サイト種別別SEO

BtoBサイトのSEO対策|少ない検索数から商談につなげる設計

BtoBサイトのSEO対策|少ない検索数から商談につなげる設計

BtoBサイトのSEOに取り組むと、ほぼ必ず最初にぶつかる壁があります。狙いたいキーワードをツールに入れても、検索ボリュームが「10」や「-(データなし)」としか表示されないのです。BtoC向けのSEO記事に書かれている「月間1万検索のキーワードを狙いましょう」という話は、そもそも母数が存在しない世界では成り立ちません。ここで「SEOはうちの業界に向いていない」と結論を出してしまう企業がとても多いのですが、それは判断基準を間違えているだけです。

BtoBのSEOで見るべきなのは、検索された回数ではなく、その検索が最終的にいくらの売上につながるかです。1件の受注が数百万円になる商材であれば、月に10件しか検索されないキーワードでも十分に投資対効果が成立します。この記事では、その逆算のしかたから始めて、課題解決型コンテンツと導入事例の役割分担、指名検索の育て方、資料請求・問い合わせへの導線設計、そして「担当者が読み、決裁者が判断する」というBtoB特有の構造にどう備えるかまでを、実務の手順として整理します。

この記事でわかること

結論

BtoBサイトのSEOは検索ボリュームの大きさで判断すると必ず失敗します。月に数十件しか検索されないキーワードでも、1件の商談が生む売上から逆算して優先順位を決めるのが正しい設計です。

  • 01検索数の読み方検索母数の大きさではなく、そのキーワード経由で商談が何件生まれるかで価値を決めます。ツールが0や10未満と表示するキーワードも切り捨てません。
  • 02コンテンツの役割分担集客の主力は業務課題を解決する記事、受注を後押しするのは導入事例と比較情報です。同じページに両方を詰め込まず、役割ごとにページを分けます。
  • 03指名検索の位置づけ指名検索はSEO単体の成果ではなく、広告・展示会・既存顧客の口コミを含めた活動の結果が最後に検索窓に現れる指標です。増やす施策と守る施策を分けます。
  • 04リードへの導線記事の検討段階に合わせて資料請求・個別相談・見積依頼を出し分けます。フォーム完了ページはインデックスさせない設定にしておきます。
  • 05稟議への備え記事を読むのは担当者でも、決裁するのは別の人です。価格・導入体制・セキュリティ・他社比較を社内共有できる形で置いてあるかで受注率が変わります。
  • 06効果の見方PVと検索順位ではなく、リード数・商談化率・受注までを一本の線でつないで評価します。オフラインでの成約まで戻して初めて投資判断ができます。

BtoBサイトのSEOがBtoCと決定的に違う3つの前提

手法の話に入る前に、前提を揃えておきます。BtoBサイトのSEOがうまくいかない原因の大半は、施策の巧拙ではなく、BtoC向けの評価軸をそのまま持ち込んでいることにあります。SEO全般の基本的な考え方はSEO対策とは?基本から実践手順までで扱っているので、共通部分はそちらを前提とします。ここではBtoB特有の3点だけを取り上げます。

前提1|検索する母数がそもそも小さい

BtoB商材が解決するのは、特定の職種・特定の業務フローで起きている課題です。「請求書の突合作業に時間がかかる」「工場の設備保全の履歴が紙で管理されている」といった課題を検索する人は、日本全体で見ても限られます。BtoCの「ダイエット」「引越し 見積もり」のような、誰もが当事者になりうるキーワードとは母数の桁が違います。

これは弱点ではなく、単なる条件です。母数が小さいということは、競合も同じ小さな母数を取り合っているということでもあります。上位表示に必要な労力もその分小さく、大手が本気で取りに来る規模でもないため、中小規模の企業でも1位を取れる余地が残っています。母数の大きさを競争の激しさとセットで見ないと、この構造は見えてきません。

前提2|読む人と決める人が違う

BtoCでは、検索した人がそのまま買う人です。BtoBはそうではありません。検索するのは現場の担当者や情報収集を任された若手で、実際に発注を決めるのはその上長や、別部署の決裁者です。つまりサイトのコンテンツは、担当者が読んで理解し、それを社内の別の人に説明するための材料として機能する必要があるということになります。

