SEOレポートとは? — なぜ月次で作るのか
SEOレポートとは、一定期間におけるSEO施策の実施状況とその成果を、データに基づいてまとめた報告書です。多くの場合は月次で作成し、クライアントや上長、チームメンバーへの共有に使います。単なる義務的な報告ではなく、施策を前進させるための戦略ツールと位置づけると、書くべき内容が定まります。
レポートが果たす3つの役割
第一に施策の効果検証です。実施したコンテンツ制作や内部改善が、検索順位・トラフィック・コンバージョンにどう影響したかを可視化します。データに基づく振り返りがなければ、どの施策が有効だったかを判断できません。
第二にステークホルダーへの説明責任です。SEOは効果が出るまでに時間がかかる施策です。定期的なレポート共有で、現在の進捗や中長期の改善トレンドを示し、継続的な投資への理解を得られます。
第三に次のアクションの根拠づくりです。レポートで課題を洗い出すことで、翌月以降の施策の優先度を決められます。「なんとなく」ではなく、データドリブンな意思決定を支える土台になります。
レポートがないと起きる問題
レポートを作らないと、施策の成果が不明瞭になり、SEOへの予算やリソースが削減されるリスクが高まります。過去の実施記録が残らないため同じ施策の重複が起き、チーム内の認識のズレも広がります。まず型を決めて継続することが、これらを防ぐ最短ルートです。次のセクションで、実務で使える構成テンプレートを示します。
SEOレポートの構成テンプレート
以下は、月次SEOレポートの推奨構成テンプレートです。各セクションに記載すべき内容、データの取得元、記載例をまとめました。このテンプレートをベースに、自社の状況に合わせてカスタマイズしてください。
| セクション | 記載内容 | データソース | 記載例 |
|---|---|---|---|
| エグゼクティブサマリー | 当月の成果サマリー、前月比の主要KPI変動、特筆事項 | 各セクションの要約 | 「オーガニック流入が前月比+12%。新規公開5記事のうち3記事が1ページ目に表示」 |
| 検索パフォーマンス | クリック数、表示回数、平均CTR、平均掲載順位の推移 | Google Search Console | 「クリック数: 15,200(前月比+8%)、平均掲載順位: 18.3(前月比-2.1改善)」 |
| トラフィック分析 | オーガニックセッション数、ユーザー数、エンゲージメント率、CV数 | GA4 | 「オーガニックセッション: 22,500、エンゲージメント率: 62.4%、CV数: 45」 |
| AI検索での見え方 | 生成AI機能でのインプレッション、AI経由の参照流入 | GSC生成AIレポート / GA4カスタムチャネル | 「AI Overviews等でのインプレッション: 3,400。AI経由セッション(下限値): 120」 |
| コンテンツ施策の進捗 | 新規記事の公開本数、リライト実施記事、各記事の順位・流入状況 | CMS / GSC / GA4 | 「新規公開: 5本、リライト: 3本。『SEOレポート 作り方』で8位→3位に改善」 |
| テクニカルSEOの状況 | Core Web Vitals、インデックス状況、クロールエラー、構造化データの状態 | GSC / PageSpeed Insights | 「LCP: 2.1s(良好)、INP: 180ms(良好)、クロールエラー: 3件(前月比-5件)」 |
| 次月のアクションプラン | 翌月に実施予定の施策、優先度、担当者、期限 | 施策管理シート | 「優先度高: カテゴリページの内部リンク最適化(担当: 田中、3/15まで)」 |
記載例の数値はあくまでテンプレートの埋め方を示す仮の値です。自社の実データに置き換えて使ってください。セクションの順序は上記が推奨ですが、エグゼクティブサマリーを冒頭に置くことだけは必ず守ります。忙しい意思決定者は、サマリーだけで状況を把握できる必要があるためです。
レポート本体に貼り付ける骨子として、次のようなアウトラインを用意しておくと毎月の作成がぶれません。
月次SEOレポート(対象期間: 2026-02-01〜2026-02-28 / 対象: example.com)
1. エグゼクティブサマリー
- 主要KPIの前月比・前年同月比(3〜5個に絞る)
- 今月のハイライト / アラート
- 次月アクションの方針(1〜2行)
2. 検索パフォーマンス(GSC)
- 全体: クリック / 表示 / CTR / 平均順位
- クエリ別・ページ別の内訳と変動要因
