが速い、という趣旨です。
この記述についても、記事は訪問数の絶対値や比較の基準となる期間には触れていません。伸び率が高いことと利用規模が大きいことは別の話であり、この一文から実際の規模を推し量ることはできません。それでも、AI Overviewsという検索結果ページの中の一区画に加えて、AI Modeという別の入口も同時に育っている構図は押さえておく価値があります。
実務への影響:表示率の上昇と自社の流入減はイコールではない
ここからはScale Basics編集部による一般的な実務上の補足です。記事本文には、SEO担当者向けの推奨事項や影響予測は書かれていません。
この種のニュースで最も起きやすい誤読は、AI Overviewsが約半分のクエリに出るという数字を、そのまま自然検索の流入が半分になると読み替えてしまうことです。両者は別の指標であり、実務では少なくとも次の3つの層に分けて考える必要があります。
第一に、業界全体の表示率です。これは検索結果ページにAI Overviewsが出たクエリの割合であり、環境変化を示す指標にすぎません。第二に、自社が対象としているクエリでの表示率です。全クエリ平均が約43%でも、獲得している検索が指名検索や取引型に寄っていれば自社の表示率は平均より低い可能性があり、情報収集型の記事で流入を取っているメディアなら平均より高く出ても不思議ではありません。第三に、表示されたときの実際のクリックへの影響です。表示されること自体と、そのとき自社ページのクリックがどれだけ動くかは切り離して測る必要があります。
この3層を混ぜたまま議論すると、業界データで表示率が上がったのだから自社のアクセス減もそのせいだろう、という結論に飛びつきやすくなります。実際には順位の下落、季節性、サイト内の変更、競合の動きが主因であることも十分あり得ます。第三者ツールの数値は環境把握の材料であって、自社の実データの代わりにはなりません。
今日からできる確認手順:GSCで自社の実態を切り分ける
この章もScale Basics編集部による一般的な実務上の補足で、記事に書かれている手順ではありません。業界平均の数字を眺めるのではなく、自社のGoogle Search Console(GSC)のデータで実態を確認するための順序として読んでください。
- GSCの検索パフォーマンスレポートを開き、期間を前年同期と比較する設定にします。まずはサイト全体のクリック数、表示回数、平均CTR、平均掲載順位の4指標がどう動いたかを押さえます。
- クエリ単位に切り替え、掲載順位がほぼ横ばい、または上がっているのにCTRだけが落ちているクエリを抽出します。順位も一緒に落ちているクエリは、先に順位下落の要因を潰すべき別問題です。
- 抽出したクエリを情報収集型と取引型・指名検索に分類し、CTRの落ち込みが前者に集中しているかを確認します。特定の意図に偏っていれば、検索結果面の変化が効いている可能性が高まります。
- 該当するクエリを実際にGoogleで検索し、AI Overviewsが表示されるか、表示された場合に自社ページが引用されているかを目視で確認します。数件でよいので、データと実際の画面を突き合わせます。
- ページ単位のレポートに切り替え、落ち込みが特定のディレクトリやテンプレートに集中していないかを確認します。集中していれば、検索環境の変化ではなく自サイト側の問題である可能性が出てきます。
注意点として、GSCにはAI Overviews内での表示だけを切り出して集計する専用の指標は用意されていません。上記の手順で分かるのはAI Overviewsの影響と整合的な動きがあるかどうかまでで、因果の証明にはならない点は社内共有の際にも明示しておくことをおすすめします。
所感
ここからは記事本文にはない、Scale Basics編集部の見解です。今回の一報は数行の短い速報ですが、節目にあたる数字だと考えています。1年前に13%〜20%だったものが約43%〜48%になったということは、AI Overviewsが出るかどうかを例外的な事象として扱うフェーズが終わり、出ることを前提に設計する段階に入ったということです。出るのが標準で出ないクエリのほうが特殊、という前提に社内の言葉を入れ替えるだけでも、施策の優先順位は変わります。
一方で、この数字を社内の説明にそのまま持ち込むことには慎重でありたいところです。約43%あるいは約48%というのは調査会社が追跡しているキーワード群の平均であって、自社の顧客が実際に打つ検索の姿ではありません。業界平均を根拠にトラフィック減少を説明してしまうと、本来は解決できたはずの自社側の課題が環境のせいとして棚上げされます。外部データは環境認識に使い、自社の判断はGSCの実データで下す、という役割分担を崩さないことが重要です。
そのうえで注目したいのは、AI Modeの訪問がさらに速く伸びているという指摘のほうです。AI Overviewsは検索結果ページの一部であり、下にスクロールすれば従来のリンク一覧が残っています。しかしAI Modeは入口そのものが別の形をしています。表示率という指標で追える範囲の外側で検索行動が変わり始めているとすれば、そちらのほうが中長期の影響は大きくなります。計測できる数字を丁寧に見つつ、計測できていない入口が育っている可能性も同時に頭に置く二重の視点が、しばらくは必要になりそうです。
まとめ
・Similarwebの新しいデータではAI Overviewsが全クエリの約43%で表示され、Semrushのデータでは約48%だと、Search Engine Roundtable(2026年7月30日付)が報じた
・表示率はクエリのカテゴリによって変わり、情報収集型クエリではさらに高くなる傾向があるとされている
・SimilarwebがXに投稿したグラフでは、この割合が短期間で約15%から43%まで上昇しており、同記事が1年前に扱ったときは約13%から20%だった
・同じグラフからはAI Modeへの訪問がさらに速いペースで伸びていることも読み取れるとされているが、訪問数の絶対値や期間は記事に書かれていない
・記事にSEO担当者向けの推奨事項や計測条件の説明はなく、業界平均の表示率を自社の流入減少の説明にそのまま使うことはできない
よくある質問
Q1: AI Overviewsの表示率は約43%と約48%のどちらが正しいのですか?
Search Engine Roundtableの記事は、Similarwebのデータで約43%、Semrushのデータで約48%と両方を並べて紹介しているだけで、どちらが正確かという判断は示していません。計測対象のキーワードの母集団、対象国や言語、デバイス、計測期間も記事には書かれていないため、差が生じた理由も不明です。実務上は、どちらかを正解として採用するよりも、複数の計測がそろって4割から5割の水準を示している点を押さえておくほうが有用です。
Q2: 1年でどれくらい増えたのですか?
記事によれば、同じ指標を1年前に扱ったときの数値は約13%から20%でした。今回は約43%から48%ですので、おおよそ2倍から3倍の水準になった計算です。またSimilarwebがXに投稿したグラフについて、記事は約15%から43%まで短期間で上昇していると述べています。ただし、グラフの起点となる日付や集計の粒度、対象クエリの母数は記事に示されていないため、上昇の細かい形は分かりません。
Q3: 約半分のクエリに表示されるということは、自然検索の流入も半分になるのですか?
記事にはトラフィックへの影響についての記述がないため、以下はScale Basics編集部による一般的な実務上の補足です。表示率と自社の流入減少は別の指標であり、そのまま結び付けることはできません。確認すべきは、自社が獲得しているクエリでの表示率と、表示されたときの実際のクリックの動きです。GSCの検索パフォーマンスレポートで、掲載順位が横ばいなのにCTRだけ落ちているクエリを抽出し、それが情報収集型に偏っているかを確認するのが出発点になります。ただしGSCにはAI Overviews内での表示だけを切り出す指標がないため、分かるのは整合的な動きの有無までで、因果の証明にはならない点に注意してください。
出典:About Half Of Google Searches Have AI Overviews(Search Engine Roundtable、2026年7月30日)https://www.seroundtable.com/half-google-searches-ai-overviews-41780.html