この一点を意識しているかどうかで、置くべき情報が変わります。担当者が「良さそうだ」と思っても、上司に「で、いくらなの」「他社と何が違うの」「セキュリティは大丈夫なの」と聞かれて答えられなければ、そこで検討は止まります。担当者が答えられる状態を作るのは、営業ではなくサイトの役割です。

前提3|検討期間が長く、途中で止まる

BtoBの購買は、情報収集から発注まで直線的には進みません。予算の期が変わる、担当者が異動する、優先度の高い別プロジェクトが割り込む、といった理由で何度も止まります。止まっている間、見込み客はサイトを見に来ません。

ここで重要なのは、止まっている期間を前提にコンテンツと接点を設計することです。1回の訪問で問い合わせまで持っていこうとする設計はBtoBでは無理があります。資料をダウンロードしてもらう、メールマガジンに登録してもらう、社名を覚えてもらう。そうやって「思い出してもらえる状態」を作り、再検索されたときに確実に自社が出てくるようにしておくのが現実的な設計です。なお、業界の平均的な検討期間として流通している数値はいくつもありますが、商材と価格帯で大きく変わるため、この記事では一般的な数値を挙げることはしません。自社の受注データから、初回接点から受注までの実際の日数を出して使ってください。それが唯一信頼できる数字です。

検索ボリュームが小さいキーワードの価値をどう測るか

BtoBのSEOで最も重要な意思決定は、「どのキーワードに記事を書くか」ではなく「そのキーワードにいくらまで投資してよいか」を決めることです。ここを数字で押さえられると、社内の説明も一気に楽になります。

価値は検索数ではなく売上から逆算する

使うのは単純な掛け算です。検索ボリュームを起点に、順位獲得後の流入見込み、資料請求や問い合わせに至る割合、そこから商談・受注に至る割合、そして受注1件の売上を順に掛けていきます。

段階 入れる数字 どこから取るか
月間検索数 狙うキーワード群の合計 キーワードツール。表示が範囲でも構わない
クリック率 その順位で得られる想定クリック率 自社サーチコンソールの同順位帯の実績値
コンバージョン率 訪問からフォーム送信までの割合 GA4の既存記事の数値
商談化率 フォーム送信から商談設定までの割合 営業・インサイドセールスの記録
受注率 商談から受注までの割合 同上
受注単価 初年度売上、または想定LTV 過去の受注実績

この6つを掛ければ、そのキーワードで1位を取ったときの月間売上見込みが出ます。ここに入れる数字は、他社の平均値ではなく自社の実績値を使ってください。業界平均のコンバージョン率を持ってきて計算すると、結論だけがもっともらしくなり、判断を誤ります。手元に実績がない立ち上げ期であれば、複数のパターンで計算して幅で見るほうが安全です。

掛け算の途中に出てくる各指標の定義や改善の考え方は、CVRとは?コンバージョン率の計算と改善施策とコンバージョンとは?GA4計測設定から改善までで詳しく扱っています。順位別のクリック率は業種や検索結果の形で大きく変わるため、一般に流通している目安表よりも、サーチコンソールの使い方で自社の平均掲載順位とクリック率を突き合わせたほうが精度が出ます。

「月間10件の検索」でも成立するという感覚を持つ

具体的に考えてみます。ここに置く数字はすべて計算の型を示すための例で、業界の平均値ではありません。自社の数字に置き換えて読んでください。

月間検索数10件のキーワードで1位を取り、そのうち3割がクリックして自社サイトに来たとすると、月間3セッションです。BtoCの感覚では誤差の範囲でしょう。しかしそのうち1件が資料請求に至り、3か月に1件が商談になり、その商談の半分が受注につながり、1件の受注が年間300万円の売上を生むとしたら、このキーワードは年間で数百万円規模の売上に紐づいていることになります。記事1本の制作費が10万円だとすれば、投資対効果としては明確に成立します。