3. トラフィック分析(GA4 / Organic Search)
- セッション / ユーザー / エンゲージメント率 / CV
- ランディングページ上位20
4. AI検索での見え方(2026〜)
- 生成AIインプレッション(GSCレポート)
- AI経由セッション(カスタムチャネル・下限値)
5. コンテンツ施策の進捗
6. テクニカルSEOの状況
7. 次月のアクションプラン(施策 / 優先度 / 担当 / 期限)
このテンプレートは社内報告用にもクライアント向け報告用にも対応できます。記載する指標の選び方はSEO指標一覧、指標をKGIから逆算して設計する方法はSEO KPIの設計方法を参考にしてください。
セクション別の書き方
テンプレートの各セクションについて、具体的な書き方のポイントと注意点を解説します。
エグゼクティブサマリー
エグゼクティブサマリーは、レポート全体の要約を1ページ以内にまとめるセクションです。経営層やクライアントの多くは、詳細なデータまで読む時間がありません。サマリーだけで「今月はうまくいったのか」「何が課題なのか」が伝わるように書きます。
- 主要KPIの前月比・前年同月比を冒頭に記載する
- 数値は3〜5個に絞る(多すぎると焦点がぼやける)
- 成果だけでなく課題も正直に書く
- 次月のアクション方針を1〜2行で添える
- 専門用語を避け、ビジネスインパクトの言葉で伝える
特に経営層への報告では、表示回数やクリック数といった「見栄えの指標」だけでなく、収益や顧客への影響で語ると説得力が増します。運用型広告の分野では、CPAやROAS以上にCAC(顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)をセットで示すほうがCFO(財務責任者)に響くと整理されています。この考え方はSEOレポートのサマリーにも応用でき、「安く集客できたか」だけでなく「価値ある流入・顧客につながったか」まで触れると、予算の継続や増額の交渉がしやすくなります。詳しくはCFOが本当に見ている広告指標を参照してください。
サマリーの記載例(テンプレート):
「2026年2月のオーガニック検索トラフィックは前月比+12%の22,500セッションとなり、3か月連続で成長を維持しました。新規公開した5記事のうち3記事が公開後2週間以内に検索結果1ページ目に表示され、コンテンツ戦略が順調に機能しています。一方、テクニカル面ではCore Web VitalsのINPが一部ページで悪化しており、来月の優先対応事項として改善に取り組みます。」
サマリーは最後に書くのが効率的です。全セクションを書き終えてから、要点を抽出してまとめましょう。
検索パフォーマンス(GSCデータ)
Google Search Console(GSC)から取得したデータを基に、検索パフォーマンスの状況を報告するセクションです。中心にするのは、クリック数・表示回数(インプレッション)・平均CTR・平均掲載順位の4指標です。各指標の定義や読み方はSEO指標一覧で、GSCの画面操作はサーチコンソールの使い方で詳しく解説しています。
書き方の要点は、数値の羅列にせず必ず「なぜその変動が起きたのか」の分析を添えることです。「クリック数が前月比+15%」だけでなく、「主要KW『SEOレポート 作り方』が12位→5位に上昇したことが主因」のように要因を特定します。全体の平均値だけでは個別施策の効果が見えないため、上位クエリ10〜20個のクリック数推移と、注力ページの順位推移を表やグラフで添えるのが理想です。
トラフィック分析(GA4データ)
GA4から取得したデータを基に、サイトに来た後のユーザー行動を報告するセクションです。GSCが「検索結果上でのパフォーマンス」を示すのに対し、GA4は「サイトに来た後の行動」を示します。両方を組み合わせると、SEO施策の全体像が見えてきます。必須指標は次のとおりです。
- オーガニックセッション数:自然検索経由のセッション数。SEOの直接的な成果指標
- エンゲージメント率:10秒以上の滞在・2ページ以上の閲覧・キーイベント発生のいずれかを満たしたセッションの割合
- 平均エンゲージメント時間:ユーザーがコンテンツに実際に関与した時間
- コンバージョン数/率:設定したキーイベント(問い合わせ、資料DLなど)の達成数と達成率