逆に、月間1万検索のビッグキーワードで3位を取っても、そこに来るのが学生や同業他社の担当者ばかりで商談が生まれないなら、そのキーワードの事業上の価値はゼロです。BtoBのキーワード選定では、検索ボリュームの列ではなく、そのキーワードを検索する人が誰なのかという列を見て並べ替えるのが正しい順序です。選定の手順そのものはキーワード選定の完全マニュアルで扱っています。

ツールで「0」と出るキーワードの扱い

キーワードプランナーをはじめとするツールは、検索数が少ないキーワードを範囲表示にしたり、データなしとして扱ったりします。これは「誰も検索していない」という意味ではありません。BtoBでは、ツールに数字が出ないキーワードのほうが商談に近いことすらあります。数字が出ないキーワードを拾う方法をいくつか挙げます。

  • 営業とカスタマーサポートに入る質問を書き出す:商談中に必ず聞かれる質問、導入前に確認される事項は、そのまま検索されている言葉です。ここが最も打率の高い供給源です
  • 既存顧客に「導入前に何を検索したか」を聞く:受注できた顧客が使った言葉は、次の受注につながる言葉です。導入事例の取材時に一問足すだけで集まります
  • サジェストと関連キーワードを辿る:自社名や商材カテゴリの後ろに続く語を洗い出します。仕組みと使い方はサジェストとは?Googleの予測変換をSEO・企画に活かす方法で解説しています
  • サーチコンソールの既存クエリを掘る:すでに表示回数が数回だけ発生しているクエリは、今後の記事の種です。掲載順位が低くて表示だけされている語を拾います

集めた語は「1キーワード=1記事」で機械的に割り当てないでください。BtoBの検索語は表記ゆれと言い回しの違いが多く、細かく記事を分けるとどれも中途半端になり、自社の記事同士が競合します。1つの業務課題を1つのまとまりとして扱い、その中でページを分けるのが安全です。内部リンクでまとまりを作る具体的な方法はSEO内部リンク戦略の設計と実装にまとめています。

BtoBで成果につながるコンテンツの型

BtoBサイトに置くコンテンツは、大きく4つの型に整理できます。それぞれ役割が違うので、混ぜないことが重要です。

課題解決型|集客の主力

「◯◯がうまくいかない」「◯◯を効率化したい」という業務上の困りごとに答える記事です。BtoBの検索の入口は、商材名ではなく課題であることがほとんどなので、流入の大部分はここが担います。

書くときのポイントは、自社商材を使わない解決策も正直に書くことです。エクセルの関数で解決できる規模の課題に対して「ツールを導入しましょう」としか書かない記事は、読者にすぐ見抜かれます。「この規模までは手作業で回る、ここを超えると仕組みが必要になる」という境界線を示すと、そこを超えている読者は自然に次の情報を求めます。記事の書き方の基本はSEO記事の書き方10ステップとSEOライティングの基本テクニックを参照してください。

比較・選定型|検討段階を受け止める

「◯◯ツール 比較」「◯◯ 選び方」といった検索に答える記事です。自社商材が比較表の中に入る前提で書くため、書きにくいと感じる担当者が多い領域ですが、この検索をしている人は最も購買に近いため、避けるべきではありません。

比較記事で信頼を落とすのは、自社に都合の良い評価軸だけを並べたときです。自社が不利になる軸も載せたうえで「この条件なら他社のほうが向いています」と書けると、残りの部分の説得力が上がります。競合を紹介したくない場合でも、少なくとも選定の観点だけは網羅してください。読者は結局どこかで比較するので、その比較の物差しを自社が提供できるかどうかが分かれ目になります。

導入事例|受注を後押しする

BtoBで最も受注に近いコンテンツです。読者が事例に求めているのは感動的なストーリーではなく、自社と同じ業種・同じ規模・同じ課題の会社がどうなったかという一点です。そのため、事例は読み物として並べるだけでなく、業種・従業員規模・課題・導入部門といった軸で探せる形にしておくと機能が変わります。

事例ページで抜けやすいのが、導入前の状態の記述です。「効率化しました」だけでは判断材料になりません。誰が、何時間、どんな作業をしていたのか。導入時に何でつまずいたのか。そこまで書かれた事例は、担当者がそのまま社内共有の資料として使えます。数値を載せる場合は必ず顧客に確認を取り、確認できない数値は載せないでください。

用語解説・基礎解説|間口を広げる

商材カテゴリの周辺にある用語を解説する記事です。単体では商談につながりにくいのですが、検索の入口としては広く、内部リンクの起点にもなります。ここだけを量産しても成果は出ないので、課題解決型と事例が揃ってから着手するのが順序として正しいです。

「売るページ」と「育てるページ」は分ける

1つのページにSEO・コンバージョン最適化・ブランド構築の全部を担わせようとすると、どれも中途半端になります。この点はSearch Engine JournalのAsk An SEOでも同じ結論が示されており、詳しくは「売るページ」と「ブランドを育てるページ」は分けるという考え方で紹介しています。コンバージョン最適化の担当者が本文を削り、検索流入が落ちるという衝突はBtoBサイトでも頻繁に起きます。ページの役割をあらかじめ決めておけば、この衝突は設計段階で避けられます。

指名検索を育てる|SEOの外側にある仕事

BtoBサイトのアクセスを分解すると、意外なほど大きな割合を社名やサービス名での検索が占めます。展示会で名刺交換した人、ウェビナーに参加した人、紹介を受けた人が、後から社名で検索して訪れているためです。

指名検索は結果指標であって施策ではない

指名検索を増やす方法は、SEOの内側にはほとんどありません。増やすのは、広告、展示会、ウェビナー、書籍・寄稿、SNS、PR、そして既存顧客の口コミです。SEOにできるのは、その名前で検索されたときに確実に自社が最上位に出て、必要な情報が揃っている状態を作ることです。集客手段全体の位置づけはWeb集客とは?主要8手法の特徴・費用・使い分けで比較しています。

守りの観点も重要です。社名の後ろに「評判」「料金」「解約」「デメリット」といった語が続く検索に対して、自社のページが1件も出ていない状態は危険です。第三者のまとめサイトだけが答えを提供している状況になります。料金の考え方や導入をやめる場合の手続きまで自社で明示しておくと、この領域を自社で押さえられます。

指名と非指名を分けて見る

効果を評価するときは、指名検索と非指名検索を必ず分けてください。混ぜたまま「検索流入が増えた」と報告すると、展示会の成果をSEOの成果として数えることになり、投資判断を誤ります。サーチコンソールのクエリは正規表現でフィルタできるので、社名の表記ゆれをまとめた式を1つ用意しておくと運用が安定します。

Search Console → 検索結果レポート → 「クエリ」でフィルタを追加
→ 「カスタム(正規表現)」を選択

一致する正規表現(=指名検索だけを見る):
(?i)(社名カタカナ表記|社名英字表記|よく使われる略称|サービス名)

一致しない正規表現(=非指名検索だけを見る):
同じ式をそのまま入れて「一致しない」に切り替える

この2つのビューを毎月並べて記録すれば、SEOの施策が効いているのか、それとも外側の活動で指名検索が増えただけなのかを切り分けられます。レポートの型はSEOレポートの作り方にまとめています。

AI検索での「名前を出してもらえるか」も指名の一部になった

近年は、生成AIが自社の名前を回答に出してくれるかどうかも指名の獲得に関わってきています。SEO会社Victoriousが175ブランド・8つのAIプラットフォームを調べた調査では、直接尋ねれば96%のブランドが正確に説明される一方、購買比較の質問への回答では89%が一度も名前を出してもらえなかったと報告されています(AIは96%のブランドを説明できるのに89%は回答に出てこないというVictorious調査)。知られていることと、選択肢として提示されることはまったく別だという結果で、BtoBのように「候補として名前が挙がるか」が勝負を決める領域では無視できません。

加えて、AI検索の引用のおよそ40%は、ソースとしてリンクされているのに回答文にブランド名が出てこない「ゴースト引用」だという調査もあります(AI検索の引用の約40%はブランド名を伴わないというWritesonicの分析)。引用数だけを可視性の指標にはできない、というのがこの調査の結論です。分析ツール側でも対応が進んでおり、Microsoft ClarityはAI Citationsにブランド指名クエリと非指名クエリの切り分けを追加しています。無料で使えるツールなので、AI経由の言及を分けて見たい場合はMicrosoft Clarityの導入を検討する価値があります。