レポートでは必ずチャネルグループを「Organic Search」に絞ったデータを使います。全チャネルを混在させると、SEO施策の効果を正確に測れません。加えて、ランディングページ別のパフォーマンス上位20ページを添えると、どのページが集客に貢献しているかが明確になります。新規公開・リライトした記事のランディングページ数値は、コンテンツ施策の効果検証として特に重要です。データ取得の具体手順は本記事後半とあわせ、ツールの実践活用はSEO効果測定ツール完全ガイドを参照してください。
コンテンツ施策の進捗
当月に実施したコンテンツ関連の施策と、その成果を報告するセクションです。SEO施策の中心はコンテンツであることが多く、このセクションの充実度がレポートの価値を大きく左右します。新規記事の公開本数と各記事のターゲットKW、リライトした記事の変更内容、各記事の現在の順位とクリック数、公開からの順位推移、計画に対する進捗を記載します。
ポイントは、定量データと定性情報の両方を書くことです。「5本公開しました」だけでは不十分で、各記事がどのKWを狙い、現在どの順位で、どのくらいの流入を得ているかまで踏み込みます。特にリライトの効果は、前後の順位変動やCTRの変化を示すことで改善の投資対効果を可視化でき、今後のリソース確保にもつながります。E-E-A-Tに関わる質的改善(専門家監修の追加、一次データの掲載など)も、実施したなら記録しておくとよいでしょう。
テクニカルSEOの状況
サイトの技術的な健全性を報告するセクションです。コンテンツが良くても技術的な問題があれば評価は制限されます。記載する主な項目は次のとおりです。
- Core Web Vitals:LCP(Largest Contentful Paint)、INP(Interaction to Next Paint)、CLS(Cumulative Layout Shift)の各スコアと判定
- インデックス状況:GSCの「ページのインデックス登録」から、登録済み/未登録ページ数とエラー内容
- クロールエラー:404、サーバーエラー(5xx)、リダイレクトエラーの件数と対応状況
- 構造化データ:リッチリザルトの表示状況、エラー・警告件数
Core Web Vitalsは、INPが2024年3月にFIDを正式に置き換えた現行のインタラクティブ性指標です。レポートでは特にINPに注目し、良好の目安である200ミリ秒以内を基準に報告しましょう(LCPは2.5秒以内、CLSは0.1以下が良好の目安)。
技術指標は改善の再現性が高い領域でもあります。当サイトの実測(2026年7月計測)では、クリティカルCSSのインライン化などによってLCPを3.2秒から1.8秒へ短縮し、TTFBは平均0.19秒でした。こうした指標をどう測り、どう改善して報告に落とし込むかはSEOに強いコーディングで実装レベルまで解説しています。また、サイトの大きな構成変更を報告する際は、前後比較の定点観測が判断材料になります。当編集部でも2026年7月にサイトをNext.js(SSG)からWordPressへ移行した際、旧URL(/blog/xxx/)から新URL(/xxx/)への301リダイレクトが評価を引き継げているかを、GSCのインデックス登録数と表示回数を移行前後で観測して確認しました(結果としてインデックス面の問題は発生しませんでした)。
次月のアクションプラン
当月の分析結果を踏まえ、翌月に実施する施策を具体的に記載するセクションです。このセクションがあることで、レポートは「振り返り」だけでなく「次の行動への橋渡し」になります。実施予定の施策名と概要、優先度(高・中・低)、担当者と期限、期待効果やKPI目標を書きます。
アクションプランは実行可能な粒度で書きましょう。「コンテンツを強化する」ではなく「ターゲットKW『SEO レポート テンプレート』で記事を新規作成し、3月20日までに公開する。目標:公開後1か月以内に20位以内」のように、施策・期限・目標を明記します。当月に発見した課題から逆算して策定すると、レポート全体のストーリーに一貫性が生まれます。各施策にKPIを紐づけておくと翌月の効果検証がしやすくなります(設計方法はSEO KPIの設計方法を参照)。
AI検索時代に加えたいレポート項目【2026年】
2026年のSEOレポートでは、Google検索の順位・流入だけでなく、AI検索(AI Overviews/AI Mode/ChatGPTなど)での見え方と流入を報告項目に加えることが実務的になっています。ここで押さえたいのは、これらが「計測(見える化)」の話であって、順位を直接動かす施策ではないという点です。まず正しく測って報告する状態を作ることが、次の打ち手の土台になります。測定の詳細は各専用記事に譲り、本セクションでは「レポートにどう組み込むか」に絞ります。