AI検索そのものへの対応方針はLLMOとは?意味・SEO/AIOとの違い・対策の全体像とAIO対策とは?AI Overviewに引用される5つの戦略で扱っています。

リード獲得への導線設計

BtoBサイトのコンバージョンは1種類ではありません。検討の温度が違う読者に同じ「お問い合わせはこちら」を出しても、大半は反応しません。

検討段階に合わせてCTAを出し分ける

読者の状態 置くべき出口 ハードルの高さ
課題を言語化し始めたばかり 解説資料のダウンロード、メールマガジン登録 低い
解決手段を比較している 比較資料、選定チェックリスト、料金表の請求 中
導入を具体的に検討している 個別相談、デモ依頼、無料トライアル やや高い
社内で稟議に上げる段階 見積依頼、導入体制の相談、セキュリティチェックシート対応 高い

課題解決型の記事に「今すぐ見積を」と置いても機能しませんし、比較記事に資料ダウンロードしか置かないのも機会損失です。記事ごとに読者の状態を決めて、そこに合う出口を1つか2つに絞って置いてください。ボタンの文言と配置の具体はCTAとは?効果的なボタンのデザイン・配置・文言の作り方で扱っています。

資料の設計はコンテンツ制作と地続きにする

BtoBのリード獲得で中心になるのが、ホワイトペーパー(お役立ち資料)です。記事で扱いきれない深さの情報を資料にまとめ、フォーム入力と引き換えに提供します。ここで重要なのは、記事と資料の内容が地続きになっていることです。記事で課題の整理までを行い、資料で具体的な進め方や社内説明用のテンプレートを提供する、といった役割分担ができていると、ダウンロード率も、その後の商談化率も上がります。資料そのものの企画・構成・配布戦略はホワイトペーパーとは?BtoBリード獲得の作り方と配布戦略で詳しく解説しているので、この記事では扱いません。

フォームと完了ページの技術的な処理

見落とされやすいのが、フォーム送信後のサンクスページ(完了ページ)の扱いです。ここは検索結果に出す必要がなく、出てしまうと計測もコンバージョンの定義も崩れます。インデックスさせない設定を入れておいてください。

<!-- 資料請求・問い合わせの完了ページの <head> に入れる -->
<meta name="robots" content="noindex, follow">

「follow」を残しているのは、完了ページからサイト内の他ページへのリンクを辿ってもらうためです。robotsメタタグの書き方全般はSEO対策に必須のHTMLタグ一覧、クロールの制御全般はrobots.txtの書き方完全ガイドを参照してください。フォームそのものが別ドメインのツールで生成されている場合は、そのページがインデックスされていないかをサーチコンソールで確認しておくと安全です。

獲得したリードをその後どう扱うか

資料をダウンロードした人がすぐ商談になることは稀です。BtoBでは、そこから数か月かけて接点を維持し、検討が動いたタイミングを捉える必要があります。この工程を担うのがMA(マーケティングオートメーション)ツールです。ツールの選定基準と主要製品の比較はMAツール比較6選|HubSpot・SATORIの料金と選び方にまとめてあるので、そちらを参照してください。単体製品の詳細を知りたい場合はHubSpotとは?機能・料金プラン・無料の範囲も用意しています。

SEO担当としてここで確認しておきたいのは、どの記事から来た人が、最終的に商談になったのかを追える状態になっているかどうかです。フォームに流入元を記録する仕組みを入れておくだけで、後の投資判断の精度がまったく変わります。

稟議を通すための情報設計

BtoBサイトのSEOで最も軽視されがちで、最も効くのがこの領域です。担当者が「これを導入したい」と思っても、社内を通せなければ受注にはなりません。

決裁者が確認する項目をサイトに置く

稟議書を書く担当者が必要とする情報は、だいたい決まっています。

  • 費用:初期費用、月額、契約期間、追加ユーザーやオプションの料金。金額を公開しない方針であっても、料金体系の考え方(従量制なのか定額なのか、何で金額が変わるのか)だけは書けます
  • 導入にかかる期間と自社の工数:「導入まで何か月か」「自社は誰が何をするのか」。ここが不明だと稟議は止まります
  • 導入体制とサポート:担当者が付くのか、問い合わせ窓口は何か、対応時間はいつか
  • セキュリティと法令対応:データの保管場所、取得している認証、契約書の雛形の有無。情報システム部門のチェックが入る商材では必須です
  • 他社との違い:稟議では必ず「なぜこの会社なのか」を書かされます。比較の材料を自社が用意しておくと、そのまま使ってもらえます
  • やめるときの条件:解約の手続き、データの持ち出し可否、最低利用期間。ここを明示している企業は少なく、書くだけで差がつきます

これらは検索需要が大きい情報ではありません。しかし社名やサービス名と組み合わせて検索されますし、何より商談中の読者が確認しに戻ってくるページです。検索ボリュームでは価値を測れない典型例なので、キーワードツールの数字だけで作るかどうかを決めないでください。

社内共有できる形を用意する

担当者は、見つけた情報を上司に転送します。このとき渡しやすい形になっているかどうかで、社内での通りやすさが変わります。具体的には、URLで渡せること、印刷してもレイアウトが崩れないこと、必要ならPDF版があること、の3点です。ログインしないと見られない資料は、担当者が上司に転送できないため、稟議の段階では不利に働きます。

また、記事の中に「この記事の要点」のような形で結論を先にまとめておくと、上司が全文を読まなくても判断できます。読者の先にいるもう一人の読者を想定するのが、BtoBのコンテンツ設計の要点です。

長い検討期間とコンテンツの役割分担

ここまでの内容を、検討の段階ごとに整理しておきます。どのコンテンツが欠けているのかを点検するための表として使ってください。

段階 読者の状態 用意するコンテンツ この段階のゴール
認知 課題を課題と認識していない 用語解説、業界動向、基礎解説 サイトに来てもらう
課題整理 困りごとを言語化し始めた 課題解決型記事、進め方の解説、チェックリスト資料 資料ダウンロード/メルマガ登録
手段の比較 解決手段を並べて検討している 比較記事、選び方、料金の考え方 比較資料の請求
製品の比較 候補を数社に絞った 導入事例、機能詳細、他社比較、FAQ 個別相談・デモ
稟議 社内説明の材料を集めている 料金、導入体制、セキュリティ、契約条件 見積依頼
導入後 使い始めた/社内展開したい 活用ガイド、ヘルプ、活用事例 継続とアップセル、口コミ

多くのBtoBサイトは、上の3段階(認知・課題整理・手段の比較)だけが充実していて、下の3段階が営業任せになっています。しかし受注率を動かすのは下の3段階です。記事を増やす前に、下の3段階に穴がないかを先に点検するほうが、投資対効果は高くなります。

なお、導入後のコンテンツを軽視しないでください。既存顧客が社内で使い方を検索し、活用ガイドに辿り着き、社内展開が進むという流れは、追加受注と口コミの源泉になります。前述のとおり、口コミは指名検索を増やす最も強い経路です。

効果測定はリードの先まで見る

BtoBのSEOをPVと検索順位だけで評価すると、必ず判断を誤ります。見るべき指標を段階ごとに並べておきます。

見る指標 取得元 この指標でわかること
非指名クエリの表示回数・クリック数 サーチコンソール 新規の見込み客に届いているか
指名クエリの表示回数 サーチコンソール SEO以外の活動で認知が広がっているか
資料請求・問い合わせ数 GA4 導線が機能しているか
商談化率 SFA/CRM リードの質が保てているか
受注数・受注金額 SFA/CRM 投資判断の最終根拠

問題になりやすいのが、GA4より先の接続です。フォーム送信までは計測できても、その後の商談・受注はSFAやCRMの中にあり、オフラインで進むため自動ではつながりません。ここを人手で紐づける運用を最初に決めておかないと、後から遡るのはほぼ不可能になります。