AI検索での見え方を報告する(GSC生成AIレポート)
Googleは2026年6月、Search Consoleに「生成AIパフォーマンスレポート」を追加しました。AI Overviews・AI Mode・Discoverの生成AI機能で、自サイトのURLが表示された回数(インプレッション)を、表示URLや国別・デバイス別・期間別に確認できる計測ビューです。月次レポートには、このインプレッションを「AI検索での見え方」の項目として通常の検索パフォーマンスと分けて載せると、AI検索での露出傾向が追えるようになります。ただし提供は一部サイトからの段階展開で、数値の増減は露出状況の観測であり順位変動を意味しない点に注意してください。詳細はSearch Consoleの生成AIパフォーマンスレポートで解説しています。
AI経由の流入を報告する(GA4カスタムチャネル)
ChatGPTやPerplexityなどAI経由の参照流入は、GA4のトラフィック獲得レポートで捕捉します。ただしGA4が2026年5月に追加した標準の「AIアシスタント」チャネルは、同じChatGPT流入を「AIアシスタント」「参照」「未割り当て」の3つに分散させ、AI流入を過少計測することが指摘されています。実務では、参照元を正規表現で一致させるカスタムチャネルグループを作り、AI流入をひとまとめに捕捉するのが推奨です。「管理 > データ表示 > チャネルグループ」で新チャネルを作り、次のパターンで参照元を判定します。
.*(\^|[/.:@?&=])(chatgpt\.com|chat-gpt\.org|openai\.com|perplexity|gemini\.google\.com|copilot\.microsoft\.com|edgepilot|edgeservices|claude\.ai|deepseek\.com|grok\.com|you\.com|nimble\.ai|iask\.ai|aitastic\.app|bnngpt\.com|writesonic\.com|copy\.ai)([/.:@?&#=]|$).*
このAIチャネルの優先順位を「参照」「オーガニック」より上に置くのが要点です。ただしモバイルアプリ由来の流入は「直接(Direct)」に、AI OverviewsやAI Modeは google / organic に入るため捕捉できません。したがってレポートでは、AI経由セッションを「下限値(少なくともこれだけはある)」と明記して保守的に読むのが安全です。設定の全手順と対応プラットフォームの更新状況はGA4のAI流入を正しく捕捉するカスタムチャネルの作り方で詳しく扱っています。
ゼロクリック前提で指名検索・収益を主役にする
AI Overviewsの普及で、表示回数は維持・増加しても検索結果画面上で回答が完結し、クリックに結びつかない「ゼロクリック」の傾向が強まっています。このため、クリック数やセッション数の増減だけを成果として報告すると、実態を見誤ることがあります。レポートでは、指名検索(ブランド名・サービス名での検索)の表示回数の推移や、セッション数より収益・コンバージョンを主役に据える視点を加えると、経営層に伝わりやすくなります。ゼロクリック時代の可視性をどう測るかという考え方はSEO効果測定の方法でも掘り下げています。
SEOレポートのデータ取得方法
レポートの品質は、正確なデータの取得に大きく依存します。ここでは主要データソースであるGSCとGA4から、レポート作成に必要なデータを取得する手順を要点に絞って解説します(画面ごとの詳しい使い方はサーチコンソールの使い方を参照)。
Google Search Consoleからの取得
Google Search Consoleでは、次の流れでレポート用データを取得します。
- 左メニューから「検索パフォーマンス」→「検索結果」を開く
- 「日付」フィルタで当月を設定し、「比較」タブで前月・前年同月との比較を有効にする
- 右上のエクスポートボタンでスプレッドシート/Excel/CSVにダウンロード(クエリ別・ページ別・国別・デバイス別のタブが自動で分かれる)
抽出すべきデータポイントは、クリック数上位20クエリとその前月比、ターゲットKWの順位推移、表示回数が多いのにCTRが低いクエリ(改善余地あり)、新たにランクインしたクエリ、順位が下落したクエリです。GSCのデータには2〜3日のラグがあり、月末日のデータが反映されるのは翌月3日頃です。レポート作成のスケジュールはこのラグを考慮して組みましょう。
GA4からの取得