広告側では、こうしたオフラインの工程を扱う機能の整備が進んでいます。Google Adsはリード獲得型の広告主向けに、オンラインとオフラインの接点を含めた顧客の道筋を可視化する「Lead Journey Mapping」の詳細を公開したと報じられています(Google Adsが「Lead Journey Mapping」のヘルプを公開)。SEOでも考え方は同じで、フォーム送信をゴールにせず、受注まで戻して評価する設計にしておく必要があります。

KPIの立て方そのものはSEO KPIの設計方法|KGI逆算とサイトタイプ別の実践ガイド、GA4側の設定はGA4でSEO効果を測る方法にまとめています。指標の一覧と定義を確認したい場合はSEO指標一覧もあわせて参照してください。

AI検索時代のBtoBサイトはどう変わるか

検索の入口が生成AIに移っていく流れは、BtoBにも及んでいます。ただし、いま起きているのは「Googleを使わなくなる」という単純な置き換えではありません。Search Engine Journalが複数の調査を整理した報道によれば、ChatGPTユーザーの95%はGoogleも利用しており、併用が実態である一方、クリックストリームを使った研究では世帯単位の検索クエリ数が最大17.0%減という結果も出ています(Google離脱ではなく併用――ChatGPTユーザーの95%はGoogleも利用)。

BtoBの実務に引き寄せると、示唆は2つです。1つは、候補企業のリストアップが生成AIで行われる可能性が高まっていること。前述のVictoriousの調査が示すとおり、名前を知られていることと候補として挙げられることは別なので、比較の文脈で自社が言及されるだけの材料をWeb上に置いておく必要があります。もう1つは、クリック数が減っても商談数が維持されるなら問題ないということです。BtoBは元々の母数が小さいため、トラフィックの絶対数よりも、たどり着いた少数の見込み客をどう扱うかのほうが結果に効きます。

この領域の対応策はLLMO対策|ChatGPT・Gemini・Perplexityに引用される手順とGEOとSEOの違いとは?研究で実証された生成AI最適化6つの手法で扱っています。BtoBでとくに効きやすいのは、事実を明確に書くこと、比較可能な形で情報を整理すること、そして自社サイトを自社に関する一次情報源にしておくことです。

BtoBサイトでやりがちな失敗

検索ボリュームの大きい一般語を狙ってしまう

「業務効率化」「DX」のような大きな語は、検索数は多いものの、検索している人が誰なのかが定まりません。上位表示できたとしても商談は生まれにくく、上位表示自体もメディアや大手企業との競合になります。母数の大きさに引きずられないことが、BtoBのキーワード選定で最初に守るべき規律です。

記事の本数だけをKPIにしてしまう

月10本といった本数目標だけで運用すると、書きやすい用語解説ばかりが増え、受注に近いコンテンツがいつまでも作られません。本数ではなく、前掲の段階別の表の空欄を埋めることを目標にしてください。

事例の掲載許可を後回しにする

導入事例は最も効くコンテンツですが、顧客の許可が必要なため制作に時間がかかります。契約時や導入完了時に「事例として紹介させていただける可能性がある」と伝えておくかどうかで、後の難易度がまったく変わります。これは営業と足並みを揃えておく話です。

サイトの技術的な土台を放置する

BtoBサイトはリニューアルの間隔が長く、古い構成のまま運用されていることが少なくありません。ページの表示速度、スマートフォンでの見え方、重複したURLの扱いといった基礎は、コンテンツを増やす前に確認しておいてください。点検の観点はテクニカルSEO完全ガイド|チェックリスト60項目とSEO内部対策の完全ガイドにまとめています。URLが重複しやすい構成であればcanonicalタグとは?URL正規化と重複コンテンツ対策もあわせて確認してください。

問い合わせが来ないことをSEOのせいにする

検索順位も流入も伸びているのに問い合わせが増えない場合、原因はSEOではなくサイト側の出口設計にあります。前述の温度別のCTA、フォームの項目数、料金情報の有無を先に点検してください。順位を上げるより早く結果が変わることがあります。

よくある質問

検索ボリュームが極端に少ない業界でも、SEOに取り組む意味はありますか

あります。判断基準は検索数ではなく、1件の受注が生む売上です。受注単価が高く、検討時に必ず検索される商材であれば、月に数十件の検索でも投資対効果は成立します。逆に、単価が低く、検索よりも紹介や既存取引で決まる商材であれば、SEOの優先度は下がります。まずは前掲の逆算を自社の数字で行ってから決めてください。

導入事例は何本くらい必要ですか

必要な本数に一般的な正解はありません。判断の基準は本数ではなく、主要な見込み客層それぞれに、自分と重ねられる事例が1本以上あるかです。ターゲットが3業種なら最低3本、規模の幅が広いなら大企業向けと中小企業向けの両方が要ります。まずは受注実績の分布を見て、空いている枠を埋める順に作るのが効率的です。

料金をサイトに載せるべきでしょうか

公開できるなら公開したほうが有利です。担当者が稟議を書けるようになりますし、価格が合わない見込み客が自然に離脱するため、商談の質も上がります。個別見積が前提で金額を出せない場合でも、何によって金額が変わるのかという料金体系の説明までは書けます。そこまで書かれていれば、担当者は概算を社内に説明できます。

オウンドメディアを別に立ち上げるべきですか

まずはコーポレートサイトやサービスサイトの中に記事を置く形で始めることをおすすめします。別ドメインで立ち上げると、検索エンジンからの評価もサイト内の回遊も分断され、運用の負荷も倍になります。記事本数が増えて編集体制が独立してきた段階で分離を検討する、という順序が現実的です。立ち上げの手順と体制の作り方はオウンドメディアとは?立ち上げ手順と運用体制・KPI設計で扱っています。

SEOと広告はどちらを先にやるべきですか

検証したい仮説がある段階では、広告のほうが早く答えが出ます。どのキーワードで問い合わせが来るのか、どの訴求が効くのかを短期間で確かめてから、勝ち筋が見えたキーワードにSEOで記事を用意する、という順序が無駄になりにくい進め方です。広告の仕組みと費用の考え方はリスティング広告とは?仕組み・費用相場・SEOとの違いで解説しています。

まとめ|検索数ではなく、1件の商談から逆算する

BtoBサイトのSEOは、BtoCと同じ物差しで測ると必ず「向いていない」という結論になります。母数が小さいのは前提であって、問題ではありません。見るべきなのは、そのキーワード経由で何件の商談が生まれ、いくらの売上になるかです。月に10件の検索でも、1件の受注が数百万円になるなら投資は成立します。

そのうえで、コンテンツは役割ごとに分けてください。集客は課題解決型の記事、比較の受け皿は選定記事、受注の後押しは導入事例、そして稟議を通すための情報を別に用意する。読者である担当者の先には、必ずもう一人の決裁者がいます。その人が判断できる材料まで揃っているかどうかが、最終的な受注率を決めます。

効果を評価するときは、フォーム送信で止めずに商談・受注まで戻してください。指名検索と非指名検索を分けて記録し、SEOの成果と他の施策の成果を混ぜないようにするのも忘れないでください。資料の設計はホワイトペーパーの作り方と配布戦略、獲得後のリード管理はMAツール比較6選にそれぞれ譲っています。あわせてご覧ください。

本記事に登場する試算の数値は、計算の型を示すための例であり、業界の平均値ではありません。自社の実績値に置き換えてご利用ください。引用したAI検索関連の調査(Victorious・Writesonic・Microsoft Clarityの更新・Search Engine Journalによる複数研究の整理)は、いずれも当サイトのニュース記事として個別に報じたもので、リンク先に一次情報の出典を記載しています。ツールの仕様や検索機能は変更される場合があるため、実装前に公式の最新情報をご確認ください。

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他の種別の考え方も見ておくと、自社の優先順位が判断しやすくなります。

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SEO基礎おじ
執筆・監修

SEO基礎おじ

フリーランスのWeb制作者/SEO実務者(実務歴3年以上)。HTML・CSS・JavaScript・WordPressを自分で実装する立場から、テクニカルSEO・構造化データ・GA4/Search Consoleの計測設計までを一人で担当しています。当サイトを実験台にして、施策の効果は自分で取った実測データで検証してから記事にしています。「SEO基礎おじ」は筆名です。

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