GA4では、次の流れで取得します。
- 「レポート」→「集客」→「トラフィック獲得」を開く
- チャネルグループを「Organic Search」に絞る(前述のAIチャネルを追加している場合はそれも確認)
- 右上の日付セレクタで当月を設定し、「比較」で前月期間を重ねる
- 「エンゲージメント」→「ランディングページ」でページ別のセッション・エンゲージメント率・CVを確認する
- 定型レポートで足りない場合は「探索」で自由形式のクロス集計を作る
GA4はリアルタイムに近い更新ですが、データが確定するまで24〜48時間かかる場合があります。月初にレポートを作る際は、前月最終日のデータが確定してから着手すると正確です。GSCと期間を統一することも忘れないでください。
Looker Studioでレポートを自動化する
毎月のデータ取得・集計・グラフ作成を手作業で行うと、それだけで数時間を費やします。Looker Studio(旧Googleデータポータル)でGSCとGA4を接続すれば、データ取得からビジュアライズまでを自動化でき、レポート作成の工数を大きく削減できます。無料で利用できます。
SEOレポート用ダッシュボードは、次の構成が扱いやすいです。
- サマリー:スコアカード(クリック数・セッション数・CV数の前月比)、直近12か月のオーガニックトラフィック推移、デバイス別セッション比率
- 検索パフォーマンス詳細(GSC):クエリ別テーブル、クリック・表示回数の日別推移、ページ別テーブル
- トラフィック詳細(GA4):ランディングページ別テーブル、セッション・CVの日別推移、新規/リピーター推移
- KPIトラッキング:各KPIの達成率スコアカード、目標に対する進捗
自動化のポイントは、日付範囲コントロールのデフォルトを「先月」に設定しておくこと、メール配信スケジュールで毎月PDFを自動送信すること、ブレンドデータ機能でGSCとGA4を1つのグラフに統合することです。一度作れば、以降はURLを共有するだけで最新データを閲覧できます。月次運用では、月初にダッシュボードを確認し、定性的なコメントとアクションプランを別ドキュメントに記載する流れがスムーズです。接続手順やテンプレートの活用など具体的な設定はSEO効果測定ツール完全ガイドで詳しく解説しています。
レポート作成のよくある失敗
実務でよく見られる失敗パターンを把握しておくと、品質の高いレポートを作れます。
失敗1:数値の羅列だけで分析がない
「クリック数は15,000でした」と数値を並べるだけのレポートは、最も多い失敗です。データは「事実」であり、求められるのは「解釈」と「示唆」です。「クリック数が前月比+15%に伸びた主因は、リライトした3記事の順位改善」のように、必ず因果関係や背景を添えます。
失敗2:前月比だけで中長期トレンドを示さない
前月比だけでは季節変動やトレンドの影響を正しく評価できません。12月→1月で「トラフィック-20%」と報告すると大問題に見えますが、年末年始の季節変動を考えれば正常な範囲かもしれません。前年同月比や直近6〜12か月の推移グラフを必ず併記します。
失敗3:テクニカルSEOの報告を省略する
コンテンツ施策に注力しているサイトでも、テクニカルの定期チェックは欠かせません。気づかぬうちにクロールエラーが増えたり、Core Web Vitalsが悪化したりします。問題がなければ「異常なし」と一言書くだけでも、確認した事実が記録に残ります。
失敗4:施策と成果の紐づけが曖昧
「5記事公開してトラフィックも増えました」では因果関係がわかりません。「公開した5記事のうち『SEOレポート テンプレート』の記事が3位に表示され、当該記事だけで月間1,200クリックを獲得。これが全体増の主因」と具体的に紐づけます。
失敗5:専門用語を説明なしに使う
読み手がSEOの専門家とは限りません。クライアントや経営層に提出する場合、「CTR」「CWV」「インデックス」などは初回のレポートで説明を添えるか、巻末に用語集をつけます。
失敗6:ネガティブな情報を隠す
順位下落やトラフィック減少を報告しないのは短期的には楽ですが、信頼を損ないます。ネガティブな情報こそ、原因分析と改善策をセットで報告することで、プロフェッショナルとしての信頼が高まります。
失敗7:レポートが長すぎる
詳細を盛り込みすぎて30ページ超の大作にしてしまうケースがあります。読み手は全ページを読みません。サマリー1ページ、詳細5〜10ページ程度にまとめ、さらに詳しいデータは付録に回す構成が適切です。
SEOレポート提出前チェックリスト
レポートを提出する前に、以下のチェックリストで最終確認を行いましょう。漏れのない高品質なレポートに仕上げるための必須項目です。
| カテゴリ | チェック項目 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 基本情報 | レポート対象期間が明記されているか | 「2026年2月1日〜2月28日」のように明示 |
| 基本情報 | 対象サイト・ドメイン、作成者・作成日が記載されているか | 責任所在を明確にする |
| サマリー | エグゼクティブサマリーが冒頭にあるか | 1ページ以内で主要KPIと特筆事項を網羅 |
| サマリー | 主要KPIの前月比・前年同月比が記載されているか | 最低限、クリック数・セッション数・CV数 |
| データ | GSCデータ(クリック・表示・CTR・順位)が記載されているか | 全体数値とクエリ別・ページ別の内訳 |
| データ | GA4データ(セッション・エンゲージメント率・CV)が記載されているか | オーガニック検索チャネルに絞った数値 |
| データ | GSCとGA4で期間が統一されているか | 異なる期間を比較していないか |
| AI検索 | AI検索での見え方・流入を報告しているか | 生成AIインプレッション/AI経由セッション(下限値) |
| 分析 | 数値の変動に対する分析・考察があるか | 「なぜ変動したか」の要因分析が必須 |
| 分析 | 施策と成果が紐づいているか | 「何をした結果、どうなったか」を明確に |
| 施策 | 当月実施した施策の一覧があるか | 新規記事、リライト、テクニカル対応など |
| 施策 | テクニカルSEOの状況報告があるか | CWV(INP含む)、インデックス、クロールエラー |
| アクション | 次月のアクションプランが記載されているか | 施策名・担当者・期限・優先度を明示 |
| アクション | 課題と改善策がセットになっているか | 問題提起だけで終わっていないか |
| 品質 | グラフや表が見やすく整形されているか | ラベル、凡例、単位が適切か |
| 品質 | 誤字脱字、データの転記ミスがないか | 特に数値の桁数やパーセンテージの計算を確認 |
このチェックリストをレポートのテンプレートに組み込んでおくと、毎月の確認作業が効率化されます。チーム内で共有し、レビュー時の基準としても活用してください。
まとめ
SEOレポートは、施策の効果を可視化し、次のアクションにつなげるための戦略的なドキュメントです。本記事の要点を振り返ります。
- 構成テンプレートを活用する:エグゼクティブサマリーを冒頭に、検索パフォーマンス・トラフィック・コンテンツ・テクニカル・次月アクションを基本構成にする
- 数値に分析を添える:データの羅列ではなく、変動の要因分析と施策との紐づけを明記する
- 経営層には収益で語る:見栄えの指標より、収益・顧客への影響(CAC・LTVの発想)で伝える
- AI検索の項目を加える:GSC生成AIレポートのインプレッションとGA4カスタムチャネルのAI経由流入を、下限値として報告に組み込む
- Looker Studioで自動化する:データ取得と可視化を自動化し、定性コメントの記述に時間を割く
- チェックリストで品質を担保する:提出前に必ず確認し、漏れや誤りを防ぐ
最初から完璧なレポートを作る必要はありません。まずは本記事のテンプレートで作成し、毎月少しずつ改善していくアプローチが実務では効果的です。レポートの質が上がれば施策の精度も上がり、SEOの成果は着実に積み上がります。KPIの設計はSEO KPIの設計方法、測定の全体フローはSEO効果測定の方法もあわせてご覧ください。
本記事のCore Web Vitalsの定義はGoogle公式仕様(INPは2024年3月にFIDを置き換え、良好の目安200ms以内)に基づきます。技術指標の数値(LCP 3.2秒→1.8秒、TTFB平均0.19秒)は当サイトの実測(2026年7月計測)で、詳細は/seo-coding/で公開しています。サイト移行の記述は当編集部の実体験(2026年7月、Next.js→WordPressへ移行し301リダイレクトでインデックス問題なし)に基づきます。AI検索の計測に関する記述は、当サイトのニュース記事(GSCの生成AIパフォーマンスレポート、GA4のAIアシスタントチャネル)およびGoogle Search Central Blogを参照しています。テンプレート内の数値は記載方法を示す記載例であり、実データではありません。